4章 17話 決闘
「何言ってるんだ。生意気すぎるだろ」
こんな時にクロに気を遣わせるなんてと宗介様は思ったのか、彼の容態はまだ治っていない。
「ゴホッ、ゴホッ・・・!」
次の瞬間、宗介様は口から赤い血を吐いた。
「大丈夫。ナエさん、咳をしすぎたんだ」
心配しないでと宗介様は言うがそんなの無理だ。
「宗介様寝ていて!庵さん、お医者様を!」
「無理だよナエ。犬神に医者は効かない。
クソッ、犬神のジジイめ。
俺らの会話が聞こえているんだろう。
いいだろう。俺が相手してやる!」
クロのいつものかわいい表情から目がギラギラ光出した。
「クロ、本当に戦うの?」
「ああ。カヨの願いでもあるんだ。
この場所をホテルにしたいってずっと言っていた。
犬神ももうジジイだろ。
万が一勝つかもしれねえ」
ホテルの外は小雨から急にすごい風に変わった。
雷が遠くでゴロゴロ鳴り出し私もクロもただならぬを感じる。
「ナエ、力を貸してくれ」
「クロ、どうしたらいいの?」
私はクロにホテルの裏にある教会に最後の火が灯る蝋燭台台をもっいくように言われた。
「いいか。ナエ、今から俺は犬神と戦う」
「クロは勝てる?」
「だから、力を強化させるんだ。
ナエは妖が見えるだろう?」
「ええ」
「いいか。俺の最後の願いは犬神に勝ってこのホテルのみんなと一緒にいる事だ」
「クロ・・・」
クロの言葉がたまらなく嬉しい。
「てっきり、カヨさんと一緒にいるって言われたらどうしようかと思ったわ」
そう言うとクロは舞ってたなあみたいな顔をした。
「本当はそのつもりだったさ。
でも、ナエが俺と一緒にいてくれるんだろう?
気が変わった」
照れたようにクロは言う。
「ええ。
私もだけど、宗介様もずっとずっとクロと一緒にいるわ」
「ちょっと待て。アイツは別にいい」
「そうなの?宗介様が、いないとホテルにはいられないわよ」
意地悪っぽくクロに私は言う。
クロの本心じゃないと分かってしまったからだ。
「あ~~~、もう!分かったからナエ、俺の言う事聞いて!」
クロはいつもの口調に戻り、宗介様を助ける為の手順を私に教えた。
「今から俺の最後の願いとナエの力を融合させる。
その為にはナエの血が少し必要なんだ。
ナエ、1滴だけ血が必要なんだ。
血を蝋燭台に付けれる?」
「分かったわ」
「じゃあ俺がちょこっとだけナエを噛むよ」
少し我慢してと言ってクロに言われるがまま私は指から出た血を祭壇に乗せた蝋燭台に付けると炎は赤から金色に輝き出しボウッ!と一層、火が大きくなった。
「これでよし!」
とクロが準備が出来たと言う。
「ナエの血は巫女の力みたいなものなんだ。
俺の力にナエの霊力を合わせるんだ」
「私、霊力っていっても見えるだけよ」
「無いよりずっといいよ」
その証拠にクロの目はまたギラギラ輝きだし、体は巨大に変化する。
「後はどうしたらいいの!?」
私の言葉にクロはホテルの敷地のずっと遠くへ駆け出した。
「ナエわあとは俺と宗介の為に祈っていて!」
「クロ!」
そうしてクロの姿が見えなくなったかと思うと、今度はホテルの屋上から大きないびつな獣がクロと同じ方角に駆けていくのが見えた。
(あれが犬神!?)
宗介様の中に眠っていた犬神の姿は一瞬だけだけど痩せ細って黒い影のかたちをしていた。
(お願い!クロ、頑張って)
そうしてクロと犬神の一騎打ちが始まった!
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どれくらい時間が経っただろう。
私、ナエは教会の小窓からしか外の様子は見えない。
だけど確かにクロは犬神と戦っている。
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クロは口から大きな妖火を犬神に吹きかけるが犬神は痩せ細った姿からは想像できないくらいスルスルとクロを避けていている。
中々部が悪いようだ。
『おい、新参者。何故、ワシの邪魔をする。
これは犬屋敷とワシの契約だ。
お前になんてはごする力はねえんだからすっこんでいろ』
犬神はクロに忠告する。
しかしクロはそんなのお構いなしで妖火を犬神に当てるとガブっと犬神に噛み付いた。
『反故する力はあるかどうかは分かんねえけどよう。
要はお前さんをやっちまえばどうにかはなるかもしれねえだろ?』
ニヤリと笑いながらクロは言う。
しかし、これには噛まれた犬神が逆情してクロを噛む。
『ヴヴ・・・』
鈍い声を出し、クロは苦しみ悶えた。
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その頃の教会では蝋燭に異変が起きていた。
ボッっと音を立てると明らかに火が小さくなったのを見て私、ナエは焦る。
「クロ!」
(クロが危ないのだわ!)
どうしよう!
何かしなきゃと思うけど、どうすればクロに力がこれ以上送れるか分からない。
(クロに教わったのは蝋燭台に私の血を付ける事)
クロはそれが力になるって言っていた。
私は自分の口で更に自身の指を噛んで更に蝋燭台に付ける。
(お願いクロ!無事に勝って!!)
するとまた、蝋燭台の火が金色になりより一層ボウッと音を立てて大きくなった。
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『クロ!お願いクロ!無事に勝って!!』
その声はちゃんとクロに届いた。
(ナエだ。また血を蝋燭台に付けたな)
全く、若い娘の肌と胸を痛め付ける趣味は化け猫の癖にあまりなかったのに、だ。
『無理しちゃって』
とクロはやぶさかではない。
そしてクロが急激に回復した事に犬神は気づいた。
『お前、手を貸している者がいるな?』
犬神は言い当てるとどこだ?どこにいるとナエを探し始めた。
(ヤバい!早く奴を仕留めなきゃ!)
しかし犬神はすぐその場所を把握した。
『子娘か。ナメた真似をしやがる。
よし、手始めにお前を喰ってやる!』
犬神はそう言うとナエのいる教会へ向かおうとクルリと向きを変えたその時をクロは逃さなかった。
妖火を見事に犬神に命中させたのだ。
『ゔ、ゔあああーーーーーーーーーー!!』
ものすごい断末魔をあげ犬神は地面に落ちていく。
あまりの力のぶつかり合いにホテルは一気に停電して庵と草が客をなだめ、宗介はハナが心配そうについている状態が続く。
『くそお。新参のくせにワシをナメやがってーー、なぜお前の得になるものは何もないのにワシの邪魔をする?』
犬神の問いにクロが答える。
『まあ、ナエの頼みだし』
『なんだ、それは』
犬神は納得できないのだろう。
クロは犬神に続ける。
『俺も野良だけどよう、守りたい者があると力は湧くもんだぜ』
しかし犬神にはそんな言葉は助言にもならない。
犬神の最後の力だろう。
雷みたいな光をヒュッとナエがいる教会を狙って口から吹いたがそれをクロは逃さない。
(ナエ!!!)
考えるより先に妖火ではなく、クロ自身の体が犬神の放った雷の前に飛び出した。
「クローーー!!」
ピカッと光る衝撃に、ナエもその場に気絶してしまった。
クロにナエの声は犬神の攻撃に当たる直前にしっかり聞こえた。
『俺にはナエがついてるぜ・・・』
倒れながら呟くクロは朝日と共に綺麗に消えていった。
そうして嵐は止んで何も知らない客達は嵐が止んだのをいい事にロビーから部屋に戻っていった。
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しばらくすると外が晴れて宗介が目を覚ました。
(犬神が消えた!)
宗介は夢の中で犬神がクロと戦って消えていく姿を見た。
「オーナー!
庵様、草様!
オーナーが目を覚ましました!」
ハナは急いで2人を呼ぶ。
「オーナー、お身体は、もう起きても大丈夫ですか?」
「ああ。体が軽いんだ。
そうだ!クロ!ナエさんはどこだ?」
宗介は急いで1人と1匹を探す為、ハナの呼びかけを無視して、部屋から出て行った。
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「ナエさん、ナエさん!起きて!」
(これは、宗介様の声!?)
倒れたいた彼が目を覚ました事が分かり、私も一気に目が覚めた。
「眩しい・・・」
と思ったと同時に私を抱えていた宗介様が抱きついたのだ。
「そ、宗介様!」
照れるけど、今は喜びの方が大きい。
けど、宗介様はよほど嬉しかったのか私に口付けをして驚いた。
「!」
「ナエさん、クロが勝ったんだ!」
宗介様の言葉で私は倒れる直前の事を思い出して慌てていると宗介様もそれに気づいたようだ。
倒れた蝋燭台の火は消えたのにクロは見当たらない。
「ナエさん、クロは?アイツがどこに行ったか知らない?」
「いました。でも、クロは犬神の攻撃に当たって・・・」
そこまで言うと宗介様の表情が変わった。
「嘘だろう?」
嘘じゃない。
教会にはなんとも言えないさみしい空気だけが漂っていた。




