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13話 三角関係

頼まれたと宗介(そうすけ)様から言われて、私は良い事を思いついた。

「あの、私考えがあってクロには頼めないでしょうか?」


「アイツに?どうだろう。

アイツは猫だし犬神(いぬがみ)の本体は野良犬だって聞く。


最近、夢にずっと夢を見るんだ。

先祖が犬神の儀式をした時の夢に出てくる犬がニヤニヤ笑ってる夢を。


きっと奴は今の状況を分かって楽しんでるんだ」

 

宗介様はそう言っていたけど

「お願いクロ!力を貸して」

私は別室にいたクロに藁にも縋る思いで頼み込む。


「やだよ。

大体呪いを解くまで後3つ願いは叶えてない」

「そこをなんとかできないかしら?」

「ダメダメ、いくらナエのお願いでもダメ~!」

クロはプイッと顔をそっぽ向ける。

「そんな」


「逆立ちしてもアイツには俺も、犬神を払うなんて無理だよ」

クロは一貫として聞く耳を持たないつもりみたいだ。


(どうしよう。

クロの願いも叶えなきゃだけど、今は犬神退治が先だわ!

でも宗介様は今、それどこじゃないし)


すると私に疑問がよぎった。

(そういえば蝋燭台(ろうそくだい)の火って消える条件ってクロが満足したら消えるのよね)


クロげ何をどう満足して火が消えたかは分からないけど、どうも火が消える条件は私達が無理に当てようとしなくても勝手に消えている。


(宗介様もこの間火が消えてるのを見ていつの間にって言っていたわ)


確かあれは弥七(やしち)さんがいなくなってからだけど。


(でも、私達がクロにこれが正解?って提示しなくてもクロが満足するなら蝋燭台の火は消えるって事よね?)


「クロ、じゃあ私が叶える。

クロのあと3つの願い私が叶えるわ。


だからクロも宗介様を助けるのを手伝って欲しいの!」

「ナエが?」


「ええ。だからクロ、お願い。叶えたら力を貸して」

「え~、う~~~んどうしようかなあ」

「私のお願いよ」

するとクロは迷ってるのかう~ん、う~んとその場に頭を抱えて悩み、しばらくするとボソッといいよと言った。


「言っておくけどまずはお試しだから俺のお願い聞いて!」

「分かったわ!」

クロから少しお許しが出たので私は早速質問した。


「さあ、クロの3つ目のお願いって何かしら?」

そうして連れてこられたのはホテルの教会裏だった。


茂みの下に何かプレートがあるところに連れて来られた。


「こんなとこ、この間掃除した時に探せなかったわ」

今は茂みに隠れているがこの植物も元はプレートの側に生えていたのだろう。


「ナエ、この茂みを切って。

下にある石を掃除して」

クロに言われ

「任せて」

と張り切る。


そうして茂(しげ)みを切るとプレートが見えてきた。

文字が彫ってある。


人の名前だ。

「クロ、これはもしかしてお墓?」

「そうだよ」

「誰の?」

「俺の大事な人」

クロは言いたくないのかそっぽを向いたままだけど教えてくれる。


(これがクロの3つ目の願い?)


「分かったわ。じゃあプレートの掃除もしなきゃね」

そう言って水を汲んでくるが疑問が残る。


(おかしいわ。お墓なのに何も見えない。

もしかしてあそこには誰もいないのかしら?)


聞いた方がいいのかしら?

綺麗な布で墓石を吹き、花を添えてやるとそれはやっと立派な墓に見えた。



クロは墓石を見たと思ったら遠くを見ている。

墓石は英語で私には読めない。


だけどクロの大事な人は今はここではない、遠くにいた事が分かる。


「ナエはカヨと似てるんだ。

あ、ユリにも似てるよ」

「カヨさんってクロの前の飼い主?」

「まあ、そういうところ。

寒くて雨が降っていた日にね、床下にいた俺を助けてくれたんだ。

それからはずうっと一緒だったんだけど、カヨは結局屋敷の奴らや病院の奴らとこの屋敷を出て行っちゃった」

「!」


まさかクロにそんな過去があったなんて驚いてしまった。


(そうか。カヨさん、治らない病気にかかってしまっていたのね)


病院に猫は連れて行けない。


だからクロはずっと、ずっとカヨさんが帰ってくるのを待ってたんだ。


自分が命を落としても尚、彼女を待っていたんだ。


「なんでナエが泣くの・・・」

仕方ないなあとクロは私の涙を舐(な)めた。


「ねえ、ナエ。

カヨは戻って来れなかったけどナエは離れて行かないよね?」


「ええ、クロ。

ホテルを続けてもらわないと私、帰る場所が無くなっちゃって困るわ」

「!そうか。そうだな。

参った、参った。

悔しいけど、ナエの頼みじゃ仕方ないか」

クロから言われ

「私がクロのお願い叶えていいの?」


「いいよ。

そのかわりすっごくすっごく難しいんだから」

「いいわ。クロの願い叶えたいの!

何でも言ってちょうだい」


「何でも?」

「ええ」


しかしクロの願いは意外だった。

「じゃあねえナエ、俺の番(つがい)になって!」

いいよね♪とクロは無邪気に私にキスをするみたいに鼻を頬にくっつけた。


その仕草は化け猫と忘れるくらい可愛かったけど

私は「番」という言葉が気になった。


「クロ、番って何かしら?」

確か私が間違ってなければ動物的な意味伴侶とかそういう意味だと思う。


しかし相手は猫だ。


「そっか。番じゃ分からないか。

じゃあナエ、俺と結婚して!

それなら意味分かるでしょ?」

「・・・・・・」

「ナエ、どうしたの?」

ちゃんと願い言ったよとクロは首を傾げる。


「無理よ。だってクロは猫じゃない」

そう答えるとクロは

「確かにそれもそうか。あ、じゃあこれだったらいいでしょ?」

そう言うとクロは瞬く間に美丈夫(びじょうぶ)な黒髪の着物姿の男性に変身した。


「どう?ナエ、この俺の姿好き?」

「クロ、すごいわ!」

 

普段の黒猫からこんな姿に変わるなんて驚いた。

するとクロは私の反応が嬉しかったのかギュッと抱きついてきた。


「わあ~、ナエよりも大きくなった。

ナエが俺を抱っこしてる時はこんな感じなのか」

「ちょっと違う気もするけど?」

しかし、クロはそんな事どうでもいいよと言うように今度は私の頬に唇を付けた。


「こら。クロ、ダメ!」

「なんでナエ?番ってこういう事をするのが普通でしょ?」

「そうだけど、やっぱりこんなの無理よ」

「無理じゃないよ。俺、人間になれるし。

あ、いやだったらナエが猫になる事もできるよ」

「そういう事じゃないの!」

「じゃあどういう事!?」


クロの言葉に私は詰まるばかりで何も返せない。


「ナエは俺の番になる気はないんだ」

「・・・・・・」

私は下を向いたままだ。


「どうして何も言わないの?

ナエのそういうところ今は大っ嫌い!」


クロはそう言うと黒猫の姿に戻ると私の足元をすり抜けどこかに行ってしまう。


「クロ!待って!」

「来ないで!」


それっきりクロは屋敷の中を探してもどこにもいなくなってしまって私は途方に暮れてしまった。


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