犬屋敷家の呪い
話は宗介からいくつか前に遡る。
ある貧しい犬屋敷の先祖が開いている宿屋がそこにはあった。
宿屋の主人は血迷い野良犬を使い、犬神の儀式を行う。
そうして犬神の呪いは成功し犬屋敷は今までの貧しさが嘘のように膨大な財産を儲け成功したが代償も必ずついてくる。
成功と没落。
今、宗介や西の両親は没落という暗い闇に小石が転がって落ちていく最中のように弱っているのだ。
「昔から両親に聞かされていた。
自分の先祖がした事とはいえ、犬神の力だけで成功したなんて思われたくなかったから俺なりに宿泊業に関しては勉強した。
あの馬鹿猫の件でついに栄光から転落に落ちたかもと思っていたけどハロウィンは成功したからさ、しばらくは無事だろうってタカを括っていたらこれだ」
明らかに宗介は弱っている。
「今、分かったんだ。
小さい時から父に先祖がやらかした事は聞かされていたし・・・。
長者から没落に導く呪いって聞かされていたけどきっかけが分からなかった。
犬神は自分が強い自己嫌悪に落ちると没落のスイッチが入るらしい」
そうして宗介の身体を殺め、その次はその両親も狙うつもりだ。
「どうして話してくれなかったんですか?」
ナエはやっと宗介が何かを心配している理由を、使いである草が他にも心配している事がなんの事かやっと正体が分かった。
「話すタイミングが掴めなかった。
巻き込みたくなかったし、でも大丈夫。
ナエさんとは仮初の関係だし、害はないから安心して」
「・・・、宗介様はそれでいいんですか?」
「いいよ。ナエさんは危険な目に合わなくて済むんだ」
「そうでなくて、本当に宗介はそれがいいんですか?」
「・・・いい訳ないよ」
「ほら!私もです」
ナエに忠告され彼女を見ると宗介はギョッとした。
彼女の目は大粒の涙が次々と流れていた。
(悔しい)
ナエは涙を手で拭いながら思った。
(なんでみんな、先に私の事を決めつけるのかしら?)
花巻の家族の時はこんな疑問なんて抱かなかった。
彼らに自分の事を分かってもらうなんて今更と思っていたからだ。
でも、彼。宗介は違う。
宗介は珍しく戸惑い、拭くものがないのでナエの涙
を手で拭おうとしたが、ナエは避ける。
「ナエさんまさか怒ってる?」
「はい・・・」
「そうか。ごめん」
「本当です。
私も、確かに家族の事を話さなかったから宗介様の事を責められないけど今になって話しておけばよかったと思いました」
宗介は黙って聞いている。
「悔しいです。
自分の気持ちを聞いて欲しかった。
いえ、聞いてほしいなんてめんどくさい女ですね。
私は例え宗介様が仮初の婚約者じゃなかったとしても何も関与しない冷たい奴じゃありません。
せっかく見えるんです。
何か力になれるはずです。
少なくとも他の人よりは。
宗介様、ここに私が来た時、頼りにしてるっておっしゃってました」
「・・・でも、ナエさんそれはあの化け猫の件で」
「私にとっては同じです。
あ、クロと犬神は別物ですよ。
確かにクロは怖いけど、一応は助けられてますから」
これには宗介は驚く。
「でもアイツ、人喰いだよ」
「助けられた恩はあります。宗介様はどう思いますか?」
まさか宗介はナエからそう切り返されるとは思わなかった。
「ナエさんとおんなじだ」
と笑い、一本取られたという顔をした。
そうしてナエの手を取る。
「頼もしいや。
なら応えなきゃ。ナエさん俺に力を貸して」
「はい。頼まれました」
今度は笑顔でナエは頷いた。




