第七話 魔女は夢見て君を欺く
「それで?鋭利の魔女だって?魔女って事はモネみたいなものなの?」
「あの子と一緒にされると困るわぁ。あの子は正確には魔女ではないものぉ。もっと詳しく言うなら造られた因子で魔女化した人間だからねぇ」
「と、言うと?テメエは生まれた時から因子があったって事なの?もしくは生まれた時から魔女だったとか。」
「両方正解だよぉ」
ファエルは足を組み直して香を見た。その顔は自信のような憐みのような様々な感情が合わさったような感じだ。
香はそれを気味悪く思ったので気付かれないようにナイフを浮かしていた。
「それで?あの時ナイフが消えたのはテメエの能力か?それと瞬間移動。気味悪い技だったな。突然現れて突然消えるんだから。」
「アレこそが鋭利の能力」
ファエルが指パッチンすると空間が歪み、ハーブティが入ったカップを突き刺した。不思議なことに断面からハーブティが流れでることはないしカップの破片も存在しない。
「こんなふうに世界を尖らせるコトができるんだよぉ。素晴らしい能力でしょぉ?」
「…大体わかった。瞬間移動もそれの応用って事だな。自分を尖らせて空間移動する。なんていうか、酔いそうな技だな…? 使いやすそうではあるけど。」
「慣れないと酔うよぉ、幼少期にしすぎて吐いたかなぁ」
「よくそんな技ずっと使おうと思ったね…。私だったら使いたくねえよ。便利だから結局使うと思うけど。」
ファエルは淡く笑い始めた。そして再び指パッチンをして、空間をもとに戻した。ハーブティは断面から流れ始め、床に香りをむしりつけた。香はそれを気味悪く見ている。
「聞きたい事はこれで終わりぃ?幾らでも答えてあげれるけどぉ」
「じゃあこれが最後の質問。もしかしたらテメエの最期の質疑応答になるかもな。」
香は頭を斜めにしファエルを見つめた。そこからは何か悍ましさを感じる程だ。魔力が漏れでて、辺りにいた小さな蜘蛛や流れつづけるハーブティの動きが幽霊でも見たかのように止まった。ファエルは依然、澄ました顔で香を見ている。
「テメエは例の犯罪組織に所属しているのか?」
「ああ、そうだよぉ。私は、あの組織の幹部だもん。」
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香から幾つものまとまった風が吹き、その風は香とファエルの近くで回転し続けている。香はレポートを一枚取り出し、凍らせて割った。破片は風に巻き込まれ風を行き来している。そして行き来する破片がファエルを切ろうとする。
「この程度の小技で切り抜けられると思われてるなら、少し過小評価されてて悲しいよぉ。でも面白い技だとは思うよ。普通の相手ならこれだけで出し抜けるわぁ。ね?」
切ろうとした破片に向かって空間が尖る。破片を消滅させようとする。しかし、破片の軌道が変わった。近くの風に吸い寄せられたのだ。尖った空間は破片を捉えられずファエルを切り刻んだ。はずだった。
「知ってるぅ?どれだけ優秀な技でも、超強力な技の前では無意味なんだよぉ?」
空間が歪み全ての風と破片を抉り消滅させた。
「これでようやく話の続きに入れるかなぁ?」
そうファエルが言いかけた瞬間に、ファエルの背中に数本のナイフが突き刺さった。
「なん、で、」
「風の技は囮だよ。ナイフを通す為のな。テメエの言った通りこの程度の小技じゃあテメエは倒せない。というかテメエと会ったときみたいに消されて終わりと思ってたからな。だからよお、最初からナイフで刺す準備はしていたんだよ。テメエが隙を見せる瞬間に刺す為にな。」
「勿論、最初から分かっていたよぉ?」
空間の歪みがもとに戻る。ファエルには傷一つ無い。ナイフは空を刺していた!
「君は、初対面の相手に能力の全てを見せるというのかなぁ?」
「確かにそうだけど…。」
「それじゃあ本題に入ろうよぉ。組織の、裏切りに協力してくれない?」
「無理」
「即答ぉッ!?」




