三章第五話 『メニーコマーシャル』
「あれ見てください!ゴリラが羽を生やして空を飛んでいますよ!」
ナチュア、ポンプ、ラムネは魔王討伐の為、一つ目の町へ向かっていた。ラムネは記事になるものがないかとニコニコ辺りを見渡している。
「ウチ、羽の生えたゴリラなんて初めてみたよ!あれって魔物なの?」
「いやぁ。お嬢、私もアレは見たことないから何とも言えないよ。マジにゴリラの変異種じゃあないかな?」
「これは良い記事が書けそうですヒャッホー!『Seen Simply Shots』!」
ラムネが指から光を放ち、空飛ぶゴリラの写真を撮った。筋骨隆々で大きな羽。こんな生物がいていいのか。
「完璧に撮れましたッ!いやー。珍生物って最高ですね!これはすぐにスクープを…」
ラムネが見たのは写真のゴリラの目に映る光だ。能力で目を拡大してみると、そこには文字や絵が連なった光が見えた。
「な、なんですかコレはッ!あのゴリラの能力ッ!!?」
「待て待て、どうしたの?驚きすぎじゃあないか?」
「どうしたの?敵でも現れた?撃ち落として潰せるけど」
「ええ…。お嬢過激ぃ」
手を腕に当ててラムネは考えている。考えるがわからない。あのゴリラの能力だとして何故そんなモノをしているのか、と。
「多分、これはゴリラの能力じゃあないと思うよ。コイツは能力の影響を受けている。つまり、『敵』がいるということッ!」
「『敵』ですか…。『取材』させて貰いましょう!」
「つまり、敵。早く見つけて殺そう。敵じゃなくても害があるなら殺すけどッ!」
「お嬢、最近というか出会ってからずっと殺意高くないか?」
すると、遠くからこちらに向かって誰かが歩く姿が見えた。どんな奴かは、遠すぎてわからない。
「さあ『取材』!させてもらいますよッ!『Seen Simply Shots』!!『見られ見合う普遍的な一枚』をどうぞ見せてくださいッ!」
ラムネが奴に向かって光を放ち写真を撮った。そして写真を手に取りその姿をみようとした。見れなかったのだ。目いっぱい、何かが見える。視界が、広告のようなものに遮られていた!
「何ですかッ!!これはッ!!」
「ラムネ、敵見えた?怪しいなら潰すけど。」
再びその状況を発言しようとした。しかし声に出せない。視界にまた新しいウィンドウが現れたのだ。
『注意⚠️:話すには『トーク』DLCが必要です。ご購入になりますか?¥130』
恐らくこのDLCとやらを購入すればどうにかできる、もしくは奴を倒せばなんとかなる、とラムネは考えていた。そのため、身振り手振りで伝えようとしたが、再びウインドウが出てきた。
『注意⚠️:動くには『ムーブ』DLCが必要です。ご購入になりますか?¥130』
ラムネはそれを見て驚いた。そしてお金以外での解決を諦めた。購入を押してDLCを買ったのだ。ウィンドウや広告が消える。
「ラムネは見ましたッ!アイツの能力は動きをDLC化して購入させなければ行動不可にさせる能力ですッ!いうならば金を半強制的に奪い取る能力ッ!アイツはやばいッ!」
「マジッ!?行くよポンプッ!先手必勝ッ!」
「了解お嬢ッ!『フォーユー・レクイエム』!!」
ナチュアが走り出し、ポンプが翼を生やした。しかしラムネは動かない。まだ何かあると思っていたからだ。
「待ってください。アイツは多分何かまだ持っているッ!」
ラムネが危惧していたことはすぐに起きた。ナチュアとポンプの視界に30秒の広告が現れた。これでは周りを見ることはできない。奴はすでに、近くまで来ていた。
「ほっほっほ。すぐに引っかかるとは、若者もその程度かの?儂が真面目に盗賊やってたころは、もっとマシだったのにのぉ」
「ご老人の割には能力はやけに近代的ですね。わざわざここまで来てくれたということは、『取材』に応じるということですね」
「ほっほっほ。厄介な奴が現れたというから、上下関係をわからせにきたのじゃよ。」
「上下関係?そうですね!アナタもクソ勇者もポンプも下でラムネが上ということを、態々理解しに来たということですねッ!」
「お前達はこの『メニーコマーシャル』で詰んでいるということが、まだわからないのかの?」
奴はラムネの視界にも60秒の広告を表示させた。しかしラムネは怯まない。左手に持った奴の写真を浮かして、見らずに写った奴にラッシュを叩き込んだ。
「ラムネは!アナタみたいに金を稼ぐ為にやってるんじゃあないッ!秘密を暴いて恥をかかせて、優越感に浸る為にやっているんですッ!アナタみたいにゲスい能力で、ラムネに勝とうとするような恥を、ラムネが撮ってあげますからねッ!!」
奴は全身殴られて吹き飛んだ。全身痣だらけだ。能力が解除されてナチュアとポンプも自由になった。
「はッ!あれ?コイツもう倒れてるッ!?ウチがスキップしようと待ってた間にッ!?」
「お嬢。今回は不服だがラムネの手柄みたいだよ」
「『取材』完了です。お疲れ様でした。精々くだらない余生を楽しんでください。」




