三章第四話 『Seen Simply Shots』
「とりあえず!早く魔王討伐してきてよね!」
「分かってる!絶対早く帰ってくるよ!」
「お嬢よぉ、早く行こう。あんま時間かけて魔王が超進化なんてしたら私ら死ぬよ」
「それも分かってる〜。」
王城の門を出てすぐ辺りを見渡す。空を見る。騒がしい。魔王軍がきっと気付いたのだ。奴らは動き出していると、ポンプは考えた。そんなとき、森の方からガサガサと、枝を切って葉を揺らす音が聞こえた。そして一つ。パシャリと音が聞こえた。
「お嬢!敵だ!コイツは何かこっちにしてきやがったッ!」
「えッ!?敵?敵ちゃんこっちにおいで!素直にぶっ潰してあげるからッ!」
「物騒だねお嬢」
森からの音が止んだ。そして少女が現れた。
「あら、出会ってすぐ敵だとは、失礼だねぇ。私は味方だよ味方。新聞記者ですの。ちょーっと『取材』させて貰いたくて。」
「取材?」
「はい。貴女達にとっても私たちにとっても有益なモノにしましょーよ。このラムネが書いてあげると言っているのだから、この契約書にサインして、写真の撮影に協力してくださいね?」
一枚の紙を見せつける。ズラズラと長い文が書いている。どれも普通だ。どちらにも無益のように見える。何かおかしいと、ポンプは思った。何か裏があるように、奴の表情は見えた!
「んーっと、ここにサインすればいいの?」
「はい。それで充分です。」
ナチュアはサインペンを手に持った。そして紙に触れようとしている。
「待ってお嬢。これおかしいよ。なんかおかしい!どっちにも無益とか、取材の意味がない!つまり、何かあるッ!」
「だよねー。そんな歪な話なかった。」
ナチュアはとある場所を囲むようにペンを移動させる。すると紙がくり抜かれてそれだけを手に持った。そこにはとても小さな文字で何か書かれていた。
「『写真の所有権も改変についても、こちら側が自由にできる』。怪しいと思ってたよ。マスゴミって奴?」
「…バレてしまいましたか。但し!このラムネにとってそれは些細な誤りでしかないッ!!『Seen Simply Shots』!」
ラムネはサインペンとナチュアの写真を取り出しぐるりとペンを回して、写真のナチュアの腕をペンで刺した。
すると、ナチュアの腕から血が流れ始めた。まるで、元から刺してあったように。
「痛ッ!その写真!まさかさっきのパシャリって音はッ!!」
「いいんですよ。サインを書くと言うまで『説得』すればいいだけですから!ラムネの『Seen Simply Shots』…訳すと『見られ見合う普遍的な一枚』ッ!この能力は写真に写ったモノに干渉し現実にも反映するッ!」
ラムネは指をナチュアとポンプの方へ向ける。すると「パシャリ」という音とともに光が放たれ、写真が無から生まれた。ナチュアとポンプが写る。そしてラムネは写真に写った2人の腹へ向かって拳を放つ。それはナチュアとポンプにも向かい、ナチュアは少し堪えているが、ポンプはピンピンしている。
「アナタ、効かないのですね。いいえ、耐久が高いと言うべきか」
「そりゃ、ラムネ?さんがへなちょこフランスパンで叩いたときの衝撃以下しか出せないからじゃない?」
「それにしては、勇者さんは堪えていますがね。良いことを教えてあげます。この写真をビリビリに破り捨てればアナタ達は無惨にも死ぬ訳です。なので、早くサインをしてください。」
ナチュアは再びテンションが戻った。
「そうだね!でも、写真を奪えばいいわけじゃん!」
ラムネの手に圧力を作り写真を吹き飛ばして写真を奪い取った。
「甘いですね!写真はいつでも撮れます!」
指をナチュアの方に向けたその時ッ!!ナチュアは叫んだ!!
「こっちにレクイエムの風を出して!」
「お嬢…!? 理由は分かんないが、やってやるよ!」
白銀の羽を生やして、オーラをナチュアの方に放つ。ナチュアは低圧区域を作り、壁のようにしてラムネの『撮影』を受けた。
「あら、何がしたかったのか知りませんが、『無駄』でしたねぇ〜え!」
そして、写真を再びラムネが殴ろうとした。すると、ラムネの指の一部が石化した。
「何ですかッ!これは!!ラムネの指がッ!」
「ラムネの能力は多分、写真…つまり写った歴史に干渉するの!だから、『フォーユー・レクイエム』の風に触れればそこの魂は崩壊するッ!」
「よく気づきましたね。ラムネは素晴らしい能力を持っているのですよ。」
ラムネはそう自信満々に言った。そして嘲笑する。
「確かに、そうされると攻撃できませんが、こちらは自由なタイミングで撮影できるんですッ!こちらのがまだ有利ッ!」
すると、ラムネの頭が鷲掴みにされた。
「なッ!?」
「私を忘れられるとこまるね!」
「クッ…!!?」
「そうだ、ラムネ、一緒に魔王討伐しない?」
唐突にナチュアはそう言った。ポンプとラムネは困惑している。すぐに、ポンプは真顔に戻り、早々とナチュアにノルことにした。
「そうだそうだ!お嬢と一緒に『取材』できるんだから、きた方がお得よ!」
「…確かに…。じゃあなくて!ラムネは記者として過ごしたいの!この平穏な暮らしを捨てるわけには…」
「平穏という割には物騒」
「…。しょうがないですね!乗ってあげますよ!協力してあげます!感謝してくださいね!」
ナチュアとポンプは先に歩いていた。世間話も始めている。
「ちょっとぉッ!ラムネを仲間にしておいておいていくのは最低ですよ!ちょっとぉ!!?」
早々と歩いている。なんならテンポが少し上がった気がする。
「ぜええったい恥をかかせてその姿を写真に撮ってあげますッ!覚悟しておいてくださいねッ!」
「はいはい行くよー。お嬢は待ってくれないぜ?」
「このクソ勇者がッ!…しょうがないですね!ま、ラムネが合わせてやりますよ!」
「頼もしいね」
「当たり前ですッ!!もーう頭にきましたからッ!許しませんッ!だから、魔王なんかとっとと蹴散らせてラムネの功績にしてやるんですッ!!」
「はいはい」
ナチュアとポンプとラムネは並んで歩き出す。魔王城へと、歩いていくのだった。




