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三章第三話 『亜空間移動』


「なんか作戦とかあんの?」


ポンプがナチュアにそう訊いた。ナチュアは自信満々な顔をした。そして言った。


「ある訳ないでしょ!」


「おえ〜。お嬢さんマジか。期待したのが間違いだったかな?」


「作戦なんか立てなくても勝てるってことだよ!」


依然、威厳のある姿の魔王軍幹部、ジャヌスが立っている。そして話すのをやめたナチュアとポンプの方を向いて言った。


「はん?戯れは終わったか?愚民と愚か者。俺を待たせるな。」


「その割には待つんだ…。お前なんかテトラポットに張り付くフジツボより簡単に勝てる!」


「行くよ。嬢さん。『フォーユー・レクイエム』ッ!」


銀色の羽が現れて、ジャヌスを包み込もうとする。羽が通った場所は石化し崩壊が始まっている。ジャヌスは退屈そうに足踏みしている。


「その程度か?あ?速度が足んねえぞ?この俺には届かない」


ジャヌスの周りに異質なオーラが流れてジャヌスが沈み込んだ。そして消えた。


「なッ!?消えたッ!?ありえねえ!質量保存の法則無視してやがるッ!」


「魔法がある時点でそんな法則通用しないでしょッ!喰らえ!とっとと出てきなさいッ!」


ナチュアが『偏空』を何もない場所で使った。圧力が急激に弱まり、周りのものが引っ張られる。しかしジャヌスは現れない。少しの揺らぎもないのだ!


「どうなってんのッ!?物理法則とか知らないのッ!?」


「この俺にとってそんなもの、知る由も無いな」


「いつの間にそこにッ!?なぜッ!?ウチの『偏空』に引っかからないのッ!?」


ジャヌスは背後にいた。背後で笑っていたのだ。ヨーヨーを放つも躱される。


「コイツッ!嘲笑っているッ!種も仕掛けも何もわかっていないウチに対して、嘲笑っているッ!!!さっきまで家の隙間でこそこそしているゴキブリのように全然現れてくれやがらなかった癖にッ!…なんちゃって。」


ヨーヨーは戻ってくる。戻ってきたヨーヨーはとてつもない回転で奴の背中を抉った。


「言ったよね。死んでも死んでしまい死にたくなるくらいにえげつない一撃を喰らわせてやるって。」


「クソッタレの愚者がッ!この程度でッ!」


「逃げるの?」


「逃げるさッ!勿論だなッ!魔王の命令なんてどうでも良いッ!俺は生きるぜッ!この『亜空間移動』の力でなッ!はーっはっはッ!そのどれだけ頑張っても愛玩にしかなれないちっぽけな糞未満で俺を殺せると言うのなら追いかければいいじゃあないかッ!」


「そうだね!ウチは追わない!」


ジャヌスが地面に亜空間を作り、沈んで逃げようとした。しかし、とんでもない圧力がかかり亜空間に入れない。


「なんでだッ!オマエェェェッ!」


「はい。解散。」


「了解嬢さんッ!」


ポンプが現れてジャヌスを白銀の羽で包み込む。ジャヌスは石化し始めて、パリパリと割れていく。そしてピエロのお面すら、跡形も残らず消えていった。


「…フォーユー・レクイエムの流石の強さに天国も恐怖ッ!そして追い出され今世に帰ってきて、猛反省、みたいなギャグ展開。あっていいと思うんだけどなぁ」


「しょうがないよ。それに確か、魂ごと潰すんだっけ。アンタの能力なんだから。それにここで殺さなきゃ私達死ぬんだし。…ウチの偏空でもう少し苦しめて殺した方がよかったと思うけど。」


「なに?嬢さん、ここに来るまで殺戮大会でもしてたの?」


「いいや。麻薬取引を見て関係者に追われて殺されかけてた」


「そんな恐ろしい能力を持ってて殺されかけるって。はーあ、お嬢の元の世界こわ。それに麻薬…?ヤバいものなのかな。」


ナチュアは微妙な表情とともに説明の面倒臭さを感じていた。ポンプはそれを見て、なんとなく説明を求めない方が良いと感じたのだった。


ーーーーーーーー


「貴女がナチュア?私はこの国の王女のミカエル・アポリオン・グレイトフル!無惨に魔王軍幹部を殺したんでしょ!?すごいわー!とってもすごい!」


ナチュアとポンプはジャヌスを倒したのち、ミカエルと話していた。


「王女様?よろしくね!!こんな普通の女の子だけど、よろしくね!」


「ふ、普通?お嬢、さっき普通どころか殺し屋の目をしてたよ。アレは闇で堂々と動くタイプのJKだ。殺す為に殺し屋やってるタイプのバケモンにしか見えなかったよ」


「闇で堂々と動く…? ゴキブリ…?」


「きったね〜。おえー。」


するとミカエルが腕をブンブン回して怒った。話についていけなくなったためだ。


「ちょっとぉっ!私王女だよっ!?もう怒りました!パーティ呼んであげません!」


「パーティ?何それ行きたい!」


「呼んであげないもん!強者を集めたパーティに貴女はいらないもん!」


「それは困る…!何をしたらいけるの?」


「魔王。そうよ魔王!魔王をぶっ殺して私に死骸を見せたらパーティに呼んであげる!強さの証明って奴よ!…別に途中で帰ってきても幹部を倒したことに変わりはないから呼んであげてもいいけど」


「お嬢。コイツ本音出やすいタイプ!」


「コイツって何!?私王女!!」

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