三章第一話 ブレイクアンドスタート
「なんでウチがこんな目に遭わなきゃなんないのー!」
こうなった原因は全て駅で麻薬の取引現場を見てしまったことが原因である。この神羅夢 夏羽はその麻薬を取引をしていた男達に追われていた。夏羽に抵抗する手段などない。たまたま買ったヨーヨーと先程拾った空のお菓子袋だけである。夏羽はお菓子を買わなければこんなことにならなかったのだと後悔しながら走っていた。
麻薬の交換にはお菓子袋が使われていた。もし夏羽がお菓子袋をベンチに置いていかなければ、お菓子袋を探さず麻薬を取引しているということも知らなかった。知ってしまったのが全ての問題だった。
電車が線路を渡り走っている。夏羽は電車を逃した事を気にもせず、男をまいたと思い歩みを止めていた。
それすらも間違いだった。すでに男は、背後にいたのだ。電車が真下で走っている。ぶつかれば、死ぬ。
「マジ最悪ッ!」
夏羽はヨーヨーを電車に引っ掛け電車の速度を利用して電車に見事に着地した。しかし、遅かったのだ。すぐにトンネルに激突してしまう。どうにか安全に逃れようと考えていたときだった。いつのまにか夏羽は豪華な部屋の中央にいた。何か怪しい格好をしている人や、貴金属で身を包んだ人もいる。床に描かれているのは光る線…魔法陣のようだった。
「ついに成功したぞッ!新たなる勇者を召喚することに、成功したッ!王女様を呼べ!恐らく王女と共にいるベリアルもだッ!」
そのうちの1人がそう叫んだ。夏羽は勇者として、異世界に召喚されてしまったのだ!
夏羽はホッとしていた。少しこれが遅れていれば、夏羽はトンネルとぶつかり死んでいたかもしれなかったからだ。
「おいお前!名前はなんというんだ!」
また奴が叫んだ。名前を聞かれている。夏羽はあまり異世界で日本名は出さない方がいいと思い、考えた。
(神羅夢 夏羽…、夏羽 神羅夢…。なつは しんらむ…。)
夏羽は言った。偽名を言う事になると少し罪悪感があるが言った。
「ナチュア。ナチュア・シンボラムなの!ウチの名前は!」
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そう大声で宣言された部屋には奥の方から走る音が聞こえた。それの少し遅れに声が聞こえた。
「侵入者ですッ!宝石と金がいくつか盗まれましたッ!」
部屋がガヤガヤ焦りの声で満たされる。ナチュアは困惑していた。誰も向かわないのか、と。
「もしかしてこの部屋…。戦闘員がいないとか言わないよね…?」
「お前が戦うんだよッ!早く行けッ!」
「マジ〜!?」
ナチュアも焦りに飲まれた。多少動く事はできるが戦いとなれば話は別である。
壁がドスンと壊れる。侵入者だ。侵入者が入ってきたのだ。薄い灰色の髪に紫色のマフラーを巻いているナチュアと同じくらいの年齢の少女だ。
「ヤバ!人が多い部屋に入っちゃったか!」
ナチュアは思考を巡らせた。初めての世界で初めての敵との遭遇だ。どんなことが起きるかすらわからない。ナチュアはポケットからヨーヨーを取り出した。
「マジ最悪鉢合わせじゃあん!これ逃げていいやつかなッ!」
「お嬢さん逃げるの!?私に協力してくれたり〜」
「無理無理!盗っ人と一緒なんてマジ無理よ!」
ナチュアを召喚した魔法使いが一斉に雷魔法を放出する。少女は間一髪躱すも追撃の風魔法で腕を切断されてしまった。しかし少女は顔色を変えなかった。そのまま少女は魔法使いに突っ込む。そして近づききった瞬間、腕を生やして顔をタコ殴りにした。
貴族のような奴が言った。
「気をつけろ!あの再生能力は…アレしか考えられない!アイツは半魔だ!絶対にそうだ!」
「気づかれちゃったか!びっくり!」
魔法使いが持っていた薬瓶を投げる。薬瓶は少女に当たらず床にあたると床が溶け始めた。
「あの感じ…塩酸ッ!授業で見たからわかる!この世界にもあるんだ!しかもとんでもない強さ!」
ナチュアは何かないかと探していた。しかしどこを見ても何もない。武器一つないなんてあまりにも不用心だと感じた。ナチュアは転移前と何か変化がないか考え始めた。目を閉じる。すると、自分の体から何かが光っているような気がして、それを手で掴む。すると不思議と体が軽くなり、ナチュアは何かを取り込んだような気がした。
自然と使い方は理解した。
「逃がさないよ!」
少女はそれを聞いてナチュアの方を向く。そして嘲笑うかのような顔でこちらを見た。
「お嬢ちゃんに何ができるのかな!?挑発?」
「勿論、粛清だよ〜!」
ナチュアはヨーヨーを回して少女へぶつけようとする。少女は避ける。しかし少女はヨーヨーへ吸い込まれていった。ヨーヨーは少女の肉を抉り続ける!
「何これッ!?」
「ウチの新能力ッ!名付けて、『偏空』の因果ッ!圧力を操作して空を操る、高所恐怖症には最悪の能力よッ!!」




