王国秘密会議?そのニ
――「ならば決まりですね!」
ジュリアは手紙を読み終えると、即座に結論を出した。
そして椅子を引く。
立ち上がる動作は軽い。
もう用件は終わった、と言わんばかりだった。
「では、私はこれで」
「待て」
即座にランベールの声が落ちる。
「話はまだだ」
ジュリアは振り返る。
「何がですか?」
ランベールは、当然のように言った。
「新政府を立ち上げるなら、旗印が要る」
「では公爵方が適任では?」
「それではまとまらん」
ホドフリートが静かに続ける。
「諸侯は互いに牽制し合っておる。どこか一角に寄れば、必ず割れる」
エウラーリアが扇で口元を隠しながら微笑む。
「つまり、“誰もが納得できる顔”が必要なのよ」
「それがなぜ私なんですか?」
ジュリアの声は既に少し冷えていた。
「お前が一番、納得されるからだ」
アルトゥール・ランカスターが即答する。
「黒龍を落としたのは事実だ」
「それなら、ジェドでもいいじゃないですか!黒龍に止めを刺したのは彼です」
ジュリアが食い気味に言う。
「あやつはバカだから駄目だ」
アルトゥール。
「戦場で一番結果を出しているのもお前だ」
「あと単純に、誰も逆らえん」
「褒めてます?」
「褒めてる」
「褒めてないですよね?」
ジュリアはため息をつく。
「……実家に帰らせてもらいます」
椅子を押しのける。
立ち上がる。
その瞬間。
「落ち着けジュリア」
エドワードが即座に言った。
「ここがお前の実家だ」
「……最悪です」
ジュリアは本気で嫌そうだった。
その隣で、フィリベールが静かに咳払いする。
「それとだな」
「まだあるんですか」
嫌な予感しかない顔。
フィリベールは、ゆっくりと封筒を差し出した。
黄金の翼を持つ獅子の紋章。
帝国。
「お前宛だ」
「誰からですか」
「カイル・エル・バルツァー第三皇子から」
沈黙。
「――は?」
ジュリアの声が素で裏返った。
封筒を開ける。
読み進める。
数行で止まる。
そして。
「……求婚状?」
エドワードが顔を覆う。
「やめてくれ……この場で全部積むな……」
ランベールが淡々と告げる。
「外交的には、これを断るのが一番難しい」
ホドフリートが頷く。
「帝国との関係悪化は避けられん」
アルトゥールが腕を組む。
「だが受けるのはもっと無理だ」
エウラーリアが微笑む。
「つまり詰みね」
沈黙。
その中心で。
ジュリアはゆっくりと封筒を閉じた。
「……つまり」
一言。
「私、政治の盤面に“配置済み”ってことですか」
誰も否定しなかった。
その瞬間。
ジュリアは静かに立ち上がり直し――
「なら最初からそう言ってください」
とだけ言った。
そして、ため息を一つ。
「本当に帰ります」
「だからここがお前の実家だと言っている」




