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地上掃討

 轟ッ!!雪原が爆ぜた。

 だが。ジェラルドだけ、加速がおかしかった。


 一歩。ただ、それだけ。


 踏み込んだ瞬間には、もう数十メートル先へ到達している。

 雪が遅れて舞った。


「――ガ?」


 オーガが理解するより早く。

 大剣が振り下ろされる。


 ゴォォォッ!!!


 衝撃。オーガの上半身が消し飛び、その後方にいた魔族ごと一直線に吹き飛んだ。

 骨。肉。黒い血。まとめて雪原へ撒き散らされる。


 ジェラルドは止まらない。


「邪魔だァ!!」


 横薙ぎ。


 ドゴン!!


 サイクロプスの胴体が捻じ切れ、その巨体が周囲の魔族を巻き込みながら転がった。


 インプ達が悲鳴を上げ、慌てて術式を展開する。

 炎弾。氷槍。雷撃。


 だが。


「おせぇ、つってんだろ!」


 踏み込み。

 ブォン!!


 振るわれた大剣が、魔術陣ごと空間を叩き潰した。

 術式が発動前に霧散する。インプ達の顔から血の気が引いた。


 一方。


 別方向では、白銀の閃光が走っていた。

 ジュリア。剣閃は細い。

 だが、異様に速い。首。関節。眼。鱗の隙間。最小動作で、確実に急所だけを断っていく。


「遅いです」

 淡々とした声。


 指先が動く。展開されかけた魔族側の術式が、音もなく崩壊した。

 術者の魔族が目を見開く。


「ナ――」


 次の瞬間には、首が飛んでいた。


 空では、軍用飛空艇から一斉にいくつもの太い光が放たれる。


 ドゴォォォォン!!


 黒龍の巨体が揺らぐ。


 黒龍。

 飛空艇。

 空を埋める魔導兵器群。


 そして、その下で自分たちを蹂躙する二人の人間。

 魔族たちの隊列が、初めて揺らぐ。


 オーガの一体が、怯えたように後退った。


「アイツラ……」


 低い声。


「ホントウニ、ジンゾク、カ……?」


 轟音。


 雪原が、赤黒く染まっていく。

 ジェラルドが振るうたび、魔族の隊列がまとめて吹き飛ぶ。

 もはや剣ではない。暴風だった。


 踏み込み。加速。衝撃。

 その全てが、人間の限界を踏み越えている。


「どけェッ!!」


 ドォォォン!!


 大剣がトロールの頭蓋を叩き割り、そのまま後方のオーガ三体を巻き込んで地面へ叩き潰した。

 雪原が陥没する。飛び散った黒血が、熱で蒸発した。


 一方。


 ジュリアは、静かだった。


 白銀の軌跡だけが、吹雪の中を滑る。


 速い。


 だがそれ以上に、“無駄がない”。


 剣を振るう前に、すでに敵は死んでいる。


 オーガが咆哮し、巨大な棍棒を振り下ろす。


 ジュリアは半歩だけずれた。


 その瞬間。

 棍棒を握っていた腕が、肘から滑り落ちる。


「――ギッ?」


 遅れて。


 首が落ちた。


 ジュリアは振り返りもしない。


「ジェド。右後方、伯爵級です」

「おう」


 返事と同時。ジェラルドが地面を砕いて跳ぶ。

 空中。翼を持つ悪魔型魔族が、慌てて術式を展開した。

 だが。


「見えてんだよ」


 ブォン!!


 大剣が、魔術陣ごと胴体を両断した。

 伯爵級魔族の上半身が、空中でずるりと滑り落ちる。


「なっ――」


 魔族側の指揮系統が乱れ始める。

 強い。強すぎる。


 だが問題はそこではない。この二人。連携が異常だった。

 ジェラルドが破壊した隙間へ、ジュリアが滑り込む。ジュリアが崩した術式を、ジェラルドが真正面から叩き潰す。

 速度。判断。間合い。――全部が噛み合いすぎている。まるで。長年、同じ戦場を生き抜いてきた兵士みたいに。


「ありえない……」

 後方のインプが震える。


 その時だった。


 ヴオォォォォォォォッ!!


 空が揺れた。


 黒龍。


 無数の魔導兵器による集中砲火を受けながら、なお健在。


 巨大な翼が広がる。

 空そのものが、夜みたいに暗くなる。


 兵士たちが絶望に顔を染めた。


「あれは……無理だ……」

「倒せる相手じゃない……!」

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