表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
145/159

点と線

「カルナ。あなたには悪いのですが、私たちは現在、この遺跡の調査中です。その申し出には今すぐ回答できません」

「……そうか」

 カルナが肩を落とした。


「ジュリア。冷たすぎじゃない?」

 ミシュリーヌが眉をひそめる。


「そうです!カルナさんが可哀想です」

 リィンも非難するように言う。


「別に俺はいいぜ。面白そうだしな」

 ジェラルドは相変わらずだった。


「我々は国家間の争いには関与しない。それは冒険者ギルドの意向だ」

 A級冒険者パーティ『蒼穹の道標』のクライヴ・キルレインが難色を示す。


「おいクライヴ。それは西側国家での話だろう? 相手は東方の未知の国家だぞ」

 レオン・ハルフォードがクライヴを窘める。


「いいや、我々の行いはすべてギルドに報告しなければならない。たとえ未知の国家相手だとしても、手を出していい理由にはならない」

「……だけどよ」


「レオン。私たちはギルドのお陰でここまでなれたのよ。勝手な行動は評価に響くわ」

 ミレーヌ・クラウゼルもクライヴの意見に同調する。


「私はリーダーの意見に従います」

 セレス・アルディンは意見を差し控えた。


「ちっ。お前らもかよ」

 レオンは納得行かなそうに顔をしかめた。


「待って下さい」

 ジュリアが静かに言った。


「話はまだ終わっていません」

 その声音に、皆が口を閉ざす。


 ジュリアは少し考えるように、指先でトントンとカップを弾く。紅茶の表面に波紋が揺れる。


 そしてカルナを見る。


「一つ確認したいことがあります」

「な、なんだ?」


「そのグンダラージャ帝国が周辺諸国へ侵攻を始めたのは、いつ頃ですか?」

「八年前だ」

 即答だった。


「ちょうどヴォラ・ロカストが現れた頃だ」


 ジュリアの指が止まる。


「八年前……」


 ジュリアは小さく復唱した。


 それ以上は何も言わない。


「今度は別の質問です」

「?」


「彼らは何を求めて戦争をしているのですか?」

 カルナは少し考えた。


「……神鳥の羽根だ」

「神鳥?」


 ジュリアの目が僅かに細くなる。


「ああ。シームルグの羽根には伝承があるんだ。その昔、偉い賢者がシームルグの羽根で出来た杖を使い、大地を癒し、恵みの雨を呼んだと」


 その言葉に。


 ジュリアの脳裏に、ある光景が再生された。

 東方大平原。セシリアの癒し。そして、それに呼応するように動いたシームルグ。異常な速度で回復した植生。


「つまりグンダラージャは、ヴォラ・ロカスト災害の後に、大地の癒しを求めたと」

「そういうことだと思う」


「なるほど」と言うと、ジュリアは僅かに目を伏せた。


 そして視線を上げ、全員を見渡した。


「皆さん」

 静かな声だった。


「我々の調査目的を覚えていますか?」


 その言葉に、クライヴが眉をひそめる。

「なんだ急に」


「いいですから思い出してください」

 珍しく有無を言わせない口調だった。


「一つ目」

 ジュリアが指を一本立てる。

「シームルグとアトネータイが、なぜゼオガンダル山脈を越えたのか調査すること」


 二本目。

「二つ目。その大移動の原因を調査すること」


 三本目。

「三つ目。余裕があれば遺跡調査を行うこと」


「そうじゃったな」

 バルトルトが頷く。


「少し忘れていました」

 ゲルダも苦笑した。


「そう言えばそんな話だったわね」

 エリザは完全に忘れていた。


 ジュリアは頷く。

 そしてゆっくり言った。


「では質問です」


 ジュリアがゆっくりと全員を見渡す。


「ヴォラ・ロカスト、グンダラージャ帝国、神鳥シームルグ」


 洞窟に風の音だけが響く。


「この三つが無関係に存在していると思いますか?」


 誰も答えない。


 先に口を開いたのはクライヴだった。

「……何が言いたい」


 ジュリアは答えない。


 代わりにカルナへ尋ねる。

「カルナ。あなたはシームルグを見たことはありますか?」


「ああ。数ヶ月前、山脈を越えて行くところを見た」


 その瞬間。


 ジュリアは確信したように息を吐いた。


「どうやら」静かな声。

「我々は、思っていたより遥かに核心へ近づいているようです」


 全員の視線が集まる。


「もしグンダラージャ帝国がシームルグを追っているならば」


 ジュリアは一瞬目を閉じ、そして、大きく息を吸う。


「我々が彼らと接触することは、国家間戦争への介入ではありません」


 ゆっくりと断言した。


「調査任務の一端です」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ