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サンドゴーレム戦

 戦闘モードへ移行したリィン・オメガが魔力翼を展開する。


「イキマス」


 爆風。


 白い機影が消えた。

 次の瞬間にはサンドゴーレムの背後。


 ザン!!


 青白い銀閃。

 光線剣が砂の身体を横一文字に切り裂いた。


 だが、手応えがない。


「……?」


 リィン・オメガが首を傾げる。


 その瞬間だった。

 崩れた砂が生き物のように蠢く。

 上下に分かれた砂塊が、一斉にリィン・オメガへ襲い掛かった。


 ザバァッ!


 回避は間に合わない。

 白い機体が砂に飲み込まれる。


「リィンちゃん!」


 エリザが声を上げる。

 砂の塊が膨れ上がる。

 まるで獲物を包み込む繭のように。


 しかし。


 直後。


 ボン!!


 砂塊の内部から光が漏れた。


 次の瞬間。


 無数の穴が開き、圧縮された空気と砂塵が四方へ吹き飛ぶ。


 バシュッ!!


 魔力翼を輝かせながらリィン・オメガが空中へ飛び出した。

 全身が砂まみれである。


「おお……」

 レオンが感心したように呟く。


 だが。


 リィン・オメガはすぐにエリザの元へ帰還した。


 着地と同時に膝をつく。


「カドウブ ノ イチブ ソンショウ……」


「リュウシ ガ コンニュウ……」


「セントウケイゾク コンナン……」


 音声もどこか途切れ途切れだった。


「あちゃー」

 エリザが額を押さえる。

「この子じゃ相性が悪いみたいね」


「近接戦は難しそうですね」


 距離を取るジュリア達。


 しかし、砂の虫達はジリジリと近づいてくる。


 ザン!!


 ドシュッ!!


 パァン!!


 ジェラルドの飛ばす斬撃も意味がなかった。

 ミレーヌの火炎術式、そしてジュリアも破裂術式で砂を剥がそうと応戦するが、あっという間に砂が復活する。

 決定打が無い。


「ミリー」

「なあに?」

「あの砂、ミリーの力で剥がせたりしませんか?」


「やってみる」


 ミシュリーヌが手を翳す。


 ザバァ!!


 砂が吹き飛ぶ。


 中からは頭一つ分ほどの大きな黒い甲虫。


 丸見えだった。


「いけた!」

「ナイスです!」


 しかし虫が羽を広げる。


 ブゥゥゥン。


 飛んで逃げる気のようだ。


「逃がしません!」


 ジュリアが咄嗟に駆け出そうとする。


「ジュリア待った!」

 呼び止めたのはジェラルドだった。

「え?」


「良く考えたらさ」

「はい」

「虫だろ?」

「はい」


「じゃあ、あれでいいんじゃ?」

「あれとは?」

「虫ホイホイ」

「ああ!」


「エリザ」

 ジュリアが真剣な顔でエリザに声をかけた。


「例の虫ホイホイ、持ってきていますか?」

「誘引式広域蟲駆除魔導具です。正しい名称を覚えて下さい」


「覚えにくいのです……で、持っていますか?」

「もちろんです」

 すっ、とどこからともなく黒い小さな箱を取り出した。


「持っているなら何故気づかなかったのですか?」

「研究に没頭していて完全に失念していました」


 そう言うと、エリザが漆黒の箱を遠くへ放り投げた。


 コン。コン。コロコロ。


 カチリ。

 小さな起動音。


 丸裸になって飛び立とうとしていた虫たちが。


 ブゥゥゥゥン。


 小さな黒い箱に群がり始めた。


「……なんですか?あれ」

 クライヴが眉を寄せる。


「虫を駆除する魔道具です」

「あれで駆除できるのか?」


「いえ、魔道具が小さすぎて、内部のサロミュール鉱が毒餌として役に立っていません」

 エリザが眼鏡を上げながら補足した。

「それにサロミュール鉱が効果のあるのは巣を持つ群体型の虫です」


「つまり?」

「現状、虫を集めるだけです」


 沈黙。


「欠陥品じゃねぇか」

 ジェラルドが呆れた。


「違います」

 エリザは即答した。

「用途が違うだけです」


「……しかし、無いよりマシですね」

 ジュリアが剣を抜いた。

「今なら斬り放題です」


 他の面子も大きく頷いた。

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