表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
140/159

ゼオガンダル遺跡。再突入

 出発前。

 ジェラルド、リィンがヴァランタン邸の庭に集まってきた。


「おはようございます」

「ちゃんと寝れて疲れも吹き飛んだぜ」


「おはよ。ふぁああ」

 ミシュリーヌは眠そうだ。


「ジュリア様」

 ヴァランタン家の家令がやってきて、ジュリアに耳打ちした。

「遺跡調査隊から定期連絡がありません」


 ジュリアは目を閉じた。

「……またですか」


「何があったんでしょうか」リィン。

「変な罠にでも引っかかったとか?」ジェラルド。


「研究に夢中になって忘れている可能性もあります」

 ジュリアが即答した。


「もう。さっさと行きましょうよ」ミシュリーヌ。


「ええ。急ぎましょう」

 ジュリアは呆れながらも転移門を開いた。


 ◇


 ゼオガンダル山脈遺跡。


「バルトルト殿!無事ですか!」


 振り返るボサボサの髪の三人組。


「おお、ジュリア殿」


 見た目とは打って変わって普通に元気である。

 なんなら顔色も良くツヤツヤしている。


「何かありましたか?」

「いや?」


 全員無事。


「では何故定期連絡が途絶えたんですか……」


 研究室のようになった制御室。

 壁一面のメモ。

 床一面の羊皮紙。


「ごめん。忙しくて忘れてたわ」

「楽しすぎて忘れておった」

「だって新発見が多すぎたんです」

 エリザが反論する。


「この制御室だけでも未知の術式が二十七種類」


「二十七!?」


 ゲルダも興奮気味に頷く。

「しかも自己修復機構付きです」


「動力制御も見たことがありません」

 エリザが興奮冷めやらぬ顔で補足する。


「飛行術式の痕跡もあったぞ」

 老ドワーフもニコニコと自慢げに語る。


「それで徹夜していたと」

「はい」

 エリザが平然と答える。


「はいじゃありません」

 ジュリアが額を押さえる。


「やっぱりな」

 ジェラルドがやれやれと、座り込んだ。


「それよりも、あの壁。黒くないですか?」


 リィンの言葉に。

 ジュリアの動きが止まった。

 ジェラルドの顔からも笑みが消えた。


「……どこです?」

 ジュリアがやや硬い声で訊く。


 リィンが指差す。

 崩れた岩壁の奥。

 そこだけ色が違った。


 黒い。

 まるで粘土のように。

 ぬらぬらと光を反射している。


 四年前。ヴァランタン公爵領の鉱山で見たものと、よく似ていた。


「……」

 誰もすぐには口を開かなかった。


「もしかして」

 ミシュリーヌが呟く。


「おい」

 ジェラルドの声が低くなる。


「まさか」

 ジュリアも眉をひそめた。


「ん?あれか。装置を再起動しようとしたら、地震が起きてな。気づいたら崩れておった」

「あの時は驚いたわね」

「動力源につながる魔力経路が短絡していたらしくてな。この装置が何故動作しないのか。結局わからんままじゃ」

 バルトルトが髭をもみながら言う。


 その時だった。ジュリアの〈魔力検知〉に、壁の向こう側の反応が引っかかった。


 一つ。

 また一つ。

 さらに一つ。

 まるで眠っていた何かが目を覚ますように。


 次々と。


「……多いですね」


 ジュリアが呟く。


 その瞬間。

 休憩していた『蒼穹の道標』の斥候レオンが勢い良く立ち上がった。


「おい、なんか来るぞ!!」


 視線は黒い壁の方向。

 他の冒険者三人も即座に武器を構える。


 空気が張り詰めた。


 ―――ドゴォン!


 黒い壁が崩れ落ちる。


 ザラザラ。


 サラサラ。


 ズルズルズル……


 穴からでてきたのは、アビス・ターマイトではなかった。


 砂。


 大量の砂。


「……砂?」


 砂が。もぞもぞと動いている。


 一体、二体、三体。


 次々と現れる砂の塊。


 人型。


 いや、違う。


 どこか歪だ。


 手足が短い。


 頭部も不自然に大きい。


 そして歩くたびに。


 ザラザラと砂が零れ落ちる。


「サンドゴーレム?」

 レオンが呟く。


「ミレーヌ!撃て!!」

 クライヴが叫ぶ。


「〈蒼爆炎〉!!」

 ミレーヌの杖から青い光線が迸る。


 強化爆炎魔術。サンドゴーレムを穿つ。

 だが、砂を撒き散らしただけで、ダメージを受けない。


 背後に着弾した爆炎魔術が轟音を響かせた。 

 爆発の余波は壁や天井を揺るがし、小さな土砂崩れを起こす。


 サンドゴーレムはその砂を集めてすぐに体を再構成する。

 ジュリアを警戒しているのか、砂の山のような形のまま蠢くサンドゴーレム達。


 だが。

 ジュリアは眉をひそめた。


「……違いますね」

 ジュリアが呟く。


「何がだ?」

 ジェラルドが訊く。


「サンドゴーレムなら核があります」

 視線は砂の魔物へ向く。


「ですがあれは……核の反応ではありません」


 ジュリアが腕をかざす。指先が術式を練る。

 選んだのは、魔力装填式長筒に使われる、空気を破裂させる単純な術式。


 パァン!!


 甲高い音とともに、サンドゴーレムの一体が砂煙を上げて弾ける。


 ズルリ。

 胸部の砂が崩れた。


 カチカチカチ。


 砂の奥。


 一瞬、何かが蠢いて見えた。

 巨大な顎。

 黒光りする外殻。


 だが。すぐに砂がそれを覆い隠した。


「あれは…?」

 クライヴが目を細める。


 ジュリアは数秒、瞬きをする。


 そして小さく頷いた。


「虫です」

「虫?」

「正確には、砂で擬態しているのでしょう」


 サファイアの瞳が魔物を追う。


「あれはサンドゴーレムではありません」

「じゃあ何だ?」


「虫です」


 即答だった。


「ただの虫には見えねぇぞ」


「砂限定の世界干渉型でしょう」


 ジュリアが砂の群れを見据える。


「少なくとも、西側には存在しない系統の魔物です」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ