表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
130/159

目覚まし

 ジュリアは眠り続ける探索隊を見渡した。

 全員の身体に同じ術式が絡みついている。

 緑の魔力で編まれた複雑な構造。


 しゃがみ込み、術式を観察する。

(一般古典魔術には存在しない術式ですね)


 精神浸食に対する安全性に対する配慮。概念の構造、それぞれを構成する式の列挙定義と再帰経路。

 術式の圧縮方法。

 どれも見慣れた人類の魔術とは異なる。


「どう?」

 ミシュリーヌが覗き込む。


「おそらくは古代ドワーフ文明の術式ですね」

「わかるの?」

「完全には」

 ジュリアは術式転写紙へ次々と構造を書き起こしていく。


「ですが……」

 そこで少しだけ目を細めた。


「美しいですね」

「そこ?」


「概念化の方法が非常に合理的です」

 感心したように呟く。


「いや、それより起こせるの?」

「たぶん」

 ジュリアは術式を解析しながら指先で魔力を組み替える。


「眠らせたのなら、反転も可能でしょう」

 術式をカチリと起動する。

 淡い光が広がった。


 ◇


「う……」


 最初に反応したのはエリザだった。


 続いてゲルダ。

 バルトルト。

 冒険者達。

 順番に目を覚ましていく。


「……なぜ、ジュリアがいるの?」


 第一声だった。

 ジュリアのこめかみに青筋が浮かぶ。

「起こしてあげたのに、第一声がそれですか」

「仕方ないじゃない」


「大変申し訳ない。我々が付いていながら」

 A級冒険者パーティ『蒼穹の道標』のリーダーのクライヴが済まなそうに言う。


「この遺跡はヤバいわ」

 エリザは即座に言った。


「扉を開けたらボスがいたの」

「はい」

「なら戦おうと思った瞬間」

「うん」

「床の魔法陣が光った」

「うん」

「気づいたら寝てた」

「なるほど」


 ジェラルドがゴーレムを見上げる。


「じゃあ、あのデカブツの術式じゃなかったのかよ」

「違うじゃろうな」


 答えたのはバルトルトだった。

 床へ腰を下ろしたまま髭を撫でる。


「この遺跡は元々、人が運用する施設じゃ」

「それが?」


「侵入者を眠らせる」

「うん」


「その後、警備隊が豚箱へ放り込む」

「うん」


「その方が効率的じゃろう」

「ああ」


 妙に納得した。

 確かにその通りだった。


「じゃあ、あのボスは?」


 ジェラルドが正面の巨体を指差す。

 巨大ゴーレムは微動だにしない。


 まるで彫像のようだ。

 バルトルトは肩を竦めた。


「知らん」

「知らんのかよ」


「ダンジョン化した際に勝手に発生したんじゃろう」

「適当だな」


「適当ではない」


 老ドワーフは立ち上がった。


 そしてゴーレムを見上げる。


「じゃがな」

「?」


 彼の目が細くなる。

「あの形状、儂のパワードスーツに似ておろう?」


 全員が見比べた。

 言われてみれば似ていた。


「つまり?」


「古代ドワーフ文明の機兵を模倣した存在じゃろう」


 バルトルトがニヤリと笑う。


「少し興味が湧いてきたわい」

 バルトルトの纏っているパワードスーツの背中から、浮遊砲台が四つ射出された。


「倒す必要あるの?」

 ミシュリーヌが首を傾げた。


「あのゴーレムの背後を見て下さい」

 護衛冒険者のクライヴが指を差す。


 その先。

 巨大ゴーレムの背後には、小さな扉が見えていた。


「なるほど」

 ジュリアが頷く。


「あれでは向こう側へ行けんじゃろ?」

 バルトルトが補足した。


「つまり」

 ジェラルドが背中の大剣を引き抜く。

「ぶっ倒せばいいってことか」


「ジェド」

「なんだ?」


 ジュリアが腕を組んだ。

「ひとまず彼らに任せてみましょう」

「なんでだ?」


「元々、彼らの仕事です」

 視線を向ける先には護衛として雇われた冒険者たち。ジェラルドやミシュリーヌが居れば、ゴリ押しできる可能性があるが、ジュリアは国として雇った手前、きちんと彼らに仕事をさせてあげたいと思った。


「我々が手を出す必要があるかどうか、まず見極めたいのです」

「全員眠ってた時点で頼りないが?」

「それはそうですが」

 即答だった。


 冒険者たちが少し傷ついた顔をした。

「いや、待ってください」

 クライヴが抗議する。

「不意打ちだったんですよ」

「しかも初見殺しだ」

「普通なら対処不能だろ」

「むしろ生き残っただけ褒めて欲しい」

 仲間たちも次々に声を上げる。


「いや、守ってたのは、このメイド型魔道具だろ?」

 ジェラルドがリィン・オメガを指指す。

 冒険者達は黙り込んだ。


「リィンちゃんは強いのです」

 エリザがドヤ顔している。


「ほんとに紛らわしいので、改名を要求します」

 本物のリィンが抗議の声を上げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ