前世の両親と私
「ヤダヤダ!ちさの一番はパパとママだろ!」
「そうよ!ママとパパよりお姉ちゃんをとるなんて酷いわ!」
久し振りに会った前世の両親は相変わらずで、私が今はまだ二人と暮らせないと言うと、大人気なく駄々をこねだした。
「ごめんね…でも私まだお姉ちゃんに恩返し出来てないし…家族にも何にも返せてないから…」
「ちさの親不孝者ー!!前世の親孝行するって言葉は嘘だったのか!?」
「ママもパパもちさに会うために前世でいっぱい徳を積んだのにー!」
「二人共落ち着いてよ!勿論パパとママにも親孝行いっぱいするよ!当たり前じゃん!」
「本当?じゃあ一緒にお家に帰りましょう?」
「それは…ちょっと…」
「なんでだよー!ちさの裏切り者ー!!」
「裏切り者って…アーチェルド様みたいな事言わないでよ…」
本当に大人気なく号泣する二人を宥めつつ、この感じ懐かしいな、と鼻の奥がツンとする。もう二度と会えないと思っていたのに。前世を覚えている両親が、私に会いに来てくれた。それが嬉しくて、思わずまた涙がこぼれ出す。
「やっぱりヤダ!そうだ!お姉ちゃんに直談判しに行くぞ!」
「そうね、そうしましょう!ちさ、お姉ちゃんは何処にいるの?」
「え?…お姉ちゃんならさっきまで一緒に居たけど…」
「よーし!突撃だー!!」
休憩所の扉をバーンと勢いよく押し開けたパパは、ママと一緒にさっきまで居た宴会場へと掛けて行く。
「…相変わらず直情型なんだ…ホントにあれで皇帝とか出来てんのかな…」
「大丈夫ですよ、皇女様。国の事は我々が担っていますので」
「うわっ!!ビックリしたぁ…」
両親の後ろ姿をぼんやり眺めていると、どこからともなく現れたシュノアート帝国の宰相。なんでここに、と疑問を抱くも、この人さっき宴会場で両親の前方を歩いていたっけ。どうしてシュノアート帝国の宰相が両親と一緒に居たんだろう?それに今の言葉……そう言えば、まだ両親の国の名前を聞いていない。…まさか、と嫌な汗が全身から噴き出してくる。
「ちょ、ちょっと待って、パパ、ママ…」
急いで両親の元へ駆け出そうとしたが一歩も二歩も遅く、両親は宴会場とは別の部屋の扉を開け『お姉ちゃんは何処だー!?』『私が産んでないちさのお姉ちゃんでてきなさーい!!』という叫び声と、『うるせぇ!!お前ら自分の立場がわかってんのか!?ぶっ殺すぞマジで!!』という我が国の暴君陛下の怒鳴り声が聞こえてきた。
「うわー!!パパママ待って!!」
ぶち切れている皇帝が両親を殺っちゃう前に、私は全速力で両親の元へと向かう。
「ミーニャちゃんのお姉ちゃんをお探しなら、私がそうですね」
両親の元へたどり着いた時、姉の声が聞こえてきたので急いで声のした方を見ると、姉と兄、元婚約者たちとジェルミー、そして皇帝と宰相が集まっていて、なんだか凄く怖い顔をしてこちらを睨み付けていた。
「ちさ、あのとんでもない美人さんがちさのお姉ちゃんなのか?」
「…うん」
「まぁー!綺麗な人ねー!でも、ちさの方がずーっと可愛いわぁ〜」
「あったりまえだろー!僕たちの娘がどの世界でも一番可愛いに決まってるじゃないか!」
「そうよね〜!」
前世と同じく空気が読めない両親は、この殺伐とした雰囲気をものともせず私の頬に頬擦りしてくる。
「……あのさ、パパとママの国って、もしかしてシュノアート帝国だったりするの…?」
「そうだぞー!」
「よくわかったわね〜」
最悪だ。親の仇がまさかの前世の親だなんて。しかもこの国との関係も最悪の筈。同盟国じゃない国の皇帝と皇后が恐らく許可も無く自国に来たら、そりゃ皆あんな鬼の形相にもなるか。
「ニャーゴ、こっちに来い」
「あ、はい…」
お怒りの皇帝に逆らっても良いことはないので、素直に頷き足を一歩前に動かす。でも、KYな両親が上半身にがっしりと抱きついているせいで、それ以上は動けない。
「おい…」
「す、すみません…」
今まで聞いた事がないくらい低く唸るような皇帝の声に、全身が震え出す。これはまずい。これはまずいぞ。皇帝に前世の話をして見逃してもらう?いや、信じてもらえるわけがない。ならばと私は姉を見た。この中で唯一私の前世を知っていて、それを信じてくれた人。
「おねぇさま…」
助けて、と続けようとした言葉は、姉の予想外の行動によって発する事が出来なかった。
姉は私を見た後、首を振ってそっぽを向いてしまったのだ。これはあれだ。姉が極たまに見せる拗ねている合図である。
「お、お姉様?どうしたんですか?」
「ぷんぷん」
わぁ。久々に聞いた擬態語だ。こうなった姉はなかなかしぶとく拗ねてしまって大変面倒…いや、大変に大変だ。私がここに来るまでに何かあったのだろうか?この場に居た兄以外の皆が姉大好き信者だから、流石にウザったかったのかも。しかも皆今は怒り狂っているし…うーむ…これ、収拾つくのかな…




