↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミックス第二巻4/30発売】その政略結婚、謹んでお受け致します。〜二度目の人生では絶対に〜【書籍全二巻発売中】  作者: 心音瑠璃
番外編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

77/78

コミックス第一巻発売記念SS-二度目の人生、新たな始まり

島國先生によるコミックス第一巻発売を記念したSSです!

時系列はなろう本編第一話の後、そして二つ前に掲載させていただいたコミカライズ記念SSとも繋がっています。

(コミックスをお読みいただいた後の方がより楽しめるかも…?という内容になっております)

―――Victor side



「……これで、大丈夫だろうか」


 誰もが寝静まる時間。

 一人呟いた声は誰に届くでもない。

 それでも口に出さずにいられないのは……、誰にも言えない自信のなさと不安から来るものだろう。


(……明日。ついに彼女がやってくる)


 リゼット・ラザフォード。

 隣国であるマクブライド国、ラザフォード侯爵家の長女。

 火の魔法を操り、軍人としても有名な彼女が明日、この国へ、この城へやってくる。

 そして、一年の滞在の後、俺の妻になるのだ。

 それも、“和平条約”の証として。


(リゼット・ラザフォードが俺の妻に……)


 思い起こされるのは、長い金色の髪。

 強い意志を持つ印象的な橙色の瞳。

 “和平条約の証”として自分が嫁ぐことを、迷わず受け入れた揺らぐことのない強さ。

 だけど。


(……彼女が強く握りしめていた手は、微かに震えていた)


 その震えは怒りからか、恐れからか、将又その両方か。

 ただ分かることは、その肩には重すぎる運命を背負わされてしまったということだ。

 たったの15歳で。


(彼女にはもっと、違う相応しい未来があったはずなのに)


 イングラムがマクブライドに攻め入らなければ。

 陛下が血迷って理不尽な“和平条約”に政略結婚を持ち込まなければ……。


(……なんて、こんなことになってしまったのには俺にも責任がある)


 それならばせめて、俺が守らなければ。

 そう考え、和平条約が成立したこの数日で出来る限りのことをした。

 信頼出来る侍女の手配、彼女が少しでも寛ぎ安寧を保てる部屋の手配、それから彼女が来たら忠告しよう。


 “ウォルターにはあまり関わるな”と。


 あまり、というのも本当であれば全く関わってほしくない相手なのだが、ウォルターのことだ、リゼットに何かしらの接触を図ってくることは間違いないだろう。

 ウォルターは昔は信頼していた兄だったが、今では父である陛下の駒として動く陛下側の人間。

 そして、陛下こそが最も恐れるべき危険な相手だ。


(“イングラム”家は、この血は……、不幸なまでに呪われている)


 この家に幸福などない。血が繋がっているということは、俺にとってはしがらみであり枷であり鎖同然だ。

 だから俺の妻となる彼女を、この家に引き入れるわけにはいかない。

 彼女は、誰よりも自由が似合い、自らの意志で羽ばたくことが出来る人だから。


(決して、勘違いするな)


 自分の手で全てを終わらせ、平和な世に出来た暁には、この手で彼女を家族の元へ返す。

 それが、俺に出来る唯一のことだ。

 そう自分に言い聞かせるようにして、彼女が明日から暮らす部屋を一瞥……してから首を傾げた。


「……俺には女性好みの部屋の内装が分からないから全て侍女に任せてしまったが、果たしてこれで本当に良かったのか? 彼女は戦場に立つ軍人でもあるのに、この部屋を気に入るのだろうか……?」


 などと今更ながら考えてしまってから、まあ良い、と息を吐く。


(俺の代わりに準備してくれた侍女達には申し訳ないが、明日この部屋を目にした彼女の反応次第で決めることにしよう。もし彼女が気に入らなければ、居心地の良いように、思うように自由にしたら良いと告げれば良いことだ)


 そう結論づけ踵を返し、部屋の外に出てからそっと扉を閉じたのだった。






―――Lisette side


「……眠れない」


 日の出と共に準備をしたら、この家を、この国を出てイングラムに向けて出発しなければいけないというのに、いくら目を瞑っても眠れない。

 それどころか、目を瞑る度に思い出すのは、彼のあの赤い双眸だ。


(……ヴィクター)


 前世でも同じ15歳の時に初めて彼と面と向かって出会い、その時は“和平条約”を断って23歳の時に嫁いだ。

 嫁いだといっても名ばかりの妻で、彼は初夜どころかそれ以降も顔を合わせることは数えるくらいしかなかったけど、今世では明日からその彼の婚約者となる。


(皮肉なものね)


 彼のことが大嫌いで、今生の別れを告げて目の前で命を絶ったはずなのに、まさか二度目の人生でも彼の妻となる道を選んでいるなんて。

 我ながらどうかしていると思うけど、彼ともう一度共に生きると選択したことに悔いはない。

 私が選択したことで、家族を、大切な人達を、国を守ることが出来るのなら。


(喜んで役目を果たすわ)


 胸の前でギュッと拳を握る。

 もう一度目を瞑ってみたけれど、やはり目は冴えてしまうばかり。いっそのこと起きて忘れ物がないかをもう一度確認しようと、立ち上がり荷物鞄を開けた。


「とは言っても、鞄一つで婚約者として嫁入りするのよね。

 ……嫁入りではなく人質かしら?

 どちらにせよ、前世のヴィクターはうるさかったわ。

『そんなに荷物は持ってくるな、もし必要なものがあるのなら俺に言え』って……、あれは国王陛下であるサイラスが、『嫁ぐ際にせめて嫁入り道具だけでも』と贈ってくださったものばかりだったのに。

 確かにあまり着る機会はなかったから必要はなかったかもしれないけど、せっかくのご厚意を無碍にした気がして本当に申し訳なかったわ」


 今世でも提案されて「大丈夫です」と突っぱねてしまったら、凄く申し訳なさそうな顔をされたのよね……。


(まあ、元軍人である私が着てもということはあるし、あまりの量に私も恐縮して箪笥の肥やしになっていただろうから、結果的にはこれで良いのかもしれないけど)


「……って、前世のヴィクターのことを思い出せば思い出すほど腹が立つわね」


 今夜はやはり眠れそうにないと、息を吐き窓辺にあった椅子に座る。

 そうして目を向けた窓の外には月明かりはなかったけど、代わりにお父様の魔術で付けられた庭園灯の光が等間隔に配置され、明るく道を照らしていた。


「……きれい」


 温かい、お父様の魔法の光。

 見ているだけで自然と涙がこぼれ落ちそうになるのをグッと堪えながら、その光を時間を忘れて眺めているうちに、いつの間にか机に突っ伏して眠ってしまって……、次に目を覚ました時には、庭園灯の光はすっかり消え、代わりに、無情にも陽の光が顔を出し始めていたのだった。


コミックス第一巻発売記念番外編SS、いかがでしたでしょうか?

小説家になろう様サイトのおかげで、こうして完結した後も物語をより深く掘り下げるお話を執筆し、投稿させていただくことが出来て嬉しく思います。皆様にも楽しんでお読みいただけていたら嬉しいです。


そして、皆様の応援のおかげでついにコミックス第一巻が昨日、2/28より島國先生によるコミカライズの単行本一巻がKCxさまより発売されました〜!

挿絵(By みてみん)


表紙もデザインも可愛く、中身も本当に可愛くて!!

何よりヴィクターのデレを島國先生が沢山描いてくださっていて、ヴィクター視点も楽しめるんです(泣)

不器用な優しさが垣間見えるヴィクター、そして相変わらずつよっつよ(笑)で可愛すぎるリゼット、紙または電子、お好きな方でコミックスもお手に取っていただけたらとっても嬉しいです…!!

詳しくは活動報告、X、下記リンクにてご紹介していますので、ぜひチェックしてみてください。

最後までお読みいただきありがとうございました!

これからも続くリゼヴィクの世界をどうぞよろしくお願いいたします!

2025.3.1.心音瑠璃

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。