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077 魔界長、顕現


 元神界長のゼノウルス爺ちゃんが、一方的な艦砲射撃をお見舞いしてできた魔界の大穴。


 俺とフランはそこから侵入することにした。

 目的は女神たちの神力を封じている物、あるいは者を打ち倒し解放するためである。


「む、生意気に隔壁が降りてるな。見た目は幽霊船の癖に」


 オンボロなのかと思ったが、中身は結構ハイテクなのかもねぇ。

 コンコンと壁を叩いてみると、なかなかの分厚さだ。

 そのくらいは音の反響でわかるさ。


「ブチ破っちゃいましょうよ!」


 袖を捲り上げながらフランは物騒なことを言う。

 ベロリベロリと唇を舐め回しているあたり、殺る気、いや、やる気も満々だ。


 こいつ。

 副神界長の力を得て調子に乗ってるな。

 まぁ、その力がどんなもんなのか、見極めるのには丁度いい機会か。


 暴走する妻を止めるのも、夫としての役割よ。

 うひょ、我が思考ながらこっぱずかしいね。


「はっはっは、よーしフラン。副神界長の一撃を思い切りかましてやりなさい」

「了解ですわ、アキト神界長さまっ」


 かわいらしく俺に敬礼したフランが、拳をギチリと固める。

 え!?

 グー!?

 グーでいくの!?

 神力を取り戻したってのに!?

 使えよ神力!


 しっかし、見事なファイティングポーズだ。

 そこらの野郎どもよりよっぽど強そうだぞ。


 ボワンとフランの拳が輝いた。

 ああ、一応神力は込めるのね。


 そりゃそうだな。

 直に殴ったら拳を痛めちゃうもんな。


 充分に気合を入れたフランがニヤっと笑う。

 行け行けー。


「ゴッデスメガトンキーック!!」


 まさかの蹴りでした!


 しかも蹴った本人は足を押さえながら宇宙を転げまわっている!

 真正のアホだ!


 だがアホでも女神だけのことはある。

 隔壁は粉々に砕け散っていた。

 お見事!


「大丈夫かフラン? 骨折とかしてないだろうな」

「うん……ぐすん……だいじょうぶー……」


 フランはそう言ったものの、頭上に伸びる金髪アホ毛が『いたい』の文字に変形してる!

 どうなってんのそれ!?


 ともあれ、無事魔界の内部に侵入した俺は、『歩けないー』と主張するフランを背負って歩き出した。

 半分嘘臭いとは思いながらもおんぶしてやったのは、女体の柔らかさを堪能するため……ごほん、大事を取って念のためである。

 肝心な時にフランの力が必要になるかもしれないからね。


 しかしまぁ、傍目にはとてもじゃないが神界長と副神界長のコンビには到底見えまい。

 俺が魔族だったとしても絶対信じないぞ。


 ところでその魔族だが。

 まるで見かけないのはどう言うこった。


 俺の予定としては、そこらの魔族を捕まえるか戦闘不能にし、尋問で色々聞き出すつもりだったんだがな。

 いないものは仕方ねぇ。

 先に進むしかあるまい。


 神界聖艦しんかいせいかんと魔界は、どうやら艦尾同士が衝突したようだった。

 つまり、俺たちが侵入したのも艦尾側と言うことになる。


 この魔界も艦船であるとするならば、一番偉いヤツ、いわゆる艦長にあたる者は艦橋ブリッジにいるだろうと推察したわけだ。

 なので、なるべく上と艦首方面を目指す。


 それはいいんだけどさ。

 なにこの内装。


 わざわざ内部の作りまで幽霊船っぽくする必要ある?

 しかも、ちょっと生物の臓物っぽい雰囲気も出してるし。


 普通の人間が見たら気が狂うかもしれん。

 だけど俺はケロリとへっちゃら。

 伊達にホラー映画好きじゃねぇのさ。


 だけどフランが怯えちゃって大変だよ。

 こいつ、オバケ嫌いだからな。

 なのに怖いもの見たさでホラーを見るアホなんです。


 その嫌がるフランを無視して壁とか床とかに触ってみたんだけど、普通の材質でできてるんだよね。

 無駄な装飾が多すぎるわ。

 それともこう言う趣味の人が作ったとか?


 なんてこと考えながら、胃袋みたいな形のハッチを開け先へ進む。

 うーん、悪趣味!


 階段があればそれを登り、行き止まりなら迂回しつつ上へ上へ。

 だいたい小一時間も歩いただろうか。


 ついに第一村人発見!

 じゃなかった。

 一人の魔族と遭遇したのです。


 そいつは、仰向けに倒れていた。

 どうやら神界の魔力妨害装置が効果を発揮しているらしく、全く魔力を感じない。

 女神たちも似たようなことになってるんだから、お互い様ではあるよな。


 おっ。

 こいつは以前に闘った魔神サイスや四天王ズールと違って、最初から女性だとわかる格好をしてるぞ。


 長い黒髪は床にぶちまけられていた。

 ピッチリしたボディスーツは、くっきりと豊満な肉体をこれでもかと誇示。

 その衣服には、魔族共通のお約束なのか、真っ黒な紋がビッシリだ。


 そして、ピクリとも動かない。

 怪我は見当たらないが、気絶しているようだ。


「死んでるわね」

「アホか。死んでるわけないだろ」

「死んでるわよ」

「ほう? 随分と自信があるようだな。じゃあ賭けるか?」

「いいわよ。私が勝ったらアキトが大事に隠してる高級日本酒をもらうからね」

「なんで知ってるんだ!? 全く、油断も隙もねぇな……よし、ならばこうしよう。俺が勝ったらお前とセック……」

「変態! スケベ! エッチ! そう言うのは結婚してからよバカアキト!」

「おい、せめて最後まで言わせろ。石窟せっくつかもしれないじゃねぇか」

「石窟ってなによ。私と石窟したいって、全然意味わかんないし!」


 そりゃあ、掘るんですよ。

 色々な意味でな。


 ともあれ、遊んでいる暇もあんまりない。

 俺はフランを背負ったまましゃがみこんだ。


「ねぇ、ちょっと、なにをする気よ」


 耳元でうるさいフランに俺は答えず、魔族の雄大な双丘を横からツンとつついた。

 たゆんとうごめく二つの丘。


「あん」


 熱い吐息と桃色の声を上げる魔族の女性。

 よく見りゃかなりの美女だ。


 無節操と言うなかれ。

 男とは女神だろうが魔族だろうが美人に弱い、悲しき生き物なのである。


「な?」

「『な?』じゃないわよ! ドスケベ! ド変態! 浮気者! アキトのバカ! 私というものがありながら! ぎぃぃぃ!」

「いてぇ! 耳を噛むな! 千切れるっつーの! だって、お前のおっぱい触っても怒るじゃねぇかよ!」

「そんなの、時と場合によりますー! むみゅー!」


 フランの両頬を片手で掴み、俺の耳から引っぺがす。

 あら、タコみたいな顔になってもかわいらしいこと。


「うぅ……誰か、いるの……?」


 大騒ぎしたせいか、それとも乳をつついたせいか、女魔族は目を覚ましたようだ。

 丁度いい。

 これで情報集めがはかどる。


「くっ……まるで身体が動かないわ……目も見えない……誰かいるなら魔界長さまにお伝えして……全魔族46名は全員無事なれど、神族が行使したなんらかの妨害により魔力を喪失、行動不能であると……」


 え!?

 魔族って46人しかいないの!?

 マジで!?


 あ、あー。

 あれかな。

 魔族はほら、死後に神界で魂を浄化されて新たな人間に転生させられるわけだろ?

 もしそれが原因なら、魔族ってのは衰退の一途をたどっているのかもしれないな。


 一抹いちまつのあわれみは感じるが、それも自業自得。

 人々に仇なす以上、神々とて見過ごすことはできぬ。

 それが摂理であり、純然たるルールでもあるのだ。


「……誰もいないのかしら……私の気のせいだった……?」

「魔界長さまはどこにおられるのですか?」


 おっ、ナイス機転だぞフラン。

 魔族ってのは女しかいないようだから、俺が声をかけちゃ不審に思われるだけだもんな。


「……現在は第一艦橋か魔界長室にいると思うわ……どちらも最上層中央の右舷側よ……先程の件、頼むわね……」


 そう言ったきり、再び魔族は意識を失った。

 フランが小さい溜息を漏らす。


 騙してるみたいで多少後ろ暗い気持ちにでもなったのかな。

 気にすんな。

 伝言自体は魔界長に伝えてやろうぜ。


 ま、俺もこの魔族にとどめを刺す気はないんだから、甘ちゃんもいいところなんだけどね。

 いいよいいよ。

 なんとでも言えばいいさ。

 無抵抗の女を殺す趣味なんて、こちとら無いんだよ。


 フランも同じ気持ちなようで、俺たちは魔族をその場へ残し歩き去った。


 それから数時間。

 迷いに迷って歩き詰めた。

 無闇にクソ広い艦内をブチ壊しながら進まないのは、魔界長を逃がさぬためでもある。


 しかし、魔族って本気で希少種になりつつあるんだね。

 こんだけ歩き回って出会った人数が3人って……

 人間に迷惑さえかけなきゃ保護対象になれたかもしれないのになぁ。


 まぁ、そんなわけで、ようやくたどり着いたのがここ。

 やたらと気味の悪いフォントで『第一艦橋』と書かれたハッチの前である。


 ちなみに、ハッチは脳みそっぽい形になっていた。

 ホント、趣味悪いよな。


 俺の身長ほどもあるでっかい脳みそハッチを、敢えて不躾にドバンと開き踏み入る。

 またもやちなみに、俺の身長ってのは175センチメートルくらいね。


 さて、いよいよだな。


 先程、道すがら覗いてきた魔界長室とやらは、もぬけの殻だった。

 ってことは、ここに魔界長さんがいるんだろう。


 鬼が出るか蛇が出るか、ですな。


 艦橋ブリッジ内部は、かなりの広さだ。

 神界長室のように、魔界のもモニターや機器類で埋め尽くされている。

 ただ、こっちはモニターが眼球型だったり、ケーブルが小腸みたいだったりと、悪趣味を貫いているがね。


「で、魔界長さんはどこだ?」


 キョロキョロと周囲を見回す俺。

 フランは目を細めて奥のほうをジッと見ている。


「あれ、じゃないかしら?」


 フランが示す先。

 おお、髑髏ドクロまみれの立派な椅子がある!


 さすが魔界長。

 いかにもな椅子だ。


 だけど誰も座ってねぇぞ。

 フランの指先を辿ると、椅子よりもちょっとだけ下だった。


 いた!

 って言うか、床に転がってる!

 真っ黒なフード付きローブを纏った、やたらと小柄なシルエット!


 少し近付いてみるが、既に嫌な予感しかしない。


 あー、もう!

 やっぱりだよ!



「うわぁ! ちっちゃいお婆ちゃんだ!!」




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