表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

76/79

076 このお爺ちゃん無茶しすぎです


『超質量体との接触まで、あと10秒。全乗務員は対衝撃姿勢。両舷ショックアブゾーバー最大稼働。ロシュキャンセラー起動。3秒、2秒、1秒』


「いかん! アキト、フランシアよ! 伏せるのだゾイ!」


 ヨレヨレの爺さんらしからぬ速度で床に伏せるゼノウルスさま。

 俺もフランの腰を抱きかかえて床へダイブ。


 ズズズズズズズ


 猛烈な振動。

 轟音。


「きゃぁぁあああ!」

「うおぉぉおお!」


 大地震なんてもんじゃない。

 まるで箱に入れられてから思い切りシェイクされてるみたいだ!

 名バーテンダーが無駄にオシャレなカクテルを作ってる時のような華麗なるシェイク!


『超質量体が左舷さげんに衝突! 艦体の詳細な損害不明! 艦尾貨物エリアD-1にて火災発生! 隔壁閉鎖! 自動消火装置作動! 審問部、執行部、及び清掃部で執務中の女神はただちに中央エリアへ避難してください!』


 機械音声が次々に聞きたくもない報告をしている。


 って、清掃部!?

 そんな部署あったの!?

 いや、綺麗に越したことはないけどさ!


「いててて……老人は労わってもらわんと困るゾイ……ふむ、どうやら神界聖艦しんかいせいかんは大した被害でもなかったようだゾイ」

「「しんかいせいかん?」」

「うむ。この神界はひとつの大きな船なのだゾイ」

「「えぇぇぇぇ!?」」

「差し渡しで、まぁ全長は5000キロメートルくらいになるかのう」

「「でっかっっ!!」」


 デカすぎるだろ!

 いや、広大な宇宙のあちこちを航行するなら、そんくらいあったほうがいいのかもしれないけども。


 それにしたって、でっけぇ。

 太陽に一番近い惑星の水星よりも大きいとか、頭おかしいんじゃねぇのか。

 誰だよこんなもんを作ったのは。


『中央モニターに超質量体の映像が出ます』


 機械音声とともに巨大な画面いっぱいに映し出されたそれ。


 第一印象は、『沈没船?』であった。

 もしくは幽霊船だ。

 それほどにおどろおどろしい雰囲気を醸し出していた。


 ただ。

 やっぱり向こうもでっかい!


「むぅう! 魔界が直接接触してくるとは驚きだゾイ!」

「えぇ!? あれが魔界なんですか!?」

「アキト! 怖い怖い! オバケとかでてきそうなんですけど!」


 出るかっ。

 あれが魔界ってんなら出るのは魔族や魔神だろ。


「魔族め! 来るなら来い! 目にものを見せてくれるわ! 火器管制! 対魔兵器群起動!」

『了解。魔力妨害装置ジャミング起動。全退魔砲門開きます。主砲発射準備。副砲砲塔旋回。神聖魚雷管解放』


 ガコンガコンと、ここにいても外でなにかの兵器が作動しているのを感じる。


「ちょっ! ゼノウルスさま! なにをなさるおつもりですか!?」

「ええい! うるさいぞ小僧! 長きに渡って神々の邪魔をしてきた魔界に報復するのだゾイ! 撃ちーかたーはじめー!!」


 小僧って。

 意外と口が悪いな。


 それよりやばいやばい!

 この爺さん、目がイッちゃってるよ!


 いいのか神界長がこんなことをして!

 問答無用で撃ちまくってんぞ!


 専守防衛の精神はどこ行った!

 そういや、先に攻撃を仕掛けたのは向こうだったっけ。


 って、あああああ!

 魔界がボッコボコにぃぃぃ!


 しかも魔界が近すぎるもんだから、神界も砲撃で損害を受けてる!

 バカ!?

 バカなの!?


 止めないと俺らまで死ぬんじゃねぇかこれ!?

 ん?

 そうだ!

 俺、神界長でした!

 だったら!


「撃ち方止め! 撃ち方止めー!」

『了解。砲撃停止。砲身冷却開始』


 狙い通り、俺の声でも操作可能なようだ。

 よかったー!


「なにをするんだゾイ! この機会を逃す手はないゾイ!」

「いやいやいや! 見てくださいよ! 神界までダメージを受けてるじゃないですか!」

「む……全然気付いてなかったゾイ……」


 ボケちまったのかこの人!?


 周りが見えなくなるタイプほど怖いものはないぞ。

 なにをやらかすか、わかったもんじゃないからな。


「魔界にも大穴が開いたみたいです。俺があそこから内部に侵入しますんで、くれぐれも撃たないでくださいよ?」

「ぴぴ~ぴぴぴぃ~♪」


 このジジイ!

 あさっての方向を見ながら口笛を吹いてやがる!

 撃つ気満々じゃねぇか!


 この爺さんに物騒な兵器を渡しちゃいかん!

 ヘタすりゃ背中から撃たれるぞ!


「火器管制! 今後、俺の指示以外で撃つことを禁ずる!」

「ああっ!? なにをするか!」

『了解。声紋パターン、神力波形パターン照合。神界長『秋津火吐大神アキツヒトノオオカミ』さまと確認。全システム平常モードへ移行』

「あ、ジャミングだけは作動したままにしておいてくれ」

『了解。魔力妨害装置ジャミング起動』


 よしよし。

 これならゼノウルスさまも悪さはできまい。


 それに、魔力も阻害できるなら多少は潜入も楽になりそうだしな。

 ま、今の俺ならどんな魔神でも倒せそうだけどね。


「じゃ、ちょっくら行ってきますんで、ゼノウルスさまも安全な場所へ隠れていてください」

「ヌシは人を年寄り扱いするか!」


 どう見てもヨボヨボのお爺ちゃんだろ……

 めんどくせぇ人だなぁ。


「まぁいいや、フラン、行こうぜ」

「うん。ゼノウルスさま、行ってきます。お体をお労りになさってください」

「おうおう、フランシアはいい子だゾイ」


 俺の時と態度が違う!

 スケベジジイめ!


 だけどさすがフラン!

 尻をなでまわそうとしたジジイの手をペシッと打ち払っている!

 それでこそ我が嫁!


 ヒョイン


 短距離転移で宇宙空間に出た俺とフラン。

 これが宇宙か。

 空気がないから、遠くの星もギラギラして見えるな。


 おー、地球も綺麗だー!

 幼いころは宇宙飛行士になりたかったっけなぁ。


 はっ!?

 空気がない!?


 咄嗟に息を止める。

 ついでに手で鼻と口を覆った。


「なにやってるのアキト?」


 なにじゃねぇよ!

 空気がないから……あれ?


 フランの声が普通に聞こえる。

 空気の振動で音は伝わるものなんだが。 


「あはは。まさか真空だから慌ててるの? 神さまをなめちゃダメよアキト」


 フランは強引に俺の手を引きはがそうとした。

 ちょ、やめろ!


「やめんかアホ! ……あれ?」

「ね?」

「……ああ。神さまなめてたわ。ごめんなフラン」

「ううん」


 すげぇな神。

 万能すぎるだろ。


 落ち着けば周りの状況もよく見えてくるってもんよ。

 ほれ、我らが神界聖艦も…………端が見えねぇ!

 全長5000キロは伊達じゃねぇな。


 しかし船、とゼノウルスさまはおっしゃってたが、これ、船か?


 確かに木の葉と言うか笹の葉っぽい形ではあるが。

 俺には銀色のつるんとした金属の塊にしか見えんぞ。


「アキト、船体になにかいっぱい刺さってない?」


 フランの言う通り、船がでかすぎて爪楊枝程度にしか見えないものが多数突き刺さっていた。

 スイッと近付いてみると、どうやら柱のようである。

 それには真っ黒な紋が無数に刻んであった。


 当然、ピンと来るよね。

 これが例の女神たちから神力を奪った結界を成す柱だろう。


「こんなもん、ヘシ折っちまおうぜ」

「そうね! ウズウズしてきたわ!」


 手分けして柱を次々と軽いチョップで折って行く。

 引っこ抜かなかったのは、破砕孔はさいこう付近に女神がいた場合を考慮しての結果である。


 女神が宇宙に流出しちゃったら可哀想だろ?

 神力がなくて動けないんじゃ、自力帰還も難しいだろうしな。

 優しいよね俺。


「あらかた片付いたな」

「うん。でも私、まだ副神界長の力に慣れてないから、加減が難しいわねー」

「俺もだよ。正直、持て余しそうなほどだ」


 ただの人間だった俺にとっては分相応な力かも知れない。

 だから俺は、この力を大切なものを守るためだけにしか使わぬと心の中で誓うのであった。



「さて、魔界へ乗り込んでやろうか!」

「お仕置きタイムね!」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ