表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

59/79

059 木箱に込めた想いとは


「なんだったんだよ……」

「まぁ、あんなもんじゃろ。女神とて死んでしまえば転生のことわりに逆らえぬのじゃ。言わば女神転生、略してメガテンじゃの」

「こら、ゲームタイトルっぽく言うんじゃない!」

「本来ならこのような現象は有り得ぬ。やはり子を想う母親の愛とは強いものなんじゃのー」


 それには激しく同意するけど。

 肝心の情報がなにも聞き出せなかった。

 またも手掛かりを失ったわけでして。


「アキトさん、彼女は『寝台の下に』と最初に言っていましたよ。寝台とはベッドのことでしょう?」

「そういや言ってたな! でかしたぞミリィ! 今夜はお赤飯だ!」

「いえ、それほどでも。ですが、今夜はカレーがいいです。できれば甘口の」

「子供かっ」


 つっこみながらもミリィの銀髪を撫でてねぎらう。

 無表情の癖に頬が少しだけ赤くなってるあたりがかわいい。


 このかんにも【TP値上昇!】とうるさく表示されているのだが、もう完全に無視することにしよう。


「ほんじゃ、このベッドをどかしてみようぜ。おーい、力持ちー」


 俺の声で、みんなの視線がマリーに集中する。

 一瞬キョトンとしてから目が吊り上がった。


「力持ちとはわらわのことか!? こんなに幼いなりをしておるのに!?」

「いやー……そうは言ってもマリアベルさまは副神界長ですから……私の神力はアキトの中ですし……」

「私とユエルの筋力ですが、女神の中では平均値程度だと思われます」

「ですね~。マリアベルさまにはかないません~」

「こんなベッドくらい誰でも持ち上がるじゃろ!?」


 ここで始まる内輪もめ。

 正直誰でもいいんです。

 どうせみんな力持ちなんですから。


 やっぱりあれかね。

 女の子としては力持ちだと恥ずかしいんですかね。


「端っこをちょっと支えてくれればいいだけなんだが……じゃあこうしよう、手伝ってくれた人にはチューしまーす」


 ビュン


 真っ先に動いたのはフランだ。

 ほぼ生身だってのに青い瞳をギラつかせながら、音速を超えた速さでベッドを支えやがった!

 こんなときだけすごいな!


 ってかチューの件は冗談で言ったつもりなんですけどね!


 ビュビュビュン


「チィッ! しまったぁ! のじゃ!」

「くぅっ! 出遅れましたっ!」

「わたしとしたことが油断を~!」


 ほんの一瞬遅れた三人も全力でベッドを持ち上げている。

 ちょ、俺いらないじゃん!


「はぁはぁ……どう? アキト。私が一番槍……一番乗りよ!?」

「お、おう、よくやったフラン」

「ちゅー忘れないでよ!?」

「は……はい、わかりました……」


 フランの形相が怖くて、つい敬語になる俺。

 必死すぎるだろ。

 俺のチューなんてそんなにうれしいか?


 とにかく、ベッドは持ち上がった。

 床を改めてみると、小さな木箱らしきものがあるじゃないか。

 むしろ、それ以外になにもないんだが。


 サイズはA4くらいかな。

 かなり古びてはいるが、木材は腐っていない。

 よくもまぁこんなもんが残ってたもんだ。

 女神における『昔』って、地球で言う千年単位とかだろ?

 普通なら木材なんて風化してると思う。


 でも、なんだろこれ。

 この箱からはとてもあたたかな気配がする。

 既に忘れかけた母親の温もりのような……


「みんな、箱があったぞ」

「宝箱!? やったねアキト! これで広いお家に引っ越せるわね!」

「んなわけないだろ。仮に中身が宝だとしても、所有権はウェスタニア専務にあるし」

「そうなんだ? つまんないわねー」


 いやごめん。

 地球での法律だから、こっちではわからないんだ。

 でもまぁ、常識から考えてもウェスタニアさんのものだろ?


「それでそれで? 中身はなんなのじゃ? わくわく!」

「開けましょう。ほら、とっとと開けてくださいアキトさん」

「ドキドキしますねぇ~」


 瞳を輝かせるマリー、ミリィ、ユエル。

 興味津々ですな。

 俺も、もしかしたらすごいものが入ってるんじゃないかと、ほんのちょっぴり期待してるけど。


 俺たちは箱と共に、一度表へ出た。

 家の中だと薄暗くてかなわん。


「ほんじゃ、開けるぞ……」


 全員でぐるりと箱の周りを囲んだ。

 俺がそっと箱の蓋に手をかける。


「どきどき」

「わくわく」

「うきうき」

「ぺこぺこ」

「口で言うなよ! そして最後のはなんなの!?」


 まぁいい、開けるぞ。


 パカリンチョ


「アキト……なに、これ?」

「うーん。どう見ても紙束だな。もうひとつのこれは……手紙かな?」

「なーんじゃ、つまらんのー」


 入っていたものは、ノートサイズの紙束を紐で綴じたもの。

 それと、巻いた紙をろうで封印してあることから手紙と判断したものだった。


 マリーの落胆もわからなくはない。

 だが、俺にはかすかな希望がある。


「……これって~、レシピ、と読めませんか~?」

「よく気付いたなユエル」

「「「えぇぇ!?」」」


 そうなのだ。

 紙束のほう、その煤けた表紙にはかすれているものの、レシピと書いてあったのだ。

 今にも崩れ落ちそうな表紙を慎重にめくる。


『大地を穿つたおやかなる白き杭 1本』

『稚児を悲しませるは紅き槍 2本』


「…………?」


 神力のおかげで文字自体はなんなく読めるのだが、さっぱり意味がわからない。

 1本、2本とあるのだから、材料だとは思う。

 なんだか武器の名前みたいだけどな。


「ユエル、これって食材が書いてあると思うんだけどさ。なんだかわかるか?」

「う~ん、神界で調べればたぶん~……」

「オッケー、充分だ。こいつは借りて持ち帰ろう」


 さすがに手紙の内容まで改めるつもりはない。

 これはウェスタニアさんに直接渡すべきものだ。

 俺にだってそのくらいのデリカシーはあるんだよ。

 だから嘘つきって言わないでおくれ。


 俺は紙束と手紙を箱へ戻し、鞄に詰めた。

 やたらスムーズに入って行く箱に違和感が。


 んん!?

 あれほど入っていたはずの菓子類がほとんどなくなってる!

 いつの間に食ったんだ!?

 食べる? のひとことすらなかったぞ!


 お陰で木箱が何個でも入りそうです!

 ありがとよ!


 さてと。

 これで残った憂いはあとひとつだ。


「おし、ほんじゃ帰ろうか! ……ってわけにもいかないよな」

「うん! 救済部が人々を救わないでどうするのよ」


 よく言ったぞフラン。

 それでこそ俺の女神だ。


「じゃの。わらわが救ったロンデニオンを見捨てるわけにもいかぬでな」

「ですね。一度救済した世界を狙うなんて許せません。フルボッコにしてあげましょう」

「わたし、救済のお仕事をするのは初めてですけど、精一杯がんばります~」


 なんとも頼もしい面々ですこと。


「わかった。我々救済部は、このまま異世界ロンデニオンの臨時救済業務に移行する! 小細工は一切必要ない! 一気に乗り込んで元凶をブッ倒してやろう!」

「「「「おぉーー!!」」」」


 雄叫びと共に立ち上がった俺たち。


 さぁ、この世界を救おうではないか!




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ