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060 恨みの果てに


 ヒョイン


 マリーに掴まって転移した我々救済部。


 眼前にそびえ立つは、白亜ならぬ漆黒の巨城。

 所々崩れかけてはいるが、その威容に陰るところはない。

 今にも内部からモンスターが飛び出してきそうな雰囲気すらある。


 なるほど。

 いかにも邪悪な気配がプンプンしてやがるな。


「これがロンデニオンの魔王城か……へぇー」


 周囲をぐるりと見渡せば、峻険な山々に囲まれた盆地になっているようだ。

 確かにこれならば大陸のド真ん中だろうと攻め込まれにくいわな。


 ただ、そこかしこによくわからん生物の骨が転がっている。

 かつては魔王に仕える魔物か怪物の大軍勢が存在していたのだろう。


 それらを救済に来たマリーが壊滅させたってところかな。

 にしても、だいぶ派手にやったもんだ。

 副神界長は伊達じゃねぇ。


「うむ。昔は苦労したが、今や魔物は存在しないはずじゃ」


 ドヤ顔のマリー。

 鼻息もフンスフンスと荒い。


 うんうん。

 存分にドヤっていいぞ。


「で、作戦はどうするのアキト」

「四方から潜入しますか?」

「上からという手もありますねぇ~」


 思案顔のフラン、ミリィ、ユエル。


「さっきも言ったろ。小細工はいらないって。正面から堂々と行くんだ」

「よくぞ言ったアキト。それでこそわらわの旦那様じゃ!」


 まだ旦那様にはなってませんがね。


「だからってなにも考えずに突入するわけじゃないぞ。隊列は組んでおく。まず先頭は俺だ。その後ろにフラン。俺はフランを守りながら進む」

「いやん、アキトったら。生涯かけて私を守ってくれるなんて」


 モジモジクネクネしまくるフラン。

 全く言った覚えはねぇけど、とっても幸せそうだから放っておこう。


「ズルいですよアキトさん! 私も守ってくださいよ!」

「わたしも初めてなんですよ~? アキトさんに守ってほしいです~!」

「わ、わらわもか弱いから守ってほしいのじゃー」


 途端に巻き起こるブーイングの嵐。


「アホかっ! お前らには神力があるだろ! 特にマリー、自分でも嘘臭いと思うなら言うなっ!」

「くっ、つい照れが入ってしまったのじゃ……」

「んで、次はミリィ、ユエル、殿しんがりはマリーだ。ミリィとマリーでユエルをサポートしてやってほしい」

「仕方ありませんね。了解です」

「うむ。最後尾は任されたのじゃ」

「お二人ともよろしくお願いします~」


 よし。

 決まりだな。


「マリー、城の内部はどんな感じなんだ?」

「以前は迷宮になっておったが、わらわが解いたからの。真っ直ぐ進めば謁見の間に到達するはずじゃ」

「おお、そりゃありがたい」


 あれ?

 それなら隊列なんていらないじゃん……


 ま、まぁいい!

 今更撤回なんて恥ずかしくて出来ん!


「ほんじゃ出発!」

「「「「おー!」」」」


 強引に号令をかけた俺に、ノリノリの女神さまたち。

 こいつらが単純でよかった。


 まずは俺が開けっ放しの門から侵入する。

 内部はひどく暗い。


 が、歩くたびに廊下の松明たいまつが灯って行く。

 うおお、ありがちな仕掛けだが気分は盛り上がるな!


 支道などは一切なく、ガチの一本道だった。

 モンスターも出てくるような気配はない。


 だが、奥へ進むにつれて、確かに濃密な邪気を感じる。

 不思議なのは、魔族が放つような殺気に満ちた魔力とは違うところだ。


 おかしいな。

 絶対魔界が絡んでると思ったんだが。

 まぁ、俺はサイスとしか対戦してないからなぁ。

 他に色んな気配を持つ魔族がいたとしてもおかしなことではないんだろうけど。


「……なんかオバケとか出そうね……」


 俺の背中にぺったりと張り付いたフランがボソリと呟く。


「えぇ!? なんでオバケにビビるんだよ? 子羊たちってみんな幽霊みたいなもんじゃねぇか」

「そうなんだけど……元はと言えばアキトの部屋にあったリ〇グのDVDのせいだからね!」

「うっはははは。アレを見ちまったのかー、確かに貞子は怖いな」


 あれを怖がるなんて、女の子女の子してるじゃんか。


「ひぃ! その名前言わないでー!」

「ははは、かわいいなぁフランは」

「そ、そうかな? えへへ」


「…………どう思います? あそこだけお花畑なんですが」

「うらやま……いや、けしからんのー。緊張感と言うものが欠如しておるのじゃ」

「普通にうらやましいですね~。わたしも人目すらはばからずアキトさんとイチャイチャしたいです~」


 聞えよがしな声。

 何気にユエルが辛辣なことを言ってるし。

 悪気のなさそうなところが余計にタチ悪い。


「ん、扉になってるな。マリー、ここか?」

「うむ」


 しばらく歩いた突き当たり。

 そこは両開きの巨大な鉄扉になっていた。


 ためらうことなく押し開く。

 あれ?

 開かないぞ。


 思い切り引っ張ってみる。

 なんで開かないんだ!

 まさか封印されてるとか!?


 ガラガラガラ


「引き戸じゃ」


 ズベっと盛大にコケる俺たち。


「なめてんのかっ!!」

「わははは、アキトもかかったのー」

「アキトもってことはマリーも引っかかったんだな?」

「うぐっ」


 ともかく、扉は開いた。

 中はとんでもない大広間。


 一面に赤い絨毯が敷かれている。

 しかし、大半が破れたり焼けたりしていた。

 豪勢な調度品も粉々になっているものが多い。


 マリーと魔王による激戦の跡だろう。


 だが、その広間の中央。

 そこに巨大な水晶玉のようなものがある。

 黒水晶と思われるそれは、内部に青白い炎を宿していた。


「な、なんじゃこれは……」


 驚嘆するマリーの声。

 つまりこれは、何者かが救済された後に安置したと言う確たる証拠だ。

 マリーが知らないってことはそう言うことだろう。


「……誰ぞおるのか……?」

「ヒィッ!?」


 暗くて見えない広間の奥から声がする。

 位置から察するに玉座の辺りだろうか。


 ちなみに悲鳴はフランね。

 いててて。

 しがみつくのはいいが、爪を立てるなよ。


「その声……魔王シェザールかの?」

「ぬ……? 遥かな太古に聞き覚えのある……まさか、うぬは聖女マリアか……?」

「プスー! 聖女マリアだとよ……ぷっくくく」

「笑うでないアキト! それより、なぜお主が復活しておるのじゃ!? わらわが完膚なきまで滅したはずじゃろ!」


 マリーの叫びに逡巡する気配の魔王シェザール。


「…………なぜ、だと? うぬがそれを言うのか……良かろう、聞かせてやる……うぬに9度滅ぼされたワシが神界で裁定され、円環の理に捕らわれる寸前、異界の魔神が接触してきおったのだ……恨みはもうないのか? とな。ワシは当然有ると答えた。そして魔神は言った、ならば恨みを晴らすが良い、と。円環にはワシの身代わりを置き、その魔神によってワシの魂は再びこのロンデニオンに降臨したのだ。悠久の時をかけて肉体を再構築していた折、魔神は再び現れ……グ、グオォォ!」

「ど、どうしたのじゃシェザール!」


 突如苦しみだした魔王。

 彼の苦悶と同時に、黒水晶が脈動するかのように青い炎を燃え上がらせる。


 なんだこれは。

 魔王と水晶は連動しているのか?


「……魔神は、ヤツは……このワシに強烈な呪いギアスを施したのだ……ワシをこの場に縛り付け、強制的にワールドスキル【超絶怠惰】をかけ続けると言うものをな……このワシは騙されていたのだ……ヤツの狙いはロンデニオンの人間どもから生気と悪感情を奪うこと……うぬらの前にある黒水晶によってな」

「なんじゃと……じゃが、なぜそれをわらわたちに話したのじゃ?」


 今度は長い逡巡があった。

 言うべきか言わぬべきか迷っているように感じる。


「…………長い時の中で、お主のことばかり考えておった……どうやって恨みを晴らすべきか、とな……いつからであろう、それが思慕しぼに変わったのは……」

「は?」

「へっ?」

「んん?」

「えぇ?」

「はぁ~?」



「聖女マリアよ……ワシはうぬに恋をしておる」


「「「「「はいぃぃぃぃぃ!?」」」」」




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