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052 就任パーティーは盛大に


「え、えー、このたびは、わたくしの常務取締役就任記念パーティに御参加いただき、誠にありがとうございます」

「ピューピュー! タキシード姿もかっこいいわよアキトー!」

「ひゅうーひゅうー、ガラにもなく緊張してるんですかアキトさーん」

「アキトさんの晴れ姿~、感激です~!」

「あははは! アキトー、もっと肩の力を抜くのじゃー! 主役はそなたじゃぞー!」


 俺のガッチガチな挨拶に、やんややんやの野次を飛ばすフランたち。

 くそ、こっちはマジで緊張してるってのに。


 だって見ろよ。

 この女神たちの人数!

 何十人いるんだこれ!?


 食堂だけじゃ入り切らず、部長室も全て開放してこの溢れかえりようだからね!?


 パーティーを催してくれたのはありがたいが、こりゃたまったもんじゃない。

 企画立案は我らがフランちゃんとマリーちゃん!

 俺はなにもしなくていいからって言われたんで、二人に任せてみたらご覧の通りってわけだ。

 まさか適当にそこらじゅうの女神を集めたんじゃないだろうな?


 確かに盛大なパーティーだけど、これではどう見ても俺が見世物になってるだけじゃね?


「えー、あー」


 ちくしょう、言葉が出てこない。

 空き箱で作られた檀上に立っているんだが、ビカビカとスポットライトが俺に当たりまくっているせいで目がチカチカする。

 誰だよこんなのを考えたアホは。


「そのー、今後についてなんですが、まだまだ若輩なので俺は俺なりに頑張っていくつもりです。俺についてこい、なんてかっこいいことは言えないんですが、できれば皆さんの力を少しでいいから貸してもらえるとうれしいです。では、グラスをお手に。ささやかではありますが、本日は楽しんで行ってください。僭越ながら、乾杯!」

「「「「「かんぱーい!!」」」」」


 パチパチパチパチパチ


 パンッ! パンッ!


 誰だクラッカーまで用意したバカは!?

 鳴らしてんのはミリィだな!

 あいつめ!


「アキト常務。ご就任、おめでとうございます」

「アストレアさん……! ありがとうございます!」

「今後は神事部一同、アキト常務の手となり足となり邁進まいしんしていく所存ですので、何卒よろしくお願い申し上げます」

「堅っ! 堅苦しいですよアストレアさん。いつも通りでいいですって」

「いえ、そうは参りません。あなたはもう、私の上司なのですから。部下に敬語はおやめください」


 そうなのだ。

 常務就任と同時に、いくつかの部署が俺の傘下となったのだ。

 神事部もそのひとつってわけ。


 しかし相変わらず頭が固いなこの人は。

 そんでもって、今日はまた随分とエロい……いやセクシーな黒いドレスをお召しになっておられますのう!

 主張の激しい豊満な胸が半ばまで露出しているじゃありませんかぁ!


「わ、我々神事部の面々は、ア、アキト常務を敬愛しております。で、で、ですので、アキト常務も、その、私を、いえ、我々を愛していただけると嬉しくて舞い上が……頑張れると思うのです」

「は、はぁ。わかりました」


 なんかすっげぇ個人的な見解が含まれていそうなんだけど、それホントに神事部の総意なの?

 アストレアさん個人の意見じゃなく?


 最近アストレアさんは心情を吐露とろしすぎな気もする。

 まぁ、素直で積極的なほうが、かわいいっちゃかわいいんだけどね。


 さて、お次はどちらさまかしらん。


「アキト常務……私は総務部長【勤勉を司る女神】リーゼロッテ……です。キャッ、恥ずかしいー!」


 え!?

 この美少女は誰!?


 サイドテールに結った薄茶色の髪。

 華奢で小さい身体にうっすらピンク色のドレス。


 こんなかわいい子、知り合いにいたっけ?


 俺の頭上に浮かぶハテナマークが見えたのか、少女はサッと眼鏡をかけた。


 あああああ!

 あのグルグル眼鏡に萌え袖の子か!

 俺に熱烈な手紙をくれたのは、この子だよ!?


 って、総務部長!?

 マジでぇ!?

 超初耳!


「あ、あの、私たち総務部も、全力をもってアキト常務についていきますので、愛してます!」

「はい!?」

「あわわわわ! 間違えました! よろしくお願いします! でした!」

「う、うん。今後もよろしく頼むよ」

「はい!」


 真っ赤な顔でそそくさと去って行く総務部長。


「キャー! アキトさんと握手しちゃったー!」

「よかったねリーゼロッテ!」

「うん! 私、もう死んでもいい~!」


 ……なんだったんだ……?


 つーかさぁ。

 この子からもらった手紙なんだけど、すごかったんだよね。

 『好きです! 大好きです! 一目惚れです! 愛してします!』

 みたいな文章が延々と書いてあんの。

 うれしいってよりも病的で怖ぇーよ!


 最近考えていることがあるんだ。

 女神ってのは基本的に神界から出ないし、男となんざ普段から接触しないわけじゃん?

 いわば無菌状態だ。

 そこへ俺と言う異物が神界に紛れ込んじまった。

 その物珍しさなんかを好意や愛と勘違いしてるんじゃなかろうか、ってな。

 もし、そうだったらそれはそれで寂しいけど、結構しっくりくる仮説なんだよなぁ。


 俺を本当の意味で好いてくれているのは、フランだけなのかも知れない。

 それでも俺にしてみればとんでもない快挙なんだけどね。


 おっと、次の女神さまがきたから妄想は終わりにしよう。 



 その後も次から次へと挨拶を求める女神たちが俺に群がってきた。

 ちょっとした人気店の行列レベルだ。

 なんせここに集まっている全員が俺の部下ってことらしいからな。


 あ、副神界長たるマリーを抜いて、ね。

 彼女はいまだに直属の上司なのだ。


 そんな行列のお陰で、フラン、ミリィ、ユエルが腕を振るった料理をちっとも食べられない。

 うまそうなのにー。

 これじゃ列をさばき切るころには絶対なくなってる。

 腹減ったよー。


 それでも俺は笑顔を絶やさず、応対した。

 これから一緒に働く部下だしな。

 第一印象が肝心ってもんよ。


 挨拶もほぼ終わったあたりで、ひょっこりとフランが顔を出す。

 身を包んでいるのは爽やかな水色のドレス。

 少しだけ大人っぽさを感じさせるフランに、思わず俺は目を奪われてしまった。


「アキトー、お疲れ様。ね、お腹減ってない?」

「ああ、減ってる。まだ一口も食べてないんだ」

「でしょー? 盛り合わせにしてきたから食べて」

「おお、ありがとう。気が利くな……」

「ん? どうしたの?」

「いや、今日のフランはいつも以上にかわいいと思ってな。そのドレス、良く似合ってるよ」

「そ、そう……? エヘヘー! ありがとっ、チュッ」


 こらこら、いくらほっぺとは言え人前でキスはまずいだろう。

 むほほほ。


「さぁ、アキトさん! 私が作ったこの料理をお食べください! ほら、口にねじ込んで差し上げますよ! オラァ!」

「アキトさ~ん、わたしがじっくり仕込んだ煮物も食べてくださ~い! えいえいっ!」

「アキトや。わらわは飲み物を持って来たのじゃ! さぁ、さぁ! 口移しをしてやるからたんと飲むのじゃぞ!」

「ぎゃーーーーーーー!! や、やめろぉ!」


 フランとのやりとりを見ていたものか、ミリィ、ユエル、マリーがすさまじい形相で殺到してきた。

 俺の口へ強引に食べ物を押し込んでくる。


 死ぬわ!!



「アキト常務……人目もありますから部下とのお戯れもほどほどに……! ミリアリア、ユエル、マリアベル副神界長もわかりましたね……?」


 ギラリと目を光らせるアストレアさん。

 身も凍り付くようなオーラを俺たちに浴びせかけた。

 おっかねぇ!


 途端に青い顔でガクガクと震えだすミリィとユエル。

 ちょっ、マリーまで震えてる!?

 どんだけ恐れてんの!?


 その後も歓談は続き、夜も更けたころ、ようやくお開きとなった。

 ふぃー、これで俺もお役御免だ。

 やっとこの似合いもしない窮屈なだけのタキシードを脱げるぜ。


 マリーによる鶴の一声で、集まった女神全員が一斉に片づけを始める。

 まさに人海戦術。

 早いこと早いこと。


 中には集めたゴミをピョインとどこかへ転移させちゃう女神もいた。

 いいのかそれ!?

 まぁ転移先はゴミ集積場とかなんだろうけど。


 みんなが片付けているそのさなか、マリーが厨房の隅っこからそっと俺を呼んだ。

 なにしてんだそんなとこで。

 ゴキブリでも発見したのか?

 衛生面には特に気を使ってるから、そんなもんは存在すら許さないけど。


 近付くと、背伸びをしてそっと俺の耳元に口を寄せるマリー。



「ちょっと二人きりで話したいことがあるのじゃ」




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