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051 これは乾杯するしかない!


「では、アキトとフランよ。これに着替えてもらうからの」


 ペシンと指を鳴らすマリー。

 瞬時に俺たちの衣服がスーツへと変わった。

 俺のは紺色、フランのはダークグレーだ。

 あまりにもシックなよそおいに、俺は少々不安になる。

 だってさぁ、かしこまりすぎじゃね?


「しかし、なんでまた俺たちが役員会議室なんてもんに呼びだれたんだ。さてはフラン、またなにかやったな?」

「なんで私!? なにもやってないわよー! ずっと一緒にいるんだからわかってるでしょ!? アキトの意地悪!」

「冗談だよ、冗談。よーしよしよし」

「犬扱い!? ……でもなんだか許しちゃう気分に……わふん」


 実はちょっとだけフランを疑ってたんだ。

 マジごめん。

 いっぱい撫でてやるからな。

 ほらここか?

 ここがええのんか?


「ま、詳細は行けばわかるのじゃ。二人とも役員専用会議室へは入ったことがなかろう? 案内するから、わらわの手をにぎるのじゃ」

「お、おう」

「……はい」


 フランが左手を握り、俺はマリーのちっちゃくてぷにぷにした右手を握った。

 あふん、やわらかーい。


 と思ったのも束の間、マリーが指を絡めてくる。

 いわゆる恋人つなぎと言うヤツだ。


 こっ、これはこれで照れ臭いな!

 周囲から俺が変質者に思われそうだ。


「なんだか仲良し三人親子みたいに見えますねぇ~」

「くっ、この構図は萌えます。でも、それでいて悔しい気もします……」


 おお、よかった。

 ユエルとミリィには俺たちが親子に見えるらしい。

 絶対に『このロリコン!』とか言われると思ってたよ。


「えっ!? じゃあ、私がママね!」

「なら俺がパパか」

「むぅーー! わらわがママでフランシアが子供なのじゃ!」


 いくらなんでもそれは無理がありすぎる設定だぞマリー。

 どう見ても幼女じゃないか。


 ピンポロパンポロ


『アキト! フランシア! マリアベル副神界長も! なにをなさっておられるのですか! 早く会議室へ行ってください!』


 ひぃ!?

 スピーカーからアストレアさんの怒声が。

 なにも放送で言わなくたっていいだろうに。


「おー、怖い怖い。ちと遊びすぎたの。この件は後できっちりカタをつけるのじゃ」


 えぇー、まだ引っ張る気?


「では行くとするかの」

「いってらっしゃいませ~」

「骨は拾ってあげますよ」


 縁起でもないぞミリィ!


 ヒョイン


 三人で転移した場所。

 そこはやたらと薄暗い部屋であった。


 中央には大きな円卓がある。

 その上にはいくつかのモニターがあり、真っ白な画面を映し出していた。

 それが光源になっているおかげで、歩き回るのに不自由はない。


 部屋の奥、たぶん上座のほうには天井からなにかの紋章が描かれた幕が垂れ下がり、その下には巨大なモニターが壁に掛けられていた。


 うーん、物々しい雰囲気だ。

 こんなとこでする会議ってなんだよ。

 ってかさ、俺たち以外誰もいねぇんですけど。


「副神界長マリアベル。救済部部長の二人をお連れしたのじゃ」


 マリーがそう言った途端、円卓上のモニターが一斉にこちらを向いた。

 こわっ!

 ちょっとしたホラーだぞこれ。


 いつの間にかモニターの画面には『Sound Only』の文字が浮かんでいる。

 もちろん、奥にある巨大なモニターにもだ。


 サウンドオンリー!?

 なにかで見たことあるよこれ!


「役員の方々(かたがた)よ。二人をよく照覧してほしいのじゃ」


 マリーの声に、空気が張り詰めたのが俺にもわかった。

 きっと、どこぞにいる役員たちが、モニターに設置されたカメラ越しに俺たちをねめつけているのだろう。


 正直、あんまりいい気分じゃないがな。

 用があるなら顔くらい見せろってんだ。


 ズン


 なにかとてつもない圧力がかかったように、会議室を揺るがせる。

 なんだこの圧倒的な神力は!?

 ……神力……?


『久しぶりであるな。アキト、いや火神秋人ヒカミアキト、いや秋津火吐命アキツヒトノミコトよ。フランシアも息災のようでなによりだ』

「主神さま!」


 さすがのマリーも平伏する。

 って、主神さま!?


 それよりも言い直しが多すぎやしませんか!?

 普通にアキトって呼べばいいのに!


 重厚な声は巨大なモニターから聞こえるようだ。


 く、モニター越しだってのに、とんでもねぇ神力を感じるぞ。

 フランと初めて出会った時以来だけど、これほどすさまじいとは。

 あの時はわからなかったが、神力を得た今ならわかる。


『二人を呼び出したのは他でもない。汝らの活躍、我が耳にも届いておるぞ。見事な働きであるな』

「ハッ! ありがたきお言葉、痛み入ります」

「ハハー!」


 ズルいぞフラン。

 お前もなにか言えよ。

 ハハーで誤魔化すな!


『で、どうだ役員たちよ。そろそろ決裁に移ってもよかろう』


 はい?

 決裁って、なんの?


 ババババッ


 いきなりモニターの全てに『〇』が映し出された。

 なにこれ!?

 なにが丸なの!?


『マリアベルよ。汝はどうか』

「もちろん、丸でございますのじゃ」

『よろしい』


 よろしくねぇよ!

 こっちはなにがなんだかさっぱりなんですけど!?


『全会一致で可とする結果となった』


 説明しろよ!

 と言いたいけど言えないこのもどかしさ!

 マリーはマリーで、俺が必死にアイコンタクトしてるってのに、ちっともこっちを見やしねぇ!



『汝、秋津火吐命アキツヒトノミコトを異世界ハイペリオス救済、並びに魔神十傑まじんじゅっけつ【暗躍する魔】サイス討伐の功績により、常務取締役へ就任させるものとする!』



 パチパチパチパチパチ


 モニターから鳴り響く拍手の洪水。


 魔神十傑!?

 嘘ぉ!?

 サイスってそんなにすごいヤツだったの!?


 いやいやそれより、俺が常務ぅ!!??

 常務って役員だよ!?

 俺なんかでいいの!?


「アキト! 常務だって! すごいねー!! あぁー、私が役員のお嫁さんになれるなんて……!」

「気が早ぇよ! いやもう、俺もなにがなにやら……なぁフラン、こういう時ってどうすりゃいいんだ!?」

「えーと! えーと!」


 ワタワタ、ダバダバと混乱しまくる俺とフラン。

 すごいことには間違いないんだろうが、うまく頭が回らない。


「おめでとうなのじゃ、アキト」

「あ、あぁ、ありがとうマリー。これってドッキリじゃないよね?」

「あははは! これはそなたの実力を全ての役員が認めた結果と言うことなのじゃ! 胸を張るがよいぞ!」

「ま、まぁ、そう言うことなら遠慮なく……謹んで常務の任を承ります!」


 堂々と言い放つ俺。

 これでもう後には引けなくなった。


『うむ、期待しておるぞ。これにて臨時役員会議を閉会する。以上だ』


 ブン、ブン、ブブン


 主神さまの声と共にモニターが全て消え、元の薄暗い空間に戻った会議室。

 静かになった空気とは裏腹に、俺の中は快哉かいさいで溢れかえっている。

 どうやらフランとマリーも同じ気持ちでいてくれたらしい。


「細かい沙汰さたはのちほどわらわから伝えるとして、まずは……」

「うん! まずは……ね!」

「だな! まずはみんなでお祝いしようか!」




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