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047 レジェンダリーウェポン


 対峙するは巨大な機械兵器。


 その姿は、まるで双頭のドラゴンだ。


 ヤツの放ったブレスの威力はすさまじく、既に4人の戦士が消し炭になった。

 悲鳴と絶叫。


 肉体はないはずなのに、鼻をつく焼ける臭い。

 そして熱波。


 当然のことだが、女性や子供は護衛をつけて休憩所へ置いてきた。


 そう、ここは98層のボスがいる地点なのだ。


ひるむな! 死の恐怖を乗り越えろ!」


 最前列で攻略部隊の面々に喝を入れているのはリーダーのバランさん。


 150人ほどで構成された精鋭部隊はみっつにわけられている。

 ひとつは50人の防御に特化した部隊。

 いわゆるタンク役だ。


 ふたつ目は攻撃に特化した戦闘部隊。

 これも50人ほどいる。


 みっつ目は回復部隊。

 回復系スキルを優先して取っている人々。


 ここに魔法部隊でもあれば完璧なんだろうが、この世界にそんなものはない。

 物理系で勝負するしかないのだ。


 鈍色に輝くダブルヘッドドラゴンは、縦横無尽に動き回っている。

 タンク役の連中は防戦一方だった。


「ダメです! 回復が間に合いません!」

「大ダメージをもらったヤツらは後列と入れ替えろ! 波状で攻めるのだ!」


 実は副リーダーだったらしいレイザーさんも大声を張り上げている。


「あー、あれじゃ負けるかもねー」


 のんきな声はもちろんフランだ。


「ま、俺も同じ見解だ。だけど勝手に倒しちまうのもなぁ。レイザーさんあたりがキレそうだし」

「私たちに助けを求めるまで待ってるのもいいけど、全滅の恐れがあるわよね」

「全くだ。どうしようかねぇ」


 ぎゃおーんぎゃおーんと吠えるドラゴン。

 それだけで恐れおののく攻略部隊。


 広大な砂漠のど真ん中で、なにやってんだろね。

 いわゆるボス部屋なんちゅうものはないんだよな。

 ボスはフィールドのど真ん中にいきなりいるんです。


 システムの作りがいちいち雑なんだよなぁ。

 まぁプレイヤーを楽しませるのが目的じゃないようだから仕方ないんだけど。


「あぁもう! じれったいわね!」

「お前が熱くなってどうすんだ。防御力があるからって、いきなり突っ込んでいくなよ?」

「わかってますってば。あ、やばいわね。またブレスよ」


 ゴォォォオオオオオ


 あちちち。

 こっちまで熱波がきてるぞ。


「ギャアアアアア」

「うわぁぁぁぁぁぁ」

「怪我人は下げろぉぉ!」


 うん、見てらんない。

 可哀想すぎる。


「行く気ねアキト」

「お前すっげぇな! なんでわかったの!?」

「そりゃあ、愛するアキトのことだもの。なんでもわかるわよ」

「さすが俺の嫁だ。防御系スキルはかけまくっておくからな」

「うん、ありがと……って今なんて言ったの!?」

「防御系スキルはかけまくっておくからな」

「その前!」

「さぁ?」

「もう!」


 一応リーダーに断っておかんとな。

 あとで揉めるのも嫌だし。


「バランさん。いったんみんなを下げてください。少しだけ俺に任せてもらいます」

「貴様ぁ! 勝手なことを!」


 当然怒りの声を上げるレイザーさん。

 この人、絶対元軍人とかだろ。

 だが、バランさんが割って入ってくれた。


「黙れレイザー! もはや彼に任せるしかない。これ以上の犠牲を出すわけには行かん。頼むよアキトくん」


 俺は親指を上げ、笑って見せた。

 バランさんも笑みを返してくる。

 これだけで通じるのは男として、なんだか嬉しくなるね。


「アキトー! 無理しちゃダメよー! 頑張ってねー!」


 フランの声援を背中に受け、俺は一気にドラゴンへ詰め寄った。

 ブレスの間隔は結構長い。

 攻撃するなら今だ。


 俺はヤツが振り回す尻尾を掻い潜り、懐へ飛び込んだ。

 左右のワンツーを放つ。


 ガン、ギィン


 うむ、硬い。

 ヤツの顔は多少へこんだ程度だ。


「スキル発動! フラッシュパンチ!」


 キィンと輝く俺の拳。

 目にも止まらぬ10連撃!


 ドラゴンのボディはベコベコになって行く。

 だが破壊には至っていない。


 どよめく攻略組。


 上空から咬みついてくるドラゴンヘッド。

 俺の頭が挟み込まれる寸前、ヤツの上顎と下顎をつかんだ。


「スキル発動! フィジカルエンチャント! マックスアーム!」


 ボン、と俺の両腕が筋肉で膨れ上がる。


「ぬああああぁぁ!」


 メキメキメキ


 強引にドラゴンの口を開いて行く。

 遂にはバキッと口蓋を引き裂いてやった。


 うぉぉぉおおおおお!


 どよめきは歓声となる。


 生意気にも痛みを感じるセンサーが備わっているのか、今やワンヘッドとなったドラゴンは滅多やたらと暴れ出した。

 俺は懐に入ったまま躱す。

 躱しながら撃つ、撃つ!


 ドラゴンは大きく首を反らした。

 来る!

 ブレスだ!


 狙え!

 無防備になった首を!


「スキル発動! バーストスキル! プラズマフィスト!」


 両拳がバチバチと紫電を帯びた。


「スキル発動! フィニッシュスキル! バニシングショット!」


 突き出した拳からプラズマ化したイオンが一直線に伸びる。

 そしてドラゴンの首どころか胴体ごと貫いて行ったのだ。


 ズゴォォオオン


 巨大なメカドラゴンは体内の燃料にでも引火したのか、大爆発が起こった。

 そのまま粒子となって霧散して行く。


 データの海へ帰るがいい。


 Congratulation


 空中に文字が浮かぶ。


「うおおおおお! やりやがった!」

「なんと言う強さなんだ!」

「すっげぇぇぇぇ!」


 いやいや、まぁまぁ。

 はははのは。

 賞賛を浴びるのは気持ちがいいねぇ。


 手を振る俺の視界に流れるログ。



 『レジェンダリーウェポン【エターナルソード】を1個獲得しました!』



 同時に俺の手には銀色の短い棒が握られていた。


 なにこれ?

 みじかっ!

 どこがソードだよ。


 ひねくりまわすと、上部にはいかにも押せと言わんばかりの赤いボタンがある。

 こんなもん、なんの躊躇ちゅうちょもなく押すに決まってるだろ。


 ブォォン


 途端に青く光り輝く刀身が伸びた。


 うおおお!

 ライトセーバー!?

 レーザーブレード!?


 なんにしてもかっこいいな!!

 こりゃ気にいった!

 やっぱり剣がないとなぁ!


「アキトー! おつかれさまー! 早く戻ってきなさいよー!」

「おう!」


 俺は剣を仕舞い、フランたちが待つ輪の中へ。

 そして歓喜の坩堝るつぼと化したみんなから、もみくちゃにされたのであった。



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