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046 私の戦闘力は53万あります(大嘘)


 それからの俺とフランは、破竹の勢いで進撃した。


 ……すみません。

 嘘です。


 先に上を目指した連中がかなり進んでいるらしく、俺たちはその後を追っているだけでした。


 どうやら階層に居座るボスを倒すごとに、上への通路が現れる仕組みらしい。

 あまりにもかったるそうだったんで、俺は試しに神力を使い一気に最上階へ転移しようとこころみたんだ。

 だけど、なんでか知らんが一度も成功しなかった。


 なぁ、神々の力を対策してあるなんておかしな話だと思わないか?

 これじゃまるで俺たちが救済に来るのをあらかじめ知っていたみたいじゃないか。

 このシステムを作った首謀者のガイアーってのは、何者なんだろう。


 なんてことをあれこれ考えながらここまで登って来たわけだ。

 ボスを倒してもザコエネミーは残ってたのが厄介だったがね。

 お陰でレベルだけはモリモリ上がったけど。


「もう98層だってー。先に行った人たちだけでクリアできるんじゃないのこれ?」


 ガッチガチに鎧を着こんだフランが愚痴る。

 鎧とは言ったが、どちらかってーとSF映画に出てくるようなパワードスーツなんだけどな。


 ともかく、高価なだけあってそこらのエネミーじゃ歯が立たないほどの防御力を持っていた。

 お陰で俺は安心して攻撃に専念できるってもんよ。


「全くだ。なにしにきたんだ俺たち」

「私とラブラブ旅をするためよね?」

「そうそう、フランと少し早いハネムーンをな。って、んなわけあるか!」

「冗談よ。もー照れちゃってー、アキトったらかわいいー」


 バカップルモードのフランとは会話にならない。

 こういう時は放っておくに限る。


 うーむ、98層は砂漠地帯みたいだなぁ。

 どんだけ歩いても砂しか見えないし。


 この塔は各階層によってフィールドが異なっている。

 草原だったり森林だったりするわけだ。

 50層付近でいきなり月面みたいなフィールドが現れた時はどうしようかと思ったけどな。


 ちなみに、街と言えるものは1層にしか存在していない。

 俺たちが爺さんに料理を振舞ったあの場所だけだ。


 あとは10層ごとに休憩所とショップがあるのみ。

 不謹慎かもしれないが、このシステムをゲームとして見た場合、かなり不親切と言えるだろう。


 ってかね。

 俺はここに来た時、ソード〇ートオンラインみたいな世界じゃんと期待に胸を膨らませていたのに。

 なんなのこれ、色々がっかりだよ!

 かわいい女の子をかっこよく助けさせろよ!


「どうしたのアキト? なにか怒ってる? それとも不埒ふらちなことを考えてるの?」

「ドキィ! ……ああいや、なんでもないんだ」

「ふーん? 悩みがあるならちゃんと言ってね?」

「くー、お前はかわいいやつだなぁ!」


 たまらずフランを抱きしめた。

 だが相手は鋼鉄の塊に覆われている。

 角が頬に刺さってダメージを受けただけだった。


 俺の生命力を表す緑色のゲージがちょびっとだけ減少する。

 こんなんで減るなよ……


「お、休憩所があったぞ」

「わーい、喉乾いたぁ」


 俺の視界、その右上には98層のミニマップが表示されている。

 そこに、青い点で休憩所兼ショップが、赤い点でボスの位置が示されてるってわけだ。

 だから基本的には迷子になったりしない。


 休憩所はかなり大きく、ドーム型球場ほどもあるだろうか。

 その気になれば数万人は収容できると思う。


 中へ入ると、だだっ広い空間は人々で埋め尽くされていた。

 うおおお、こんなに生き残りがいたのか!


「すごい人数ねぇ」

「女性や子供もたくさんいるな。よく無事だったもんだ」


 1層にいた爺ちゃんの話では、討伐隊のリーダーがいるってことだったんだが、どの人だろう。

 俺は手近にいた女の子に聞いてみた。


「お嬢さん、ちょっといいかな?」

「はい?」

「ちょっと、早速ナンパする気!? アキトの浮気者!」


 わけのわからないことを口走るフランは無視しておこう。


「リーダーの人に会いたいんだけど、どこにいるか知りませんか?」

「えーと、あ、あのちょっと高いところにいる黒ヒゲの人がそうです」

「んー、ああ、あのガチっとした人か。ありがとう」

「いえ」


 ガションガションと歩くフランを引き連れ、そちらへ向かった。

 重くないのかそのパワードスーツ。


 一段高い場所で、他の男たちと熱い議論を交わしているリーダー。


「だからそれは無理だと言ってるだろ」

「だが、あのボスを攻略するには……」

「もう、この層だけで15人が犠牲になってるんだぞ!」

「慎重に行こうと言ったのはお前たちじゃないのか!」


 あらら、これじゃ議論じゃなく口論だ。

 リーダーってのは責められるためにいるようなもんだからな。

 ここに割り込むのも嫌だが、待っていたら何時間も討論してそうだし。


「あのー、お話し中に申し訳ありません」

「なんだきみたちは?」

「あなたがリーダーですか?」

「そうだ。バランと言う」

「あ、俺はアキトと言います。こっちはフラン」

「で?」

「この98層が最前線でいいんですかね?」

「そうだが……見かけん顔だな」

「俺たち最近捕まったんです」

「最近? それは変な話だな。あの日、全てのハイペリオス人は一斉に捕らわれたはずだが」


 やべっ。

 そんなツッコミされるとは思ってなかったぞ。

 まさか俺たちは女神ですとも言えないしなぁ。

 なんとか誤魔化すしかないね。


「それよりも、どうしてここにいるんです? 上は目指さないんですか?」

「ふざけたことを言うな! できるならとっくにそうしている!」

「おい、やめないか」


 リーダーであるバランではなく、隣にいたごつい男が口出ししてきたのだ。

 怒ったところを見ると、上には行けないなんらかの事情があるのだろう。


「98層のボスが頑強でその攻略を練っていたんだ。だが我々の戦力ではたぶん……」


 ガチムチを押さえながらバランは教えてくれた。


「なるほど、そりゃ厳しいですね。もしよかったらなんですが、俺たちも攻略に加わっていいですか?」

「あぁ!? 舐めてるのか貴様!」


 俺の発言に激昂げっこうしたのはガチムチの人。

 怒りっぽいのかなぁ。


「貴様のようなガキが加わってもアレは倒せぬわ!」

「まぁいいじゃないかレイザー。若者が奮起してくれるのは我々の未来にとっても……」

「いいや、納得できぬ! 小僧! 俺と勝負してみろ!」


 うわ、出たよ。

 体育会系脳筋直結思考。

 まるで縦社会の体現者だ。


「アキト、やっちゃいなさいよ! バカにされて黙ってる気!?」


 おい、煽るなよフラン。

 気持ちはわからんでもないが。

 人間同士で争ってる場合じゃないんだぞ。


 バランを振り切り、俺に詰め寄るガチムチのレイザーさん。

 はて、どうしたもんかな。

 一応警告だけはしとくか。


「レイザーさん、でしたね。先に断っておきますが、俺のヒットポイントは50000ありますんで」

「!? ご……50000!? バ、バカな、そんなこと有り得ぬ!」


 ザワッと周囲がどよめく。

 リーダーのバランですら、信じられぬと言った表情でポカンと口を開けていた。


 無理もない。

 一般人の最大値は、9999でカウンターストップするらしいからな。


 だけどしくじった。

 フ〇ーザさまみたいな言いかたになっちまったじゃねぇか。

 こりゃ恥ずかしい。


「嘘だ嘘だ! くらえぇぇ!!」


 ゴッ


 俺は甘んじて左頬にレイザーの拳を受けた。

 言ってもわからないなら見せるしかない。


 俺のヒットポイントゲージが、ほんのちょびっと減り、そしてすぐさま回復する。

 痛みもほぼ感じなかった。


「な、なんだ貴様は……俺のパンチが効かないのか……?」

「自動回復スキルがレベル50あります。これは2秒間に一度ヒットポイントを回復させるスキルなんですよ。10000ずつほどですがね」

「そ、そんなスキル……我々は知らないぞ……!」


 これでも俺は素の状態だったりする。

 神力をこめればとんでもないステータス値を叩き出しそうだけどな。

 化物と思われのは嫌なんで、そこまではしないでおこう。


「……勝てる! 君たちがいれば勝てる! 我々と一緒にボスまできてくれ! レイザーも納得しただろう?」

「あ、ああ……」


 呆然とするレイザーを残し、休憩所全体が歓喜に満ち溢れるのであった。



 ふぅ、どうにか認めてもらえたようで、よかったよかった。



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