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044 説明不足なチュートリアル


 俺たちの目の前で居丈高いたけだかにそびえる塔。

 高さもさることながら、太さもすさまじい。

 まるで来るものをこばむかのようなたたずまいである。


 こりゃ塔って言うよりタワーのほうがしっくりくるかな。

 全体が金属製だし。


 きっと、人々はこの中に捕らわれているのだろう。

 ここまでの道中で、人はおろか生物の一匹も目撃することはなかった上での推論である。

 

「あっ、アキト! 入口はここみたいよ」

「え? すごいなフラン。よく見つけたもんだ」


 フランのそばへ寄るが、金属の壁しかない。

 こいつ、とうとう頭がイカレてしまったのか?


「だってほらここ見てよ。ウェルカム、入口はこちらって書いてあるもの」

「うわマジだ! この塔を作ったヤツはバカなの!?」


 しかもよく見りゃ、地面にはご丁寧に矢印までついてる!

 入らせる気満々じゃねぇか!


「ねぇ、どうする?」

「どうって、行くしかないだろ。この世界を救済しないと俺たちも帰れないんだぞ」

「……それはそうなんだけど、なんかやだなぁー……」


 ぶっちゃけ俺だってやだよ。

 だけど、ここの人たちを見捨てるわけにもいくまい。

 これでも一応救済部の部長なんだしさ。


「わかったよ、俺が先に行く」


 俺が壁の前に立つと、吸い込まれるような感覚に全身が襲われる。

 次の瞬間には内部と思われる場所で立ち尽くすはずだったんだが。

 出たところは全くの想定外としか言いようがなかった。


「えっ!? あれっ!? なんだここ!?」


 見渡す限りの草原。

 燦々(さんさん)と輝く太陽。

 抜けるような青空には白い雲がのんびりと流れて行く。


 遠くには街のようなものも見えるじゃないか。


「わっ! なにここ!? 塔の中に外があるの!?」


 俺に次いで入ってきたフランも奇声を上げる。

 まぁ、似たような反応になっちまうよね。


 後ろには俺たちが入ってきた壁があるところをみると、やはりここは塔の内部なんだろう。

 念のため試してみたが、やはり壁の外には戻れないようだ。

 一方通行なだけで、出口は別の場所にあるのかもしれないがね。


 しっかしVRヴァーチャルリアリティってのはすごいもんだな。

 太陽の暖かさも、草いきれの匂いも本物としか思えないぞ。


 少しばかり感動していたその時、ピコンピコンと言う音と共に、視界の端で赤い光点がまたたいた。

 その光点にはウィンドウを開いてくださいのメッセージ付き。


「ウィンドウを開けってよ」

「うん、そうみたいね」


 手をかざして開いてみると、チュートリアルと書かれた画面が出た。

 なにこれ?


 【チュートリアル1】

 『まずは、街を目指そう!』

 『そして装備を整えたら、迫り来るエネミーやボスを倒して上層へ!』

 『※ちなみにPKもあるよ!』


 雑っっっっ!

 説明がびっくりするほど雑!!


 ってか、今時のゲームでこんな説明だったらユーザーに怒られるぞ!

 ……ゲーム?

 この世界はゲームみたいなシステムってことか?


 しかもPK有り!?


 PKってのは、プレイヤーキラーのことだ。

 つまり、人間同士で殺し合うことができるってわけ。

 ただのゲームなら負けて死んでも悔しいだけで特に問題はないのだろうが……


 アストレアさんも言ってたよな。

 魂に大きなダメージを受ければ、肉体も死んでしまうって。


 ましてやこの世界の住人は元々魂しかないんだから、その死は魂魄の消滅を意味する。

 魂が消えてしまっては転生させてあげることすらできない。

 これでは捕らわれた人々の恐怖もひとしおだろう。


 てか、首謀者のガイアーって野郎は、なんでこんなデスゲームみたいなシステムを作ったんだ?

 他人を殺傷できることになんらかの意味でもあるのかな。

 仮に意味があったとしても、許せることじゃねぇけど。


「ねぇねぇ! アキト! なにかきたよ!?」

「はい?」


 俺の後ろに驚嘆すべき速度で隠れるフラン。

 肩越しに指さすその先には───


 ……ロボット?


 明らかに金属製。

 そして四足歩行のロボがこちらへ近づいて来ていた。


 サイズは大型犬くらいか。


「街まで案内でもしてくれるのかな」

「絶対違うと思うわ!」


 フランの言う通りだった。


 【チュートリアル2】

 『エネミーを倒してドロップ品をもらっちゃおう!』

 『時々レアアイテムが出るかもよ!?』


 もらっちゃおう、じゃねぇよ。

 なめてんのか。


 ってか、よく考えたら俺たち素手じゃん!

 手で金属のロボを殴れって!?


「きたぁー! アキト! きたってばー!」

「ええい、やってみるさ!」


 某赤い彗星の人っぽく言い残して俺は駆け出した。

 だが、先制攻撃は犬型ロボ!


 顔と思われる部分から真っ赤な光線が走ったのだ。


 なにそれズルい!!


 すんでのところでなんとかかわす。


 見たか!

 俺のシューティングで鍛えた動体視力を!


 そのまま懐へ飛び込みながらロボの顔面へ右フック。


 ゴィン


「うほ! かてぇー! さすが金属!」


 だが、パンチの威力は申し分なかった。

 ロボの顔が千切れ、勢いよくすっ飛んで行く。


 どうやら俺の中に宿る女神の神力は失われていないようだ。

 頭部がなくなったからか、ロボはその場で横倒しになった。

 そして粒子となり消え去っていく。


 あー、ここはやっぱりVR世界で、敵はデータで構成されてるんだなぁ。

 いまひとつ実感がなかったけどね。


 俺の視界の隅に、メッセージログが流れまくった。


 『ポチを倒した!』

 『チュートリアル2をクリア!』

 『資金500zを獲得!』

 『レアアイテム【メタリアン】を1個獲得!』


「うははは、ポチって言うのかこのロボ」

「終わったのー?」

「ああ、チュートリアルだからかもしれんが、たいしたことなかったぞ」

「さすがアキトね。ゲームオタクなだけあるわ」

「誰がオタクだっ!」


 いや、大好きだけどもさ。

 俺の好きなジャンルはRPG、シューティング、アクションにアドベンチャー、そしてギャルゲーだ。

 シミュレーションだけはなんか苦手でな。

 普段はあんまりやらないんだ。

 って、そんな話はどうでもいい!


「取り敢えず、街へ向かうほうがよくない?」

「だな。フランに防具を買ってやらんと」

「なになに? 私にプレゼント? やーん! アキトったらー!」

「だってお前、すぐ死にそうなんだもん」

「ひどっ! そこは、俺が守ってやるよ、くらい言いなさいよねー!」

「オレガマモッテヤルヨ」

「棒読みじゃない! 愛がないわ!」

「アホか。俺ほどお前を愛してるヤツなんて全宇宙を探しても他にいないぞ」

「ほんと?」

「ああ」

「えへへー! うれしい!」


 フランはいつからこんなにチョロくなっちゃったの。

 まぁ、かわいいからいいか。


 俺はチョロインとイチャコラしながら、街を目指すのであった。



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