042 行先は肉体の無い世界!?
期待してたのなら謝る。
俺がビシィッと指さしたのは、普通にフランだったからね。
だって他に連れていけそうなヤツがいないんだもん。
マリーとアストレアさんは元々論外としてな。
「やったぁ! さっすが私のアキト! 愛してるぅー! 私、愛されてるぅー!」
アホ毛をピコピコ振って大喜びのフラン。
いや、そんなに嬉しいか……?
俺は出張なんて億劫なだけなんだが。
「どうして私じゃないんですか!? アキトさんの裏切り者!」
「わたしを選んでほしかったです~! 一度も同行したことないんですよ~!」
抗議の声を上げながら俺に詰め寄るミリィとユエル。
顔、顔!
怖いよ!
般若、完全に般若だよ!
「待て待て落ち着け! あのな、ミリィには子羊たちの裁定をしてもらわにゃならんだろ。課長なんだしさ」
「ぐっ! 痛いところをピンポイントで突いてきましたね……」
「ユエル、お前以外に食堂を任せられると思うか? 飢えた女神たちはどうなる。あの様子じゃ食堂がしばらく閉鎖、なんてことになったら暴動を起こしかねないぞ」
「うぐぅ! それはそうなんですがぁ~……」
見事な俺の論破に肩を落とす二柱の女神。
あ、柱ってのは神様を数える時に使うんだよ。
普段はあんまり神様っぽくない連中だから言ってあげないけどね!
まぁ、俺の個人的な意見としては、帰る場所を守ることのほうが重要だと思うわけよ。
帰還した時に、いつも通りみんなの笑顔を見たいってのは俺のエゴかもしれんがな。
それに通常業務を滞らせるわけにもいくまい?
なので人選的にこれしかあり得ないんだ。
行きたがってる二人には申し訳ないとは思ってるけどね。
「はぁ~、わらわが行きたかったのじゃ~……アキトと過ごすイチャラブの旅がぁ……」
「ふぅ~、やはり私ではアキトの重荷になってしまうのでしょうか……きっと愛が重い女とか思われてるんだわ……ブツブツ」
なんでマリーとアストレアさんまでがっかりしてるの!?
あなたがたも行きたがるのはおかしくない!?
って、マリー!
パンツが見えちゃうからドレスの裾をつまんでイジイジするのはもっとやれ!
じゃなくて、やめなさい!
いかん、つい本音が出た。
ちょ、アストレアさん!
おっぱいをそんなにユサユサさせても俺は負けませ……揉んでもいいですかね?
よくない!
あぶねぇ……無意識に俺の手がワキワキしてたわ。
「そ、それで、出張先はどんなところなんですか?」
俺はなんとか煽情的なマリーとアストレアさんから目をひっぺがして尋ねた。
今後はフランの顔だけ見ていることにしよう。
あいつの顔を見ている時が、一番落ち着くしな。
なんてったって、気を使わなくて済む。
「……一応、タブレットのほうにもデータは送信しておきましたが、紙の資料も持ってきました。二人ともきちんと確認しておきなさい」
キランと眼鏡を輝かせ、毅然とした態度を取り戻したアストレアさん。
黒スーツに包まれた豊満な腰をくねらせながら俺とフランに紙束を差し出してきた。
いちいちエロいな。
「わっ、結構な厚みがあるわね……」
「100ページくらいありそうだなぁ」
割とズッシリした資料をぺらりとめくる。
ペラッ
極西銀河団、第8銀河、ガンマ星……どこだよこれ。
ちっともピンとこねぇよ。
ペラッ
世界名【ハイペリオス】、この地は素粒子を核とする精神生命体【アストラ】が殆どを占めており……
ペラッ
……情報技術に長けた彼らは自身の持つ情報を外見に置換することが出来……
うん、さーっぱりわからん。
よほど俺の顔が困惑に満ちていたのか、アストレアさんが助け舟を出してくれた。
「彼らは情報生命体とも言える存在で、言わば魂だけみたいなものなのよ」
「ほほー! そりゃすごいですね。そんな生物がいるんだ……」
「見た目は人と変わらないわ。情報技術を駆使し、魂の形を外見として投影してるわけ。そして存在そのものが情報の塊であるところを首謀者に突かれたのね。彼ら全てが、命の根幹とも言うべき魂の情報をとあるシステムに固着されてしまったのです」
「人々がどこかに捕らわれてしまったってことですか?」
「その通りよ。一人の天才が作り出した狂気のシステムにね。観測部と解析部によると、内部はヴァーチャルリアリティそのものの世界で、人々は激しい闘いにさらされているそうよ」
「へぇー……」
「なのであなたたちも肉体は置いて行かねばならないの」
「へっ?」
なになに!?
どういうこと!?
肉体を置いて行く?
どうやって!?
あ、フランが異界の俺たちを救った時みたいに、か?
「察しがついたようね。そう、アストラル体でしか侵入できない世界なのよ。大丈夫、あなたたちの身体は医療部が責任をもって保護するわ」
おいおい、マジかよ。
女神様に俺のシモの世話をさせる気?
やっべ、変な意味で興奮してきた。
「アストラル体とは言え、大きなダメージをもらえば死んでしまうので気を付けなさい」
「「はい!?」」
「魂の滅びは肉体の滅び。当然の理です」
そりゃそうかもしれませんが!
「首謀者であり、システムを構築した張本人、【ガイアー】を倒せば彼らは解放されるそうよ。なぜそんなことをするに至ったのかは以前不明だけれど。でも、もう既に大勢の人命が失われてしまっているわ。このままでは全滅も近いでしょう。そこでアキトたち救済部へ要請することとなったのです」
「はぁ」
それって言っちまえば、お前らは救済部なんだからとっとと救ってこいってことですよね。
投げっぱなしジャーマンもいいとこだ。
組織としては間違ってる気もする。
もっと俺たちを大事にして欲しいもんだぜ。
しっかし、そのガイアーって野郎はなにが目的でそんなシステムを作ったのか。
自らの頭脳を誇示するため?
なんらかの恨みを晴らすため?
いくつか思いつくが、確証は得られるはずもなかった。
いいさ、俺たちはとにかくそいつをブッ倒して神界送りにするだけだ。
あとは審問部の怖ーい女王さま……いや、女神さまたちに任せよう。
「では副神界長たるこのマリアベルから、正式に任命するのじゃ。救済部部長アキト、フランシアの両名に命ずる! ハイペリオスに赴き、首謀者ガイアーを倒して世界を救済せよ!」
「「承りました!!」」
「わ、私のセリフが……!」
マリーに先を越され、ガクリと膝を付くアストレアさんなのであった。




