037 決戦の日は大晦日
「……うーん……」
明け方、か?
それとも深夜か?
クリスマスのどんちゃん騒ぎ。
その挙句にいつの間にか眠ってしまったようだ。
うー、トイレ行きたい。
目覚めた原因はこれである。
しこたま飲んだんだし、そりゃ出るもんも出るわな。
うわ!
俺は床で寝てたのか!
ひぃ!
しかも死屍累々!
フランもミリィもユエルも、だらしなのない格好でそこらへんに転がってる!
ユエルは日本酒の一升瓶を抱っこしたまま。
ミリィはなぜかテーブルの下で。
フランに至ってはベッドに顔だけ突っ込んでいる。
身体はまるごと外だぞ。
どんな寝相だよ。
器用すぎるだろ。
ともかく、暖房が効いてるからまだしも、このままではみんな風邪引いちゃうな。
後でベッドへ寝かせてやろう。
俺にだって女の子はベッドへ、自分はソファで寝る、くらいの甲斐性はありますって。
その前に取り敢えずトイレだ!
漏れる漏れる。
あれ?
なんだかいつもより便座が高く感じるんだけど。
まぁ、いい。
早くせんとマジやばい。
俺は一物を取り出すべく股間をまさぐった。
だが、無い。
どこにも無い!
んなわけあるか!
よく探せ!!
ない!
ないよ!?
んん!?
なんで俺はピンク色のパンツを……?
って、女性用下着だこれ!!
「うわぁ!」
洗面台の鏡を見て驚く。
いつの間にか俺は幼女にされていたようだ。
黒髪ロングでお目めパッチリ。
マジモンの美少女だから困る。
ミリィだな。
こんなことしやがるのはミリィしかいねぇ。
あのアマ!
ご丁寧に服や下着まで変えやがって!
限界の俺は、仕方なくそのまま用を足した。
幼女形態なんて慣れているはずなのに、なんでか変な気持ちになってくる。
「ふぅ……」
スッキリして手を洗っている時に気付いた。
自分で元に戻せばよかったんじゃね?
今の俺ならそのくらいの神力は操れると思う。
やってみる価値はありますぜ!
「おりゃ」
我ながらかわいらしい声とともに体内の神力を励起した。
ポワン
出来栄えを鏡で確認する。
おお!?
目が切れ長で、まつげもバッサバサ。
鼻筋も高く、歯もやたらと白く輝いた。
「わっはははは! 誰だお前は! 無駄にイケメン!」
思ってた結果とだいぶ違うが、俺の願望がストレートに出てしまったんだろうか。
だが気に入った。
しばらくこのままで過ごそう。
俺は部屋へ戻り、まずフランをベッドへ寝かせた。
次にユエルを。
そしてミリィを抱き上げた。
「んー……あれぇ? アキトさんです……か……? ひぃぃ! あなた誰です!?」
「ふっふっふ! イケメンアキトさ!」
「いやぁぁぁ! 私のアキトさんはこんなに美男子ではありません!」
「なんてこと言うの!?」
失礼なヤツだ。
てか、おい。
こら、暴れるな!
「……ふにゅ? なになにー!? なにごと!?」
「うにゃ……? なにかあったんですか~?」
フランもユエルもミリィの大声で起きてしまったようだ。
「フラン先輩! ユエル! アキトさんの名を騙る悪党です!」
「待て待てぇ! 誰が悪党だ! 俺はアキトだって!!」
俺の悲痛な訴えも虚しく。
「あんた誰よ! アキトをどこにやったの!?」
「アキトさんを返してください~!」
マジかこいつら!
本物のアホ!?
はっ!?
ミリィとユエルから神力の励起を感じる!
ドゴンドゴン
躱す間も無く、強烈な光弾が俺の顔面に直撃した。
見なくてもわかる。
俺の顔はグッチャグチャだろう。
そのままもんどりうって倒れた俺。
「待って、ミリィ、ユエル……それ、アキトじゃない?」
「あれ? 本当です。このひどい顔は間違いありません」
「……確かにアキトさんですね~」
おいコラ。
なんで滅茶苦茶な顔の方で俺だとわかるんだよ。
なめてんのか。
「アキト、大丈夫!?」
駆け寄ってくれたフランに、こう返した。
「かすり傷さ」
「嘘ぉ!? どう見ても死にかけよ!?」
ですよねー。
ガクッ。
「アキトー! しっかりしてー!」
「申し訳ありませんアキトさん! すぐに治します!」
「アキトさん~! ごめんなさい~!」
サクリとトーストを噛む。
みんなで起きちゃったついでに、朝食を食べることにしたのだ。
ほぼ昨日の残り物なのだが、全員モリモリ食べてる。
小さなことだけど、俺にはこう言うのがうれしいんですよ。
食べ物を粗末にするのが、なによりも嫌いなんでな。
「はぁん? 神界一斉休暇の時にもパーティーがしたい?」
「うんうん。どうかな?」
唐突にこんなことを言い出すのは大抵フランである。
「なんでまた?」
「昨日すっごく楽しかったし、普段お世話になってる女神もいるからねー」
「なるほど。料理と酒で感謝の気持ちを伝えようってことか」
「そうそう! そうなのよ! わかってますねーアキト」
身を乗り出し、目を輝かせるフラン。
うむ、今日もかわいい。
口の横にケチャップついてるけど。
「ねぇー、いいでしょう? アキトー、ねぇってばー」
そんな潤んだ瞳で見られたら、いやとは言えないだろうがよ。
甘いかなぁ、俺。
「そりゃ構わんが、場所とか人数とかどうするんだ? それによってだいぶ変わるぞ」
「場所は……部長権限をもって、神界食堂を使うことにします!」
「ぶっ、結局それか。ま、いいだろう。ミリィとユエルはどう思う?」
「よろしいのではないでしょうか。アキトさんが面倒でなければ、ですがもぐもぐ」
「わたしもいいと思います~、楽しみがまたひとつ増えますね~はぐはぐ」
確かに楽しそうではあるな。
でもこれじゃパリピみたいだ。
いつから俺はリア充になったと言うのか。
あれほどあんな連中は毛嫌いしてたのにな。
「んで、予定日はどうするよ」
「そーねー。休暇開始が日本時間で30日からよね。じゃあ31日の夜!」
「うへ、大晦日だぞ。準備期間が一週間もないし」
「……だめ?」
「愛するフランのためだ。一肌脱ごうじゃないか」
「わーい! だからアキトが好き! 愛してるー!」
フランが飛びついて俺の頬にキスの雨を降らせる。
うれしいが、俺の顔までケチャップまみれになるだろ!
「あ、私も愛してますんでむぐむぐ」
「わたしもですよ~もごもご」
「ミリィ、ユエル! ついでみたいに言うな! 愛が薄いよ!?」
それにしても。
うーむ。
年末パーティーか。
今度は会場に手間暇かけなくていいわけだし、その時間を料理に回せるな。
ふっふっふっふ。
こりゃあ腕が鳴るねぇ。




