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031 俺の倫理観は消し飛びました


「どう言うことなの!」


 まるで般若のような形相。

 腕組みで俺とミリィを見おろすは、怒りのフランさまである。


 俺とミリィは先程のキス事件発覚後、部長室の床に正座をさせられているのだ。


「アキト、まさかこれは浮気? だとしたら私にも考えがあるけど」

「ばっ、バカ言うな! さっきの状況を思い出せ! どう見ても俺がミリィに犯されてたじゃねぇか!」

「そうよね……アキトにそんな甲斐性があるとは思えないし……」

「それはそれでひどい!」


 何て言い草だ。

 それでもお前は俺の彼女か。


「じゃあ、ミリィ。どうしてあんなことをしたのか聞かせてくれるかしら」

「アキトさんに恋をしているからです」


 ケロっとした顔で言い切るミリィ。


 こいつ。

 ある意味すげぇな。

 やらかしといてこんなに堂々としてるとは。


 しかし、ミリィが俺をねぇ……

 自分でも俺のどこに惚れられる要素があるのかわからん。

 もしかしたらフランに感化されてるだけなんじゃねぇのかなぁ。


 ほら子供ってさ、友達が好きになった人を自分も好きなったりするじゃないか。

 ああ言うのかと思ってたんだが。

 ミリィも中身はともかく、見た目は幼いしさ。


「ぐっ、なんの臆面おくめんもなく言い切ったわね……」


 少しだけミリィに気圧けおされるフラン。

 それでもドンと足を踏み鳴らし、その場にとどまる。

 その音に、ユエルが小さく悲鳴を上げた。


 フランが二の句を次ぐ前にミリィの先制パンチが飛ぶ。


「アキトさんとフラン先輩はお付き合いしてますよね? 毎日毎日イチャイチャしてますし」

「ぐはっ!」


 見えない拳で腹を打ち抜かれたようにフランは崩れ落ちた。


 弱っ!!

 照れと恥ずかしさで精神にダメージを受けてやがる。


 アホだなフラン。

 ミリィに口で勝つのは難しいぞ。


「見ていればそのくらいわかりますよ。そこで提案です。私もアキトさんを諦める気はありません。なので、みんな一緒に愛してもらうと言うのはどうでしょう」

「「「はい!?」」」


 フランは勿論、俺もユエルも仰天するしかない。


「ユエル、あなたもアキトさんが大好きなのでしょう? 悪い提案ではないと思いますが」

「…………そう、かもしれませんねぇ~」


 汚ぇ!

 ユエルを味方に抱き込む気だ!

 フラン!

 なにか言ってやれ!


「……うーん」


 って、言わないんかーい!

 なら俺が!


「俺は……!」

「アキトさんは黙っていてください。こんなにかわいい女神たちに愛されてなにか不満でもあるんですか?」

「くっ」


 ピシャリと一喝されてしまった。


 怖い。

 女の子ってこんなに怖いものなの?

 しかも自分でかわいいって言っちゃってるよ。

 かわいいのは認めるけどさぁ。


「もし結婚する運びとなっても、神界なら全員とできます。重婚してはいけないなどと言うくだらない規則はありません。むしろ全員と結婚したほうが安月給のアキトさんを我々で支えることができるはずですよ」

「くぅ……確かに」

「なるほどぉ~」


 おい。

 押し負けてんじゃねぇよフラン。

 汗ダラッダラだぞ。

 ユエルも納得するなっての。


 そして何気に俺をけなすなよミリィ。

 安月給で悪ぅござんした。


「…………負けたわミリィ」


 何に!!??

 速攻で負けんな!

 ここは踏ん張りどころだろ!!


「私もアキトの安月給じゃ養ってもらえないと心配していたのよ……」


 そんな風に思ってたの!?

 ひどくね!?


「わたしもアキトさんと一緒にいられるならなんでもいいですよ~」


 ホントにわかってんのユエル!?

 答えかたが雑じゃない!?


「満場一致ですね。最後にアキトさんの気持ちも聞いておきましょう。アキトさん、私たちが嫌いですか?」


 うわっ!

 その聞きかたはズルいぞ!

 この雰囲気の中、嫌いって言えるはずもねぇ!

 実際嫌いじゃないから余計に困るわ!

 

「嫌いじゃない、です」

「つまり?」

「……好き、です」

「よくできました」


 そう言いながら俺の頭を撫でるミリィ。


 誘導尋問だろこれ!!


「さて、これで私たちはアキトさんの恋人になりましたよ。難しく考えることはありません。ハーレムは男の夢だぜヒャッホー、と素直に喜んでください」

「なんだか釈然としないけど……アキト、私を一番に愛してよね!」

「わたしも精一杯彼女としてがんばります~」


 なにこれ。

 あっけらかんとしてるけど、本当にそれでいいのかお前ら。

 俺だけまともな倫理観でいるのがバカバカしくなっちまうぞ。


 フランのことは勿論愛してる。

 俺から好きになったようなもんだしな。


 ミリィは時々辛辣なことも言うけど、意外と俺を立ててくれたりする。

 時折見せる女の子らしい表情もかわいくて好きだ。


 ユエルは妹みたいな存在。

 ……だと思ってたんだけど、あけすけに好意を持たれて悪い気がするはずもない。

 ずっとかわいがってあげたいくらいだ。


 ……あれ?

 

「ええい、わかった! 俺も男だ! 思い切り愛してやる!」


 俺はそう宣言しながら全員をいっぺんに抱きしめた。

 もういいや!

 詰まんねぇ倫理なんてクソ喰らえ!


「きゃー、あははは」

「あん、もっと優しく抱いてください」

「うふふふ~、楽しくなりそうですね~」


 バターン


 笑い声の中、猛然と開かれるドア。


「フランはここにいる!?」


 飛び込んで来たのは白いローブ姿で黒髪ロングの女性。

 荒い息を吐きながらやけに細い目でフランを探す。

 細いと言うか、こりゃもう閉じてるな。

 盲目ってわけでもなさそうなんだけどね。


 ところで、すみません。

 フランなら俺が絶賛抱擁中なんです。


 なので俺が応対するしかない。


「どちら様でしょう?」

「あら、これは失礼しました。私は運命部所属のテレーゼと申します。あ、これ名刺です」

「これはご丁寧にどうも。あれ、俺の名刺はどこだっけ」

「どうぞ」


 ミリィがどこからか取り出した名刺ケースを受け取る。

 気が利くじゃないか。

 俺に抱きしめられたままだってのに器用なこった。


 一枚名刺を抜き取り、両手を添えてテレーゼさんに渡す。


「救済部部長の火神秋人ヒカミアキトです」

「あら? 名刺には『秋津火吐命アキツヒトノミコト』と記されていますが」

「ええっ!? 名前のとこまだ直ってないの!? 後で直しますんで、取り敢えず俺のことはアキトと呼んでください」

「わかりました、アキトさん」


 くそ、ミリィに名刺の修正を頼んだ俺がバカだった。

 それでも比売ヒメの部分が直っただけマシなほうか。

 一応、男の神様っぽい名前にはなったしな。

 待てよ、このままのほうがハクはつくかもしれんぞ。


 そこでようやく来訪者に気付いたのか、フランが俺の胸に埋めていた顔をあげた。

 

「んー? あれ? テレーゼじゃない。どうしたの?」

「フラン! どうしたのじゃないわよ!」


 ここに来た用件を今更思い出したのか、テレーゼさんは再度慌てだした。

 のんびり屋さんだなぁ。


 そういやこの人は運命部所属らしいけどなにかあったんだろうか。

 ん?

 運命部?


「友人として忠告するわ! あなたの運命が変わりそうなの! 今すぐ現地へ飛んでちょうだい!」

「へ? また!? このまえ修正したばっかりじゃない!」

「アキトさん、他人事ひとごとみたいな顔をしている場合じゃないですよ! あなたにも大きな関りがあるんですから!」

「はい?」


 全然意味がわからない。

 運命がまた変わる?

 フランと、俺の?

 まさか、このあいだ謎花を生成しに行った時みたいに?


「じれったいですね! 座標特定、時間軸固定! お二人に強制転移権限を執行します! 良い旅を!」

「えぇぇー!? 理不尽!」

「ちょっと待ってよテレーゼ! 私まだ心の準備が……」


 げぇ!

 マジで神力が満ちている!

 この人、本気で俺たちをどこかへ飛ばす気だ!


「フラン! つかまれ!」

「うん!」


 かろうじてフランを抱きしめた俺は、そのまま強引に転移させられたのであった。



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