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027 和食炸裂! 大逆転! 神話となった食堂部!


「よっこいせっと、ふぅー」

「調味料の調達ご苦労様アキト。ご飯はもう炊けてるわよ」

「おー、サンキューフラン。次は大根をおろしてくれないかな」

「まっかせてー」

「アキトさん、お味噌汁の味をみてもらえませんか?」

「ん、ズズッ……うまい。ミリィ、味付け上手じゃないか」

「そうですか? へへ」

「そのまま、沸騰させないように頼む」

「頭がフットーしちゃうよー、ですね?」

「ミリィの頭が沸いてんじゃないの?」

「アキトさ~ん、グリルの準備はこれでいいんですかぁ~?」

「うん、あ、ユエル、下の受け皿に水を張ってな」

「はい~」


 今、俺たちは食堂の新メニュー作成に向けててんやわんやだ。

 必要な食材はユエルに具現してもらったが、さすがに調味料のたぐいは俺もイメージが難しい。

 ユエル自身も加工品を具現するのは苦手って話だ。

 なので、俺が何度か転移して日本から調達してきた。


 塩、コショウ、醤油、味噌、みりん、料理酒、砂糖、酢、ケチャップ、マヨネーズ、ソース。


 最低限の種類しか揃えてないが、当面はこれで問題なかろう。

 無駄にった料理を作るわけでもないしな。


 むしろ単純なほうが、作り手としては数をこなせる。

 そもそも女神たちは、あのとんでもない女神丼か、わけのわからん固形食ばっかり食べてたわけだろ?

 だったら何を出されても、アレよりは美味いと思うに決まってるさ。


 とは言え、手を抜くつもりは毛頭ない。

 素材の味をしっかり引き出すのだ。


 俺は白菜をざく切りに、そしてキュウリを輪切りにした。

 それを袋に入れて塩もみしたあと、しばらく寝かせる。

 これだけで付け合わせの浅漬けになるのだ。


 さらに腕をZ型に曲げ、パラリパラリと高い位置から鮭の切り身に塩をまぶし、グリルで焼く。

 ……すまん、もこ〇ちレベルに格好付けすぎたな。

 オリーブオイルを大量に使わないから許しておくれ。


 そう、俺たちが作っているのは、シンプルかつヘルシーな焼鮭定食である。


 女神たちは仮にも女性だ。

 やはり体形や美容にも気を使っていると信じたい。

 なのでダイエットにもいいと言われるこのメニューを選んだのだ。


 そしてもうひとつ。

 忙しい女神のために考案したものがある。


 片手でも食べられる定番のおにぎりだ。

 付け合わせは厚焼き玉子に大根おろしを添えて提供する。

 希望者には味噌汁もつけよう。


 俺はこれらを、ユエルに細かく説明しながら調理した。

 ユエルは熱心にメモを取りながら聞いている。

 今後、この食堂を切り盛りするのは部長であるユエルなんだから、しっかり覚えてもらわないとな。


 フランとミリィに、料理ってのは花嫁修業になるよ、と言ってみたところ、やたら張り切って手伝いだしてちょっと笑った。

 かわいいやつらめ。


 なんなら嫁にもらってやるよ?

 ……いかん、俺が毎日二人へメシを作ってやってる未来しか想像できんな。


「よーし、みんなお疲れ様。これで準備はできた。後はお客さんだけど……」

「あ、私、広報部に知り合いの女神がいるわよ」

「広報部!? いったい何をどこに広報してんだよ!? まぁいい、神界に宣伝してくれるなら万々歳だしな。呼んできてくれフラン」

「りょうかーい、って転移できないわよ私!」

「フラン先輩、私と行きましょう。そのあと、総務部と神事部、経理部にも声をかけてきます」

「おお、ミリィは頼りになるな。しかも、貸しを作っておけば後々役に立ちそうな部署ばかり選んでやがる。お主は策士よのう!」

「ふふふ、お代官様ほどではございません。では、お任せを」


 そう言い残してフランとミリィは転移して行った。


「はやや~、皆さんすごいですねぇ~」

「いや、ユエルも充分すごいさ。あんなに美味い食材を具現できるんだからな」

「いえいえ~、アキトさんのおかげですよぉ~。目からウロコとはこのことですぅ~、わたし感動しちゃいましたぁ~」


 俺の手をギュッと両手で握り、何度も振るユエル。


「こんなに親身になっていただけるなんて、なんと御礼を言えばいいのか~」

「おいおい、まだ終わってないぞ。客の反応を見てから色々改良しないとな。それにほら、俺たちは救済部だから、困っているユエルを救うのは当り前だろ?」

「うぅぅ~、それではわたしの気がおさまりません~。なので、アキトさん。少しかがんでください~」

「? こうか?」


 俺がかがむと、ユエルは目をつむって顔を近付け、そのままキスをした。

 しかも唇に!?


「アキトー、声をかけてきたわよー……ああああーーーー!? 私というものがありながらなにやってんのよバカアキト!!」

「アキトさーん、頑張った私をいたわってくださーい……えぇぇぇーーー!! 離れなさいユエル!! それは許しませんよ!!」

「ぷはっ、昔読んだ文献にですね~、男性はこうすると喜ぶと書いてあったものでして~、てへへ~」


 ぽ、ぽかーん。

 あまりの事態に頭がついていけましぇーん。

 柔らかなユエルの唇の感触しか残ってましぇーーん!


「アキト、女神たちがきちゃうわ! ほうけてないでしっかりしてよ! えい! えい!」

「アキトさん! 早く現世に戻ってきてください! この! この!」


 俺の頬を張りまくるフランとミリィ。

 なぜだろう。

 全く痛みを感じない。

 いやごめん、やっぱり痛ぇわ!!


「ガーン、私としたことがしくじったわ……まさかあんな小さい子に先を越されるなんて……」

「あれはノーカウント。あれはノーカウント。子供のすることですもの、あれはノーカンに決まってます……」


 なにやらブツブツとつぶやいている二人。

 小声すぎてよく聞き取れない。


「アキトさん~、大丈夫ですかぁ~? ほっぺが腫れあがってますよ~?」


 両手で俺の頬をさすってくれるユエル。

 なんてかわいいんだろう。

 優しくされるといきなり特別な存在に見えちゃうことってあるよなぁ?

 キ、キスもしちゃったわけですしー。


「お邪魔しまーす! 美味しい料理が食べられると聞いて飛んできました!」

「なにこれ、いい匂~い!」

「うわぁ、楽しみだね!」


 ドヤドヤと食堂へ転移してくる女神たち。

 おお、結構な人数だ。

 思い思いにテーブルへつく女神たちをボーっと見ている場合じゃない。


「よし、みんな。正念場だぞ。絶対美味いって言わせてやろうぜ!」

「「「おぉ~!」」」


 俺たちは手分けして動き出した。

 ミリィが女神たちの注文を聞いて回る。

 フランが白米やみそ汁をよそい、ユエルがお膳に並べた。


 俺は火加減が重要な鮭と卵焼きを担当する。


「アキトさん、焼鮭定食3におにぎりセット2です!」

「あいよ! 鮭3、にぎり2ね! ユエル、この鮭を皿に盛ってくれ」

「お任せください~」

「フラン、鮭と卵焼きの皿に大根おろしを添えるんだ」

「かしこまりー」

「アキトさん、追加です! 鮭定2におにぎり2です」

「あいよっ! 鮭3丁あがったよ! ミリィ、注文順に運んでくれ!」

「はい!」


 一気に慌ただしくなる。

 だがここで慌ててはいけない。

 あくまでも冷静に、手抜きはせず。

 周囲の状況を見極めながら、だ。


 鮭定の乗ったお盆を女神たちは物珍しそうにしている。

 そして恐る恐る一口。


 さぁ、いよいよ審判の時だ。


「!!!!!?????」


 女神たちの瞳が、こぼれんばかりに見開かれる。

 どっちだ!?

 口に合わなかったのか!?


「おっっっっっいしーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

「幸せが口から溢れていますですーーーーー!!」

「なにこれえぇぇぇぇぇ、すっごーーーーーーい!! 身体中が歓喜の絶叫をしてるううぅぅぅぅ!!」


 よっしゃ!

 俺は小さくガッツポーズをした。


「だ、だめ、これはダメぇ! 手が、手が止まらないよぅ!」

「これはスクープだわ! 他の子たちも呼んでくる!! 私の分まで食べないでよね!」

「あああ、これは福音だわ! 今日死んでも後悔なんてないのよぉぉ!」


 そ、そんなに……?

 女神たちにしてみれば味覚の大革命なんだろうけどさ。

 俺からすればありきたりの料理なんだよね。


「ふひひ、これは我々の業績を売り込むチャンスですよ」


 ミリィはニヤリと笑い、指を鳴らした。


 ボワン


 食堂の壁一面に巨大な横断幕が現れた。

 そこには、『救済部部長 アキトが麗しき女神へお贈りする男の愛情料理!』と、でっかく書かれていたのだ。

 そして、見えないほど小さな文字で隅っこに『協賛 食堂部』と書いてある。


 これはひどい!

 そして恥ずかしい!!


 だが女神たちの反応は違った。


「キャーーーー! アキトさん素敵ーーー! もっと作ってぇーー!」

「すごいすごい! 救済部ってこんなにすごいのー!?」

「早く早く! 写真をカミッターにアップしよ! あとおかわりも!」

カミンのグループにも一斉送信しなきゃ! それとおかわりを!!」


 ああああ、どったんばったん大騒ぎになってしまった。

 しかも、続々と女神が食堂へ転移してくる。

 飛び交う注文の嵐。


 ええい!

 いくらでもこい!

 やってやらぁ!!



 その日、食堂部始まって以来の大盛況と売り上げを叩き出し、救済部と食堂部の名は一躍神界に鳴り響き、ある意味神話に掲載されるほどの伝説となった。


 ごめん、超大げさに言ってみました。



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