表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/79

026 予算すら残ってないってよ


 俺たちは奥にある食堂部の事務室へ移動した。


 ユエルに頼み、関連書類を出してもらう。

 事務机に並べられたそれらを、俺とミリィで読み漁った。


 フラン?

 フランならそこで昼寝してるよ?


 どうせ資料を見ても適当なことしか言わないだろうし、寝顔がかわいいからこのまま寝かせておこうぜ。


「なぁ、ユエル。資料だと結構予算の割り当てがあるはずなんだけど、なんでこれを食材に使わないんだ?」

「あぁ~、それはですねぇ~。最新の機材に全部使ってしまいましてぇ~」

「全部!? アホかっ! 道理で厨房がピカピカなわけだよ! あれ新品ばっかりだもんな!」

「はぃ~、ローンを組んでありますので~、毎年予算が残らないんですよ~」

「なんてことしてくれたの!? くっそ、こりゃいきなり厳しいぞ。食材の仕入れすらできないなんて……」


 俺の計画がしょっぱなから頓挫とんざしたよ。

 金がなきゃ立て直すどころか何かを始めることもできんぞ。


 俺はうめきながら頭を抱えた。

 どうする、どうするよ俺。

 今更やっぱり救済できませんとは言えないっての。


「アキトさんの計画としては、予算を使って食材を仕入れ、美味しい料理を作ってお客さんを増やそうという、シンプルながらも合理的な考えですよね? それは素晴らしいと思います」

「お、おう、よくわかったなミリィ」


 てか、珍しく褒められた?

 なにこれ、こいつはデレ期にでも入ったの?


「ならば、私の思いついた方法をアキト計画に加味してもよろしいですか?」

「是非もなし。思い切りやっちゃってくれ……アキト計画? へっぽこ極まるネーミングだな」

「自分で自分をけなすとは流石ですねアキトさん。では、ユエル。あなたが主役ですよ」

「わたしがですかぁ~? なんだか照れますねぇ~」


 かわいらしくモジモジするユエル。

 うーん、食べちゃいたい。

 はっ!?

 これではまるで変態じゃないか。


「まるで、ではなく完全な変態ですよ。このキモ野郎」

「暴言! あと、俺の心を読むなミリィ!」


 くそ、なんでバレたんだ。

 巧妙に隠しきったはずなんだが。


「顔に出すぎですから」

「また読んだの!? もうやめて!」

「で、ユエル。この計画にはあなたの神力が必要です」

「はややぁ~、そうなんですかぁ~」


 無視!?

 前言撤回!

 ミリィにデレ期なんてなかった!


「ん? 神力?」

「はい、名付けて『予算がないなら食材を神力でつくってしまえばいいじゃない計画』です」

「なっっが! マリー・アントワネットかお前は。って……どう言うこと?」

「アキトさんはフラン先輩並みに察しが悪いですね。脳になんらかの疾病があるのでは?」

「失礼だよ!? 本当にフランを敬愛してるの!?」

「勿論ですとも。アキトさんのことも最近では敬愛していますよ」

「そ、そうですか。それはうれしいです……」

「主にご飯を作ってくれる時とかですね」

「目的はメシだけかっ!」


 ダメだ。

 ミリィと話してるとツッコミが止まらない。


「アキトさん。お忘れですか? ユエルが何を司る女神かを」

「あ、そうか! ユエルは豊穣の女神だったな。ふむふむ、なるほど、いい手だ」

「でしょう? えっへん」


 薄い胸をそらすミリィは放置して、俺は考えにふける。

 ユエルに食材を出してもらえば確かに予算面はクリアだ。

 ただ、どの程度の物を出せるのだろう。

 そうだよ。

 問題は味だ。


「ユエル、ちょっと神力で米を出してくれないか?」

「米、ですかぁ~? 確か、遥か昔にそのような食材の名を聞いた気がしますねぇ~」

「記憶を引き出すとこから始めるの!? じゃあ、家畜の肉なんかは?」

「お肉……食べたことがないですぅ~」

「マジで!? 女神ってのはどうやって生きてきたんだ!」

「それはほら~、さきほどのスペシャル女神丼が~……」

「物体Xの話はもういい! しかし困ったな。手詰まり感がする」


 いっそのこと、俺が日本から食材を仕入れるか?

 あああ、ダメだダメだ。

 そもそも予算がないからこんなに困ってるんだった。


「ふぁ~、よく寝たぁー。おはようアキトー」

「おう、おはよう」


 ようやくフランのお目覚めだ。

 まぁ、起きたところでなにも事態は変わらないんだけど。


「ねぇねぇ、なに難しい顔してるの? ねぇねぇ、ねぇってばぁ」


 そして起きたら起きたで、なんにでも首を突っ込みたがる。

 あまりにもうるさいから仕方なく今の状況を説明してやった。


「なぁんだ。そんなの簡単じゃない」

「「「はい!?」」」


 こりゃまた意外なことを言い出す。

 俺たち三人がかりで出なかった答えをフランがぁ?

 ははは。


「アキトがイメージして、それをユエルが具現すればいいのよ! 私とアキトでいつもやってるじゃない」

「「「!!!」」」


 驚愕に目を剥く俺たち。


 それだぁ!!

 うわー、何でそれを思いつかなかったかなぁ!


「ナイスアイデア! よくやったぞフラン! 今夜はうまいもん食わせてやるからな!」

「わーーい! やったーーー!」

「ちょっ、それには私も含まれていますよね!? アキトさん! 聞いてますか!? お願いですから私を捨てないでください……!」


 すがりつくミリィを無視しながら、ユエルと手を繋いだ。

 はっはっは、さっきのお返しだミリィ。


「ユエル、俺のイメージ通りに頼むぞ?」

「は、はぁい。男の人と手を繋ぐのは初めてなので緊張しますねぇ~、大きくてとってもあたたかいですぅ~、へへへ~」


 やたらかわいいこと言ってる。

 せっかくなので、俺もちっちゃくて柔らかなユエルの手を堪能しておこう。

 おぉ~、ぷにぷに~!


「「ロリコン」」

「ちがわい!!」


 ジト目のフランとミリィからすかさずツッコミが入った。

 そ、そんな邪念は決してないんですぅ!

 いかん、ユエルの口調が移った。


 俺は気を取り直して、イメージを喚起させていく。


 まずは形。

 米粒の形状。

 そして精米歩合は90%だ。

 味は当然、コシヒカリの新米!


「いいぞユエル、やってくれ」

「はぁ~い、いっきますよぉ~!」


 ザザーーーッ


「おっとっとー!」


 ユエルの手から噴き出る米を、ザルを持ったフランが、ドジョウすくいみたいな奇妙なポーズで受け止める。

 俺のイメージは五合分、700~800グラムだ。


「わー、綺麗なお米ー!」

「本当ですね、既に美味しそうです」


 まだ生米だぞ。

 食うなよ?


 俺はすかさずその米を研ぎ、一度も使われた形跡のない炊飯器に入れた。

 米ってのは精米したてが美味いんだ。

 だからすぐに炊くのさ。


 しかし、こんな最新式の炊飯器があるってのに、ユエルは何に使うのか疑問に思わなかったんだろうか。

 もしかして、形から入りたがる子?

 機材だけ揃えて満足しちゃうとか?


 しばらく待ち、炊き上がった米を茶碗に盛る。

 さぁ、味見だ。


 ほっかほかの米を口に含む。

 うむ、我ながらなかなかの出来。


「んー! 美味しいー! あまーい! さすがアキトだわー!」

「これはヤバいですよ。ご飯をおかずにしてご飯を食べられるほどです。悔しいですがアキトさんはすごいですね」

「こ、こ、こ、こ、こんなに美味しいものが存在してたんですかぁ~~~~~!?」


 フランとミリィはともかく、ユエルの驚きようがすさまじい。

 目を白黒どころか、完全に白目を剥いてる。


 おいおい、気を失うなよ?

 本番はこれからだぞ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ