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021 事件の顛末と部長就任!


 最初に飛び込んできた光景は、抜けるような青空だった。

 次いで心配そうなフランと無表情なミリィの顔。


 吹き抜ける暖かな風に、二人の金髪と銀髪が揺れている。


 そうか。

 邪神は正しく滅せられたんだな。

 ヴァースランドを覆っていた気味の悪い暗雲が晴れたってことは、きっとそう言うことなんだろう。


 地下神殿は完全に崩落したようだが、なんとか地上へ転移できたみたいだ。

 二人の女神が俺を導いてくれたのかもね。

 なんちって。

 こいつらがそんなに気の利いたことをするはずないよな。


「よかったー、目が覚めたのね! もう! 心配させないでよ!」

「ごめんなフラン。それと膝枕ありがとうな。とっても気持ちいいです」

「へ、変態! わざと顔をグリグリしてるでしょ!」


 当然です。

 こんな機会を逃してたまるかっての。


「……ところでミリィは俺の脚を膝に乗せて何やってんだ? 楽しいのそれ」

「はい、脚枕です。幼女のスベスベお肌がたまりません」

「そ、そう。そいつはよかった……よく見ろフラン。変態ってのはミリィみたいなやつのことを言うんだ」

「確かに危ない人だわ……」


 名残惜しいが、フランのもちもちふとももから顔を引っぺがす。

 近くにはヌァリアンヌとチョリエッタが胸の上で手を組み、静かに横たわっていた。


 もう開かれることはない瞼。

 遂に聞くことのできなかった想い。

 手遅れになってしまったことが悔やまれる。


「彼女たちの魂は?」

「大丈夫。二人とも神界へ送ったわ。ただ、ヌァリアンヌは……」


 口ごもるフラン。

 理由も俺にはわかっていた。

 この世界、ヴァースランドの消滅は免れたものの、ヌァリアンヌは邪神サーディスを召喚した罪がある。

 彼女はこれから審問部の聴取を受けることになるだろう。

 そのあとどうなるのかは、それこそ神のみぞ知る、だな。


 どっちにせよ、俺たちには少し後味の悪い結果となってしまった。

 ちょっとだけ肩を落とす俺に、フランが励ますように声をかけてくれる。


「逝く前に、ヌァリアンヌが言ってたわよ。邪神を止めてくれてありがとう。この世界を救ってくれてありがとうと、小さな女神さまに伝えてくださいってね」

「……そうか……そっかぁー」


 ヌァリアンヌもきっと色々後悔してたのだろう。

 もしかしたら彼女自身も、呼び出してしまった邪神の強大さを恐れ、止めようとしてしていたのかもしれない。

 つまり、一時の激情に駆られはしたが、この世界を愛していたんだと思うな。


 ま、俺の勝手な憶測でしかないけど。

 そうであって欲しい。


 物思いに耽っていると言うのに、ヌッと俺の眼前に現実とタブレット端末を突きつけるミリィ。


「アキトさん。特殊出張業務全行程完了との入電です。神界から帰還許可が下りました。」

「入電て……わかった。フラン、ミリィ、お疲れ様。そしてありがとう」

「こちらこそありがとう。アキト、いつも無理させちゃってごめんね」

「気にするな。俺のためでもあるんだからな。フランが笑ってくれるならそれでいいさ」

「アキト……」

「はいはい、ちゃっちゃと帰りますよ。飛べ!」


 俺とフランの間にミリィが割って入り、グダグダのまま俺たちは転移した。


 投げっぱなしで帰るのは心苦しいがな。

 俺たちにできるのは邪神を倒すまでなんだ、すまない。


-----------------------------------------------------------------------------------


 数日後。


 男に戻った俺は、いつも通り連日徹夜で出張業務報告書を書き上げた。

 だいたいにして提出期限が短すぎるせいでこうなる。


 一応フランとミリィも手伝ってくれるんだが、逆に時間がかかってしょうがない。

 なぜなら、とてもじゃないが読めそうにないミリィの書いた文字列を、フランが訳し、俺が清書すると言う三度手間を踏んでいるからだ。


 ……俺一人で書いたほうがまだ早いんじゃね?

 とは言え、課長補佐のミリィがせっかく手伝ってくれてるわけだし、無下にできるはずもない。

 課長としてはな。


 個人的には超却下だけどね!!


 でもいいんだ。

 かわいいから許しちゃうんだ。


 ちなみに、ヴァースランド事件の顛末だが。

 邪神サーディスは審問部の女神たちにこってり絞られたあと魂を浄化され、また違う世界で蘇るのだ。

 女神としてか、邪神となって蘇るのかはわからないが、そう言うことらしい。


 俺はこの話を聞いて、ボンデージ姿で拘束されたサーディスが、女王様ルックの女神たちに鞭でピチピチ叩かれてる様子しか想像できなかった。

 うむ、エロス極まるな。

 審問部の女神は、みんないい身体してるんだよ。


 で、悪役令嬢ヌァリアンヌと、伯爵令嬢チョリエッタの二人。


 まずチョリエッタは、そのままヴァースランドで生まれ変われることになった。

 果敢にもヌァリアンヌの暴走を止めようとした功績で、同じ両親から誕生させてもらえるって話だ。

 だが、あのアホ王子と付き合うのはもうやめておくんだぞ。


 ヌァリアンヌのほうは、邪神を呼び出した挙句ヴァースランドを崩壊に導きかけた罪は、俺が思ってたよりも重いようだ。

 よって、今度は完全に記憶を消去されたまっさらな魂となり、どこかの世界へ転生する。

 元が転生者なだけに仕方のない措置と言えるだろう。

 次こそ幸せになれるよう祈っておくよ。


 そうそう。

 最初にヌァリアンヌの魂をヴァースランドへ転生させた張本人のフランは、見事に減給処分となった。

 ただでさえ少ない給料がまた減ったとギャーギャー泣いてたっけ。


 神界の給料ってのは、独自通貨なんだ。

 俺みたいに拠点が神界以外の世界にある場合は、総務課に頼めばその国の通貨へ換金してくれるわけ。


 そこまではいい。

 いいんだが、換金率がひどい。

 日本円に換算すると、約14万円だ。


 たった14万円て!

 しかも月給でだよ!?

 こっちは命賭けてるのに!

 他でバイトでもしてたほうがよほど稼げるわ!


 勿論俺は黙ってられるはずもなく、経理部に文句を言ったよ。

 だけど。


「ヒラの女神たちはもっと安月給なんですよ! 私たちが文句を言いたいくらいです!」


 と、もじゃもじゃ髪でグルグル眼鏡のちっこい女神に一喝される始末。

 課長の俺ですら14万なのにそれ以下って……


 もしかしたらこの神界そのものが旧態依然とした、どうしようもない組織となり果てているのではないだろうか。

 根本から変えねば衰退の一途を辿るような気がしてならない。


 とは言え、課長なんて肩書はあるものの俺も下っ端となんら変わらん。

 発言権なんて、あってないようなもんだ。


 とか思っていたんだが。


 ピンポンパンポーン


「業務連絡、業務連絡。救済課の三人は、至急神事部長室へおいでください」


 顔を見合わせる俺たち。


「あーあ、こりゃフランの降格は決まったようなもんだな」

「ですね。フラン先輩、南無です。今後は私が課長ってことで」

「なんてこと言うの!? 二人ともひどいよ! うわーん!」


 泣きわめくフランをひっ捕らえながら神事部へ転移した俺たち。

 そこで待っていたのは、当然ながら神事部長で美人だけどきっつい雰囲気のアストレアさん。

 今日も三角メガネがキラリと光っている。


 あれ?

 でも今日は結構柔和な感じかな?


「よく来ましたね……ところでフランシアはなぜ泣いているのですか?」

「い、いやぁーそのぉー、フランは自分が降格されると思ってるみたいでして……」

「フフッ、なるほど。当たらずとも遠からずですね。あなたがたに辞令が出ています」


 ビクッとフランの身体が跳ね上がる。

 おい、ビビりすぎだろ。


 ちょっと待て、あなたがたって言ったか?


「本日付で、救済の女神代理 火神秋人、及び救済の女神フランシアの両名を特殊業務部門、救済部部長に任命する。なお、正義の女神ミリアリアは課長補佐から課長へ昇格するものとする。以上です。三人ともおめでとう」


 アストレアさんの言っている意味がわからず、ポカンと口を開けてしまう。

 開いた口が塞がらないってのはこれか。


 それでもじわじわと言葉が俺の中に沁み込んでくる。

 そして喜びが爆発した。


「やったぞフラン! 部長だってよ! マジかよヒャッホウ!」

「う、うん! ……えーん、えーん、よかったよー! ありがとねアキト! ありがとね!」

「ほ、本当に私が課長へ昇格しちゃうなんて……はっ! つまりお給料が増えるってことじゃないですか! なにを買いましょう!?」


 抱き合って笑い合う俺たち。

 昇進ってのは最高の気分だな。


「ただし、女神の補充はありません。体制はこれまで通り三人で業務をこなしてもらいます。結果はどうあれ、邪神討伐成功は上の心象が良かったみたいね」

「ありがとうございますアストレアさん!」

「ちょ、ちょっと、こら! 調子に乗らないの!」


 思わず俺がアストレアさんも抱きしめると、困ったように頬を染めた。


 なんだよ。

 かわいいところもあるんじゃねぇか。


 

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