018 神々にのみ与えられたスキル【基礎編】
「フラン! ミリィ! 伏せろ!」
「きゃー! なにこれぇー!?」
「あわわわわ、じじじじじ地震です!」
慌てふためく二人のアホ女神を力任せに地面へ伏せさせる。
幼女の俺にはそれすら一苦労だ。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
立っていることなど、とてもできそうにないほどの激震。
間近にいるフランたちの声すら聞き取れないほどの強烈な地鳴り。
「キャー! キャー! この世の終わりよー!!」
「アアアアアアアキトさん! ははははは早く止めてくださいー!!」
「止まるかっ!」
てか、お前ら女神なんだからどうにかしろよ。
あ、俺も女神だった。
遠くに見える侯爵城が崩れ落ちていく。
近隣の大都市でも大半の建物が倒壊しているようだ。
木造や、レンガ、石造りの建築物が多いこともあって、被害は甚大なものとなってしまうだろう。
この大地震を引き起こしているのも邪神なのだろうか。
「アキト! あれ見てよ!」
這いつくばったフランが見ている方向。
荒野の先。
「うげ、マジか……」
遥か彼方。
日本が誇る富士山よりも高い山が、真上に炎を吐いていた。
その近所の山々も盛大にマグマを噴き上げている。
大噴火だ。
こりゃ、いよいよヤバい。
邪神はガチでこのヴァースランドを滅ぼす気だ。
振動がだいぶ収まったころ、新たな事態が起こった。
いずこからともなく、揺らめく炎のような真っ黒い影が無数に現れたのだ。
「もしや、これが魔物か?」
「そのようですね」
「うわー、いっぱいいるよ」
俺たちは立ち上がり身構えた。
ヒラヒラドレスの裾が足に纏わりつく。
「ミリィ、元の姿に戻してくれ。これじゃ動きにくくてかなわん」
「そうですね。わかりました」
ペスン
ボワン
よし、これで動きやすく……
えぇぇーー!?
「待てィ! なんで俺だけスクール水着なんだよ!? 姿は幼女のままだし! しかも白スク!!」
「趣味です。いえ、アキトさんがモブ顔になってしまうなんて耐えられなくて……」
「遠回しにブサメンって言ってんの!? ちくしょう、もういい!」
俺は記憶を引っ掻き回し、魔法リストにあった呪文を唱えてみる。
「ファイアジャベリン!」
元素系中位魔法の火炎槍だ。
槍は一直線に疾駆し、魔物に命中した。
だが魔物は何事もなかったように平然と揺らめいている。
「……効いてないんかい! ポンコツ魔法め!」
「どうやら魔物たちは邪神の影響を受けているらしいですね。強い魔法耐性を付与されているのかもしれません」
「バーンブリザード! ……あらら、上位魔法もダメっぽいわねー。どうしよっか」
どうしよっか、じゃねぇよ。
魔法メインのこの世界で魔法がダメってのは……
よし、思いつきを試してみるか。
深呼吸。
意識を集中。
形状をイメージ。
ただし、精密さは必要ない。
形はざっくりでいい。
イメージ力を注ぐのは性能に。
女神の神力を励起。
祈り、念じる。
全てを断つ力を!
俺が目を開けると、右手に一振りの剣が握られていた。
金色に輝くブロードソード。
カラーは聖なるものをイメージしてたら、なんでかフランの顔が浮かんできちまってな。
お恥ずかしい限りだ。
でも安心してくれ。
【フラン剣】とか名付けたりしないから。
ここしばらくの間、ミリィとフランから神力を練り具現化する訓練を受けていた。
とは言っても、基本的にはイメージトレーニングである。
ま、理想はミリィくらい素早く具現化させたいところなんだがな。
しかし結構イチかバチかだったが上手くいって良かったぜ。
内心ヒヤヒヤしてたんだ。
さて、性能はどうかな?
「おりゃぁぁ!」
魔物に斬りかかる。
ザシュッと言う音とともに、バッサリと袈裟斬りになる魔物。
黒い塵と化してそのまま消えていった。
「おおー! アキトすごいじゃない!」
「うんうん、私とフラン先輩のお陰ですね」
「はいはい、お二人さんには感謝してますよ」
前回の出張業務で散々剣を使っていたせいか、やたらとしっくりくる。
俺には剣が合っているのかもしれん。
自分の身長ほどもある剣を振り回す幼女、か。
それはそれで絵になるな。
白スク水じゃなければね!
「こいつらは魔物と言うだけあって、聖なる力には弱いっぽいぞ」
「なるほど、よい助言ですね……魔を誅する光よ来たれ! ゴッデスビーーーーームッ!!」
「やばい! フラン! 俺の後ろへ!」
「うん!」
ミリィがいきなり神力に満ちた光線を放った。
しかも目から!?
俺はフランを後ろに庇い、白銀の光線が発する熱量に耐えた。
あっちぃ!
いかん、俺らが焼け死ぬ!
「光よ! 不可視の盾となれ! 神聖盾!」
俺の神力と祈りに呼応し、半円球の輝きがフランを中心に展開される。
全ての攻撃を軽減させる目には見えない盾だ。
これは神力を持つ者にしか扱えない。
つまり、神のスキルとも言うべきものである。
ゴッデスビームはミリィが適当に編み出した技で、彼女にしか扱えない。
だが、このフォースフィールドは神々の基本スキルであり、女神ならば誰でも扱えるよう系統立てられているのだ。
「フラン、大丈夫か?」
「うん、平気。いつも私を庇ってくれてありがとねアキト」
「大切なお前に死なれちゃ困るからな」
「えっ、それって……」
「はいはい、そこまで。終わりましたよ」
ミリィの言う通り、視界には一匹の魔物も残っていなかった。
なんちゅう威力だ。
荒れ地が余計に荒れちまってる。
……決してダジャレではないぞ。
「とんでもねぇ技を出しやがって。せめて、やると言ってからにしてくれ」
「アキトさんなら余裕で防御してくれると信じていましたので」
こいつ。
ああ言えばこう言うヤツだ。
ちっとも信じてる顔に見えないし。
「しかし、これでわかったな。もはや一刻の猶予もこの世界には残されていないってことが」
「そう、かもね……あっ! また地震よ!」
「大きいですね」
先程よりは揺れないものの、何か不気味な感じがする。
まるで平面の世界が、端から崩れ落ちて行くような。
このヴァースランド自体が縮んでしまったような、そんな不安感だ。
「早く邪神を倒さないとまずいわね……」
「ですが、未だに邪神の妨害が……」
「俺に任せろ」
「「!?」」
不敵に笑う俺に、目を丸くするフランとミリィであった。
ふっふっふ。
たまには一矢報いてやらんとな。




