第2話:初めての戦い、拾う者と捨てる者
この世界では、強さがすべてを決める。
奪う者は生き、奪われる者は消える。
それは裏路地であろうと、王城であろうと変わらない。
主人公はまだ弱い。
戦い方も知らなければ、力の使い方すら理解しきれていない。
だが一つだけ、確かなことがある。
彼は“捨てられたもの”を拾い、力に変える存在だということ。
――そしてこの世界では、弱者こそが真っ先に捨てられる。
これは、そんな世界で初めて“奪われる側から抗う側”へと踏み出す物語。
彼の最初の戦いが、今始まる。
路地裏に、乾いた足音が響いた。
「おいおい……なんだ、こんなとこにガキが転がってるぞ」
振り向いた瞬間、そこにいたのは三人の男だった。薄汚れた鎧に、粗雑な剣。目つきだけでわかる。まともな人間じゃない。
「……なんだよ、お前ら」
警戒しながら距離を取る。だが足はまだおぼつかない。さっき人になったばかりだ、まともに戦えるわけがない。
「その格好……新入りか?それとも奴隷落ちか?」
男の一人がニヤつきながら近づいてくる。
「まあいい。持ってるもん全部置いてけよ」
持ってるもん、なんてない。
あるのは、この身体と――
(廃棄吸収……)
さっきの力だけ。
「断ったら?」
強がりで言った言葉に、男たちは一瞬黙り――次の瞬間、笑い出した。
「ははっ、いいねぇ!じゃあちょっと痛い目見てもらおうか!」
剣が振り下ろされる。
反射的に後ろへ飛ぶ。だが遅い。肩が浅く切れ、熱い痛みが走った。
「ぐっ……!」
血が滲む。息が荒くなる。
勝てるわけがない。普通なら、ここで終わりだ。
だが――足元に、壊れたナイフが落ちていた。
(拾え)
直感が叫ぶ。
転がるようにそれへ手を伸ばす。
『スキル【廃棄吸収】を発動します』
ナイフが消える。
その瞬間、腕に力が流れ込んだ。
「……っ!」
さっきより、動ける。
「なんだぁ?今の?」
男が眉をひそめる。
その隙を逃さず、さらに地面に手をつく。割れた瓶の破片、錆びた金属片――触れるものすべてを吸収する。
熱が、力が、積み上がる。
「ふざけんな……!」
男が苛立ち、距離を詰めてくる。
剣が横薙ぎに振られる。
今度は、見える。
「遅い」
一歩踏み込み、男の懐へ入る。
そのまま拳を叩き込んだ。
「がっ……!?」
男の身体がくの字に折れ、吹き飛ぶ。
ありえない。さっきまでまともに立てなかったはずの俺が、人を殴り飛ばした。
「な、なんだコイツ……!」
残りの二人が後ずさる。
だが止まらない。
もう、わかっている。
「いらないんだろ?」
一歩、また一歩と近づく。
「なら――俺がもらう」
足元のゴミを、視界に入るものすべてを吸収しながら進む。
強くなるのがわかる。
積み上がるほどに。
「く、来るなァ!!」
男が剣を振りかぶる。
だがもう、怖くなかった。
振り下ろされる刃を、腕で弾く。
「なっ……!?」
そのまま体当たりで押し倒し、拳を叩き込む。
一発、二発、三発。
やがて動かなくなる。
静寂が戻る。
荒い息を吐きながら、立ち尽くす。
「……勝った、のか」
信じられない。だが事実だ。
視線を落とすと、男たちが持っていた剣や装備が転がっている。
もう、迷わなかった。
手を伸ばす。
『スキル【廃棄吸収】を発動します』
すべてが消える。
そして――
身体の奥に、今までとは比べ物にならない力が流れ込んできた。
「……これが、俺の戦い方か」
捨てられたものを喰らい、積み上げる。
それが、そのまま強さになる。
だったら――
この世界で一番強くなる方法は、決まっている。
遠くで、人の気配がした。
新しい“何か”が、また捨てられようとしている。
「次は……何を拾える?」
口元が自然と歪む。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
ついに主人公の初戦闘でした。
まだ完全に強いわけではありませんが、“拾うことで強くなる”という戦い方が少し見えてきた回になっています。
戦えば戦うほど、そして拾えば拾うほど強くなる。
その一方で、この力がどこまで通用するのか――それはまだ未知数です。
また、この世界では「捨てる側」と「捨てられる側」の差がはっきりしています。
今回の戦いは、その一端にすぎません。
そして次回、物語は新たな展開へ。
主人公が出会うのは――“捨てられかけた存在”。
この出会いが、彼の選択を大きく変えていきます。
引き続き読んでいただけると嬉しいです。




