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異世界に転生したと思うんだけど、貴族として正しい行いをしたら、完全なアウェイな学園生活を送ることになりました。  作者: ろんどんべると


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第38話 「夜風と、あのおませな男の子」

夜風が心地いい。


祝賀会の喧騒を背に、私はベランダでひとり空を見上げていた。


やっぱり、こういうポジション落ち着く。


ヒロインはスポットライトの中心。


私は壁。


うん、いつもの構図。


「……ここにいたのか」


聞き覚えのある声。


振り返ると、カイン殿下。


昔より背が伸びて、顔つきも凛々しくなった。


でも、目は――あの頃のまま。


「ぼっちタイム中です」


「堂々と言うな」


少し沈黙。


夜風が二人の間を通り抜ける。


「……覚えているか」


王子がぽつりと言った。


「何を?」


「5歳の頃のことだ」


ああ。


おませで。


いきなり勝負を挑んできて。


お風呂に乱入してきた。


最低で最高の男の子。


「裸見た責任とるって言った人のこと?」


王子、むせる。


「な、なぜそれを先に出す!?」


「一番インパクト強いから」


王子は額を押さえる。


「……あの時の少女が、お前だとは思わなかった」


「そっちは気づいてた?」


「気づいていた」


即答だった。


私は目を瞬く。


「え?」


「お茶会の日。隅で一人、紅茶を飲んでいただろう」


心臓が、少し跳ねた。


「……見てたの?」


「ああ」


「声、かけてくれなかったよね」


王子は視線を逸らす。


「当時の私は、皇太子だった。……加護を持たぬ者と親しくするな、と」


ああ。


やっぱり。


「命令だったの?」


「忠告だ。だが、私には逆らえなかった」


少し悔しそうな顔。


あのおませな男の子が。


少しだけ、大人になっている。


「……あの時、なぜ私を庇った」


王子の声が低くなる。


あの時。


魔族が、王子を狙った瞬間。


私は迷わなかった。


「約束したから」


「約束?」


「責任とるって」


王子、固まる。


「それは……」


「冗談だよ」


くすっと笑う。


「ただ、守りたかっただけ」


王子は、しばらく何も言わなかった。


やがて、小さく言う。


「……変わらないな」


「そっちもね。あのおませな男の子」


王子は苦笑する。


「今も、そう見えるか?」


「うん」


少しだけ、距離が縮まった夜だった。


だが――


王子の目には、まだ消えない疑問がある。


「お前は……本当に、何者だ」


私は、夜空を見上げる。


「光属性の、無能だよ」


それ以上は、言わない。

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