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第陸記  三柱と一人+PRN

第伍記を見て追加でこの話も見に来て頂きありがとうございます!

それでは、お楽しみ下さい!

「やべ、今日でイベント終わるからスマホゲー周回しとかないと」


 珍しく今日は友人からレインが大量にくる俺のスマホ。

 ゲームの周回を理由に無慈悲なフリックで一斉消去する俺。

 そして、完全に昼夜が逆転してしまった夜の太陽を枕に俺はポチポチし始める。

 俺も随分偉くなったものである。


「キラー……チョットエエカノー……」


 小声で手招く、招き狐のうーちゃん。

 俺はそれに応じて台所へエリア移動した。


「……どどどどどうしようかの煌! ウチはやってしもうたのじゃ!!」


 何やらただならぬ様子のうーちゃん。

 自慢の尻尾も地に伏している。


「うーちゃん何やらかしたの?」


「うむ……おばちゃまのプリンを食べてしもうた」


「よっちゃんが10個も作ってくれたんだから、1個くらい食べたってあーちゃんは怒んないでしょ」


 俺は笑って耳がシュンとなった頭を撫でる。

 いつもなら尻尾がフリフリなるのに今日はならない。

 とりあえず、現場確認で冷蔵庫に手をかけた。


 確かにこれは、大事なクライアントをドタキャンするくらい非常に不味い状況だ。

 冷蔵庫のプリンが消滅している。

 いや、正確には質量保存の法則で移動しているだけだが。

 うーちゃんの胃袋の中に。

 だが、俺は慌てない。


「大丈夫だうーちゃん。よっちゃんに至急作って貰おう」


「それはウチも考えたのじゃ。というかそれ見越して犯行に及んだのじゃ」


 どや顔の発言に、なんなんだこの確信犯と心の中で呆れる。

 肝心のよっちゃんは、そういえば土地神交流会に行く日だった。

 帰宅は夕方。

 あーちゃんが起きるかなんとも言えない時間だ。

 仮によっちゃんが帰って来れたとしても、プリン完成には到底間に合わない。


「うーちゃんよ、これは詰みだね」


 俺は哀れみの眼差しを向ける。


「頼むのじゃ! ウチはこのままじゃ本気で消されることになるやも知れんのじゃ!」


「いやいや、神様は基本的に死なないって前に言ってたじゃん」


「あくまで基本的じゃ。神の死は即ち消滅させられることにある故、おばちゃまが本気になったらウチなんて……」


 流石に本気で可哀想になってきた。

 悪いのは悪戯狐だが。


「おはよぉ、台所で何ごちゃごちゃ話してんのー?」


 最悪のタイミングだ。

 夜に上がる太陽が正午に上がってきた。


「よよよよっちゃんいないから、ご飯どうしようかなって話してたんだよ」


 しどろもどろにやっとひねり出した言葉は明らかに怪しさ満点の嘘だ。


「そうなんだぁ……。寝る前にプリン食べよ」


 一歩一歩接近するエネミーにうーちゃんの血の気が引くのを感じた。

 そして、ついに、冷蔵庫に手がかかった。


「ピンポーン! 注文の商品のお届けに参りましたー!」


「おお!! あたしのゲームがついに届いたのね!! 有能、有能」


 あーちゃんは荷物を受け取るとそのままねぐらへと姿を消した。

 危機一髪とはまさにこのこと台所にため息が2つ出た。


「うーちゃん、これは俺らで作るしかないな」


「作れるのかの……ウチらでも……」


「今はねネットの力があるからいけるのだよ!」


 1人と1柱は試行錯誤のぶっつけ本番で取り掛かった。

 そして夕方、緊張の一瞬である。

 結果は、惨敗。

 プリンが固まっていない。

 その絶望的な現場に再度日は昇る。


「いやぁ、ゲームしてたら寝落ちしてたわー。プリンプリン」


「おばちゃま……実はの……」


 うーちゃんの目つきが変わる。

 死にゆく戦場に立ち向かおうとする戦士の目だ。


「おばちゃまごめんなのじゃ! ウチがプリン全て食ってしもうたのじゃ!」


「は? それは色んな意味で覚悟の上やったんだよねぇ? ウカァ?」


 寝起きということもあり超不機嫌なあーちゃんの目は刃物のようだ。


「お詫びにウチらでプリンを作ったのじゃが、失敗してしもうて……本当にごめんなのじゃ!」


「ふーん。それ見せてよ」


 恐る恐るあーちゃんの前に、ごめんなさいの気持ちがいっぱいの失敗作を出す。

 その手は震えていた。


「何これ? 固まってないんですけど。ウケル」


 液状のプリンに苦笑のあーちゃん。

 これは俺からも許しを乞うたほうがいいと判断し口を開こうとした。

 しかし、俺はやめた。


「んっんっんっ……。カカカ! まぁ、たまにはいいんじゃない? 不完全なのもね。意外と美味しいじゃん飲むプリンも」


 それを飲み干したあーちゃんはニッと笑う。


「おばちゃま……なんでじゃ。なんで食べてくれたのじゃ……」


うーちゃんの目のプールは決壊寸前だ。


「だって、形はどうあれ、あたしのために作ってくれたことに変わりはないんだからね。一応可愛い姪っ子が頑張ってくれたんだから……ソンナノムゲニデキナイワヨ」


 あーちゃんは最後、早口でボソボソっと言うと振り返った。

 大きな照れが背中から伝わる。


「おばぢゃまああああああああ!!」


 そんな背中に目の関を切り落として抱きつき泣きじゃくるうーちゃん。

 まさに太陽。

 その光景に俺も目に熱いものを感じずにはいられなかった。


「豊受ただいま戻りましたー!」


 よっちゃんはこの謎の光景に立ち尽くす。

 何が起こってるか理解できていないようだ。

 それはそうだろう。

 逆の立場なら俺も理解できない。


 日輪が不安と嬉しい気持ちでいっぱいの白狐を優しく包み込んでいる間に、俺は事の経緯をよっちゃんに説明する。


「うー様、やはりやってしまいましたか」


 まるでうーちゃんが食べると予期していた発言である。

 そしてよっちゃんは続ける。


「多分つまみ食いしてうー様が困ることになるので、冷凍庫の冷凍プリンをあー様に出して下さいってレインに入れておきましたよね? 私。既読ついてませんけど」


「へ?」

 

 慌ててスマホのレインをチェック。

 確かに来ていた。

 何故気付かなかったんだ俺。


「あ……。」


 1つ心当たりがあった。

 スマホゲーに夢中になっている時にたまたま友人からレインが大量に来て、めんどくさくてフリックで消したんだった。

 その中によっちゃんのが紛れ込んでて気づかなかったみたいだ。

 うん、よっちゃんのゴミを見るような視線が痛い。


「うーちゃん! あったわプリン!」


 やけくそに冷凍庫を開ける。

 そこにはキンキンに冷えた黄色のあいつが待っていた。

 うーちゃんは瞬時に泣き止むと同時にいかつい顔になる。


「煌が、はようそれに気づけばこんな気苦労せずに済んだのにどうしてくれのじゃ!」


 見事なまでの逆切れのうーちゃん。

 さっきの俺の涙を返せと心で呟く。


「まぁまぁ、皆様夕飯に致しましょう。ここに居られると作業ができないのでゲームでもなさっていて下さい」


 よっちゃんが夕飯の支度をしている間に1人と2柱はクマブラをすることになった。

 2柱から俺への一方的な攻撃を真摯に、そう真摯に受け止めた。


 夕飯ができたみたいなのでみんなでエリア移動。

 今日もみんなで和気あいあい食べた。


「みんな聞いてくんない?」


 食事の最中にあーちゃんが切り出す。


「あたし、Gチューバーになるわ。」


一同、目が点。

ついに言い出したよこの子はと、頭を抱える俺であった。


「それと煌様、プリンは蒸さないと固まりませんよ」


「え……あ、ホントだ。書いてあった」


――三柱と一人の相性がさらに深まった!――

最後までご覧になって頂きありがとうございました!

また、次回もよろしくお願いします!

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