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第伍記  三柱と一人

第肆記を見て追加でこの話も見に来て頂きありがとうございます!

それでは、お楽しみ下さい!

 豊受大神ことよっちゃんが鎮座されてからはや3ヶ月。

 人の暮らしにも大分慣れてきたみたいで一安心だ。


 よっちゃんが来てからというもの、生活に劇的変化が訪れた。

 まず……食費がほぼ0。

 豊穣神の名は伊達ではないので基本的に加工食品でなければ、何でも神通力で出せるのだ。

 後は、家事は全て担当してくれている。

 流石に気の引ける部分もあるが、本人がやる気なのでお言葉に甘えさせて頂いている。


 よっちゃんも見た目とは裏腹にゲームが好きだ。

 様々なゲームをやらせた結果、よっちゃんの得意分野が分かってきた。

 ズバリ、よっちゃんは防衛の天才である。

 本人がこれは防衛だと認識したその瞬間から鬼神の如き強さを得るのだ。


「うーん、ドラムの超人の神モードこれぜーったいパーフェクトドカポン取れないというか取らせる気ないでしょ。ウカはいけそう?」


「おばちゃま、そもそもウチはノルマすらギリギリじゃ。こんなの出来るなんて人間じゃないのじゃ」


 全ての曲をパーフェクトドカポンに出来なくて陰る太陽と頬袋がパンパンの白狐である。

 あんたらそもそも人間じゃねぇだろと、心の中で突っ込む俺。


「あ、そうだ。トヨ! あんたがやりなさい」


「え、ああ、はい」


 ろくにリズムゲーすらやったことのないよっちゃんに無理やりバトンを渡すあーちゃん。

 結果はやったことがないのだから勿論ノルマにすら及ばない。


「はぁ……このゲームに手を出すんじゃ無かったわ。完全にクリアできないとモヤモヤするじゃない! もう! こんなんクソゲーよ!」


 ついには、かんしゃくを起こすあーちゃん。

 完璧じゃないことが余程嫌なのだろう。


「煌! 人間してるならあんたが責任とりなさい!」


 怒りの矛先はついに俺に向かう。


「流石にこのゲームだと俺もあーちゃんの笑顔は守れないなぁ。てか、現にあーちゃんのほうが俺より上手いし」


「守る……ですか。あー様、もう一度チャンスを頂けませんか?」


「まぁ、いいわ。どうせ無理だし。トヨやって」


 この時誰もがお前にゃ無理と、そう確信していた。

 初心者なら難易度『超手間』ですらパーフェクトドカポンが怪しいのにその上の『神モード』なのだからそりゃ皆の予想は残酷なものになるだろう。


「料理を作るときのように律動的に流れを掴みます」


 と言うと、よっちゃんは一曲分を何もせずただ首を振ってリズムを取って見送った。

 一同は何やってんのか状態。


「後は、あー様。曲が始まり次第、私に守れと命じて下さい」


 よっちゃんは太陽を陰らせるその憎い曲を選択。

 前奏が始まった。


「トヨー、マモッテー」


 感情の入らないというか、入れる気もない態度で言葉を投げるあーちゃん。

 無理と確信していてどうして本気で懇願しなきゃいけないのか、というオーラがにじみ出ている。


 タカタカタカタン! ドンジャカバンジャン! ダダダダダダダン!


 皆それぞれ自由にしていた頭が画面に勢揃いする。

 オート演奏機能でも使っていると錯覚するくらいの精度で手際よく処理していくよっちゃん。

 そして、ついに念願の瞬間。


「パーフェクトドカポンだポン!」


 の声と共に画面から完全に白旗を振るドラムマスター。

 いったい日本全国何人がこの情けないドラムマスターの面を拝めたのかは分からないが今俺は貴重な瞬間に出会えていると感動している。


「トヨ! あんたマジ有能じゃないの! 流石はあたしの世話役ね」


 さっきまでの態度に手のひら返しを決めてよっちゃんに抱きつくあーちゃんである。

 よっちゃん本人は嬉しそうだからまぁ、いいけど、完全に利用されているようにしか思えない絵面だ。


「よっちゃん……人間じゃないのじゃ……」


 うーちゃんは畏怖の念を覚えたようだ。

 大丈夫、人間じゃないから神だからとまたしても心の中で突っ込む俺である。

 その後、残りの神モードも全てよっちゃんがこなして無事に完全クリアを果たしたのであった。


 防衛のプロたるよっちゃんが加わったことでさらに強さに磨きがかかったゲームはもちろんFPSゲーだ。

 中でも旗取りゲーム……お互いのチームに1本ずつと両チームの中間地点にある1本3つの旗を奪い合う戦いに関しては俺らのチームが最強だと自負している。


「ウチがバチコリ狩り尽くしてやるのじゃ!」


 自分の陣地からサブマシンガンを片手に一気に中間地点まで駆けるうーちゃん。

 

「待ち伏せしてるやつは既にキル済みよ」


 その様子を高台からスナイパーで目を光らせるあーちゃん。

 まるで、戦場を疾駆する白狐にキルという名の後光が差しているようだ。


 ちなみに俺の役割は工作員。

 敵に感付かれないように敵陣地に入り奇襲をかけて混乱させ、あわよくば敵の旗も取ることが仕事である。

 基本的には奇襲をかけた段階で蜂の巣確定だからあまり良い活躍が出来ているわけではないが、その一瞬の隙を頼れるチームメイトが待っているので俺は喜んで犠牲になっている。


 ただ、あーちゃんとうーちゃんでも処理しきれずに自軍まで進軍してくる強敵もいる。

 そんな最後の砦がよっちゃんである。

 FPSにおけるよっちゃんの防衛率は120%。

 弾丸の装填数の多いライトマシンガンを使用して装填時の隙を減らす作戦だ。


「ふふ、ようこそ。あなた方に私を殺れるか、しかと拝見させて頂きましょう!」


 防衛時のよっちゃんの反応速度たるやチーム最強。

 挟み撃ちにあっても障害物を駆使して迅速に対応していくその姿はまさに守護神だ。

 中には爆弾やロケットランチャーを撃ち込んでくる輩もいるが、空中で撃ち落とすその様は圧巻である。


 長距離火力重視のあーちゃん。

 近距離戦略立案のうーちゃん。

 座する絶対守護のよっちゃん。


 お互いに役割が明確で非常にバランスのとれている組み合わせだと、共に戦う俺は考える。

 そこに俺を加えるなら犠牲の影の煌とでも言っておこうか。

 今回の試合も無事に勝てるとそう確信していた。


「あ、夕食の支度をする時間ですので私は落ちますね」


 よっちゃんのアバターがまるで何事も無かったのように戦場から消える。


「ちょ、トヨ! ダメダメ今そっちに人行ったから!」


「そうじゃそうじゃ! ウチも手一杯しとるのじゃ!!」


「あー様、遊戯も大切ですが今夕飯を作る準備をしなければどんどん遅れてしまいますので失礼します」


「あーもう! 融通効かないんだから! 煌、早く戻って!」


「え、既にお亡くなりなんだが俺」


「どいつもこいつも! ……って後ろからナイフで切り殺されたじゃないの!」


「どうせウチが言った通りに罠仕掛けてないんじゃろ? 1つ目はフェイクで2つ目で何とかするようと、あれほど言っておったのに……痴呆でも始まったのかの?」


「もうそれでもいいから何とかしなさいよ! これ負けたら連勝記録途絶えるのよ? ウカ分かってる?」


「心配せんでも残り4人くらいウチがなんとか……」


 時、既に遅し。

 気付いたら四面楚歌の状況に立ち尽くすうーちゃん。

 敵から降伏勧告のメッセージが届く。


「そんなの無視して最期まであがくのよ!」


「無理じゃ……4人同時ではそもそも弾薬が足りぬ……」


「……降伏するの?」


「それも嫌じゃ。故に、かくなる上は……己の命くらい己で蹴りぐらいつけられるのじゃ! それが漢ってもんなのじゃ!」


 言い忘れたが、うーちゃんのアバターは男である。

 それも屈強なガタイの良いまさに漢みたいなキャラだ。


「うーちゃん、あんた女の子だからね! 漢じゃないからね!」


「ウチの死に場所はここに決めたのじゃ!」


 突っ込み虚しく、うーちゃんは爆弾で映画の主人公のようにカッコよく自刃。

 50連勝一歩手前で連勝記録に幕を下ろした。


 あーちゃんとうーちゃんが小競り合いをするのを、いつものように眺める俺とそれをよそ目にせっせと夕飯の支度をするよっちゃん。

 あぁ、今日も平和だなぁと伸び伸びと生を実感するのであった。


 1つ気掛かりがあるとしたら、神様は戦いが好きなのかもしれない。普段は大人しそうなよっちゃんでさえ、戦いの時は人が変わったように目がギラギラしている。

 もちろん、あーちゃんとうーちゃんもそうだが。


 俺のフラグ回収率は高い自信がある。

 が、全てはゲームの世界なのだからと安心する俺であった。


「皆様、ご飯できましたよー」


 皆で囲む晩餐はいつも通りの……そう何気無い日常だった。


――3柱と1人の絆が深まった!――

最後までご覧になって頂きありがとうございました!

また、次回もよろしくお願いします!

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