第2-36話 塩と砂糖
十六夜鳳至の身体は吹き飛ばされ彼の身体は地面へと大きく激突する。
十六夜鳳至「う、ぐっ、あぁ…」
十六夜からかすかなうめき声が漏れ出ており、依東と佐塚は何が起きたのかまだ分からないままでいた。
依東光木「どういうことですか?」
我殺狂助「あとで説明する。それより、まずはこいつを拘束するところからだ。」
不可抹の存在であり、傷つけることができないはずの十六夜を一時的にダウンさせ、我殺たちは十六夜を武召喚で生成させた縄を柱にくくりつけることで拘束させることに成功した。
我殺狂助「武召喚数値で縄は強化されているからこれをほどくことはまぁ無理だろう。」
クリエーションの種性核を持つ参加者に縄を生成させることで簡単にほどけないよう縄の強化を可能にした。それを見て依東は少しだけ我殺が起こしたあの現象を理解する。
我殺狂助「さて、まず順を追って説明するか。」
我殺は依東と佐塚に自身の言動と行動、そして引き起こした現象について説明し始めた。
我殺狂助「俺は最初に十六夜を見て思ったのはこいつはこの場の誰よりも強く、傷つけることができないから束で戦おうが全員で戦おうが勝ち目はない。そう思った。だからまず気絶させる、戦闘不能の状況に追い詰めることをゴールにした。」
依東光木「そのゴールがクラインドによる衝撃ってことですか?」
我殺狂助「あぁ、前に戦った不可抹のものもそうだった。やつらは怪我しないだけで押すことも掴むこともできる。ボールをぶつけたら怪我はしていなかったが吹っ飛ばすことはできた。そのボールの何十倍もの衝撃を与えればダウンさせられる。」
我殺の作戦のゴールがクラインドを当てることと説明され佐塚も段々と行動の意図を読み始めていく。
佐塚詩音「あの八人だけ撤退しなかったのは我殺さんが確実にクラインドを当てるための目眩ましのようなものであの八人の中にはワープを使えるクリエーションがいた…」
我殺狂助「結構わかってんじゃねえか。丸々その通りだよ。」
依東光木「でも、それをやることって物理的に不可能な気が?」
そんな依東の疑問に我殺はわざとらしく尋ねる。
我殺狂助「というと?」
依東光木「数百人の参加者が十六夜に向かったのは我殺さんの位置が知られないため。撤退する際、八人の参加者が残ったのは我殺さんが上空から確実にクラインドを当てるため。ですが、それをするには十六夜に向かっていった数百人、クリエーションたち八人の事前の打ち合わせが必要ですよね。その打ち合わせに使える時間は僕らだけで十六夜を相手していた時間。でも僕らだけで時間を稼いだのは精々数分。数分で数百人に意図を伝えるなんて無理があるでしょう。」
我殺狂助「そこまで分かってんなら答えはもう近いけどな。」
なぜ答えが分からないんだといいたげなキョトン顔で無意識な喧嘩の売却が始まったが、我殺はその依東の疑問に一言だけヒントを授けた。
我殺狂助「俺はクラッシャーとアナリストの種性核者を一人ずつ集めたよな。あれはなぜだと思う?」
依東と佐塚はその質問に熟考し、たっぷり数十秒。先に答えにたどり着いたのは佐塚だった。
佐塚詩音「いや、もしかしたら?でも、できるの?そんなこと?」
確信が湧かない様子でひらめいており、事実佐塚の考えたそれが我殺の行動の意図だった。
我殺狂助「まぁ、これは賭けに近かった。答えを言おう。俺はあのときアナリストを強化するために二人を呼んだ。」
依東光木「強化??」
まだ答えにたどり着いていない依東に説明を修飾する。
我殺狂助「アナリストはものに触れるとその対象の情報を解析、回収することができる。まぁテレパシーとか心を読むことができるわけだ。俺はアナリストのそれができる範囲を広げ、対象に触れずにテレパシーができるようにした。一時的にだけどな。」
依東光木「種性核の強化…?」
我殺狂助「お前らエスケープが最後の一人になると種核醒するみたいにアナリストにもそんな覚醒を促せないか考えた。その覚醒の感覚とかコツを練習させるために俺とクラッシャーの馬銜何に協力させたんだ。」
~作戦会議のとき~
我殺狂助「アナリストのお前には対象に触れずにある程度の範囲にいる人間にテレパシーを送ることができるようになってもらう。」
馬銜何桺「は?お前、何言って。」
我殺狂助「俺たちが武召喚で身体の機能を底上げしているように、種性核にもその機能の底上げができるはずだ。エスケープや俺たちのクラインドと同じように。」
満田地衣「ど、どうやって??」
我殺狂助「俺たちクラッシャーはクラインドの経験がある。その経験を思い起こしながらテレパシーでお前にそのときの心情や感覚をできる限り伝える。その伝えられた感覚を頼りにしながら少しずつアナリストの力を強化していってくれ。馬銜何はできる限りクラッシャーを呼んでくれ。クラインドの経験がないものがいるならそいつは除外だ。」
馬銜何桺「それ、本当にできるのか?」
そんな不安と疑いを持ちながらも我殺、馬銜何、満田、そして集められたクラッシャーらは我殺の指示に従い、満田は種性核の強化に対する着想と感覚を徐々に取得していった。それを取得した満田は走り出し、十六夜から距離を離していた数百人の参加者にテレパシーを送り、一斉に打ち合わせを行った。
我殺狂助「ここまでが一連のカラクリだ。まぁ、犠牲ゼロとはいかなかったが、あいつらのおかげでこいの動きは封じ込めた。」
依東光木「ほんの短時間でそれを思いついたんですか?」
一連の流れを聞かされた依東と佐塚は我殺の尋常じゃない頭の回転の速さと優れた状況の判断能力に畏れを抱く。
馬銜何桺「でもまだ油断できねぇ。そうだろ?」
驚いている二人をよそに馬銜何が我殺へ近づいて行く。馬銜何のいう通り戦いはまだ終わっていない。
我殺狂助「あぁ。恐らくオーナーという男と伊美という女がここへ向かってくる。」
馬銜何桺「ん?なんでそんなことがわかる?」
白崎や柳原を倒すために新たに作戦を立てるのかと思った馬銜何は唐突な敵の援軍宣告を告げられ頭が一瞬固まる。
我殺狂助「俺の時計にはbの会場にいたやつらと連絡がとれるようになっている。さっきbにいる伍代という人間から今からaへ向かうと報告された。」
馬銜何桺「我殺さんと同じ失格者が?」
依東光木「でもオーナーとか伊美という人とはまた別の方ですよね?」
依東や馬銜何は不可抹のものがいるという事実は知っていてもその具体的な名前や顔は知らない。それはaにいた我殺も同じなはず。それなのになぜ具体的な不可抹なものの存在の接近を予期したのかふたりは興味と関心を我殺に向けていた。
我殺狂助「仲間に聞いたからだ。」
依東光木「仲間…?」
我殺狂助「ここに来る前のな…。」
そう言いながら我殺の口角はわずかに上がっていた。我殺が十六夜に気絶させられて運ばれる前のあのときに我殺は七次からの仲間から聞いていたのだ。もう名前を思い出すことも顔も声も次第にはそいつといた記憶さえも思い出すことのできなくなつまてしまったあの悪魔の仲間が。
悪魔「オーナーや伊美という女がbにいます。いずれはaに来る可能性もある。注意してください。」
彼女が消える間際、耳元でその情報を伝え消滅した。
我殺狂助「もちろん、急に消えた心音表魅や向こうにいる白崎と柳原も無視はできない。だが、いずれ不可抹のものに援軍が来るってことを覚えておけ。」
依東光木「わ、わかりました!!」
オーナー「何が分かったって??」
依東光木「…え?」
その刹那、依東の背後にメガネをかけた青年が存在していた。彼の右手には当然の如く、巨剣が握りられている。その巨剣の軌道は依東の首に向かっていった。
佐塚詩音「危ない!!」
だが、首を斬られたのは依東ではなくもう一人の少女だった。
佐塚詩音 失格
我殺狂助「はっ!?ロストブレイク!!」
オーナーが佐塚の首を切るまで我殺や馬銜何や周りの参加者はオーナーの存在を確認することさえできなかった。ようやくオーナーを見つけた我殺は慌ててかつできるだけ長く戦闘が続かないよう迷わずクラインドを放つ。我殺が消費した二十個分の数値の光線はオーナーに当たりその衝撃である程度のダメージが入る、はずだった。
オーナー「まぁ、悪くはねえな。あの伍代というやつと似ている。」
オーナーは平気そうで調子を崩さず、無傷な様子を見せていた。オーナーは我殺を少しだけ見つめたのちメガネを上にずらし、辺りを見渡す。周りの参加者は恐怖でたしかな恐怖を示す。
オーナー「うーーーん、、」
一分ほどしてオーナーは結論を出した。
オーナー「みる目なし。」
そういってオーナーは近くにいた参加者十五人を失格にさせる。
我殺狂助「ちっ、お前ら逃げろ!!」
十六夜のときとは違い、勝ち目がない。そう判断した我殺は全参加者に逃亡を命令した。ほとんどの参加者は悲鳴をあげて逃げ回るもそれを易々と逃がすオーナーでなない。二分後、オーナーはいつの間にか四百人もの参加者を失格に追い込んでいた。
馬銜何桺「おい、我殺!何人かは立ち向かわないと全滅するぞ。」
我殺狂助「わかってる。だが、お前はやってくれるのか?」
チャラついた金髪の青年に戦闘の意思を尋ねるもどうやらそれは愚問のようだった。
馬銜何桺「あんだけ好き放題にされんのは気に食わねぇ。潰す。」
確かな殺意を見せ猫の手も借りたい状況であったため我殺は馬銜何とともにオーナーに立ち向かおうとしていた。だが、
依東光木「俺も行きます。」
依東も声を張り上げ、主張する。彼の雰囲気はさっきまでとはまるで違っていた。
我殺狂助「種核醒したのか。かといって勝てる保証はないぞ。」
依東光木「うるせぇよ。一発ぶん殴らないと気が済まないんです。」
冷静を欠いた依東は種核醒の力を存分に活かしてオーナーを倒すつもりでいた。
我殺狂助「だが、まだ足りない。三人で勝てるほど甘くはない。」
馬銜何桺「じゃあ、どうするんってんだ?」
歯がゆい現実を突きつけられその対処法を尋ねるも我殺にもこのオーナーに対する対策や作戦は浮かばなかった。そのときだった。
伍代翔地「彼の強さは規格外です。勝つことを目標にしてはいけません。」
依東光木「あなたは?」
我殺狂助「…フッ、、やっと来たか。」
我殺たちのもとに現れたのはbの会場にいた失格者たちだった。
木崎印「だが俺たちの記憶を抜き取ったのはあいつだ。それは取り返さなきゃな。」
伍代と木崎はそれぞれ武召喚を行い、両手に刀と剣を握る。
木崎印「戦うメンバーはこの五人。指示を出すのは幸奪戦争の経験が豊富な我殺と伍代。異議は?」
突如として現れた謎の二人。そのうちの金髪の青年が仕切りだし、異議を尋ねるもそれを申し立てるものは一人もいなかった。全員が無言で頷き、全員が戦闘体制を整える。木崎は我殺の頭に触れてbで起きたことをテレパシーで伝える。そして全員が戦闘体制を整えたとき、我殺が声を張り上げた。
我殺狂助「十六夜の次はオーナーだ!!明確な勝ち方はない。だがこれだけは守れ。消えるな!!」
その声に四人は響くように返事した。
ゲーム開始から一日
残り参加者3000人




