第2-32話 味方の見方
我殺狂助「次から次へとわんこそばみたいに刺客送り込んできやがって。」
心音表魅「いやー、まさか白崎だけじゃなく柳原も倒すとは。」
そう素直に褒め称えながら視線を我殺が引きずっていた少年に目を向ける。それは柳原敬太であった。
心音表魅「傷つけられないが、衝撃を加えることはできる。それに気付いて何か重いものを頭にぶつけさせ気絶させた。こんなところか?」
我殺が不可抹の存在である少年を気絶させた方法を推理しながら徐々に彼に近づいてゆく。一歩一歩、異質さを濃くしながら。我殺もこの女の異質さを実感しながらも調子は変わらずに尋ねる。
我殺狂助「桐生や坂縞は気絶で済ました。だがおれの場合はそうじゃない。この2人と俺に何の違いが?」
我殺は桐生と坂縞は眠らされ、自分は右足を剣で刺されたことに違和感を持った。同じ失格者のはずなのに明らかに自分だけ抹消するつもりで攻撃している。なぜ2人は生け捕りで自分は違うのか、この2人と自分の違いについて尋ねるも返答は思いの外、あっさりしていた。
心音表魅「知らん」
我殺狂助「は?」
呆れたような顔で見つめるもどうやら本当に説明できないらしい。なぜ桐生と坂縞は生け捕りにしないといけないのか本当に知らないのだ。
心音表魅「監視者の命令でこの2人は生け捕りとなっている。だが、君のことだけはなぜか始末されているように言われているんだ。」
我殺狂助「わかった、質問を変える。今お前らのグループ、いや、この幸奪戦争はどんな状況なんだ?」
心音表魅「いや、答えるわけ…」
そう言おうとした瞬間、心音表魅の左足に剣が突き刺さった。それは心音表魅が我殺に刺した剣だった。我殺が一瞬のうちにためらいもなく剣を突き刺したことに心音はたしかな驚嘆を感じる
我殺狂助「答えろ。今、最高にいい気分なんだ。機嫌が良すぎてクラインドを撃つかもしれない。」
我殺の目を見て心音は観念したかのように一度目を閉じてうつむき、質問に答えることにした。その目は何の迷いもなく覚悟と執着に包まれた人としての心が半ば崩壊したような目をしていた。希望と虚ろと負の感情が無作為に入り乱り、本人でさえ感情の整理がついていない、何をしてもおかしくない、彼の目だけでそれが訴えられていた。
心音表魅「…いいだろう。ただし条件がある。この質問に答えたら、私たちは戦闘を開始するだろう。その際、仮に君が逃げきることができたとしてもこの2人を連れ去ることは認めない。それが条件だ。」
我殺は少し黙り込み、桐生と坂縞を連れ去ったあとに生じるリスクを考えた結果、その心音の条件に渋々応じた。その応じとともに心音から質問の答えが長々と話される。
心音表魅「どこから話そうか。まぁ、まず神楽士郎について話そうか。彼はずっと前からこの八次の状況を作り出すために画策してきた。私や柳原は神楽士郎の雇われの身で私たちは半分現界の人間であるため冥界の人間が私たちに傷をつけることはできない。生死をさ迷っているものと思ってくれればいい。」
我殺狂助「神楽士郎は具体的にどんな行動をとっていた?」
心音表魅「オーナーにきいた話だと悪魔を利用する、極楽の人間や獄人、いろんな立場の冥界の人間を利用していたらしい。」
悪魔を利用するという謎の単語はひとまず置いておくことに、我殺は質問を重ねた。
我殺狂助「何が目的かは知らない、と?」
心音表魅「あぁ、別に心当たりがないわけじゃないが、その心当たりが当たっていたとして、何の意味があるのか私には解らない。」
我殺狂助「神楽士郎がこの八次のために動いたと言ったな。それは5000人もの参加者、参加者が全く減らなかった現象、それ以外にもあるのか?」
心音表魅「うーんそうだなー。あとは種性核にもこだわっていたように思える。」
我殺狂助「種性核?」
ここまでの会話を経て、新たな情報をようやく手にする。心音は続けて語る。
心音表魅「君たちエスケープには誰一人会っていないだろ。」
我殺狂助「まぁいわれてみれば…」
心音表魅「この八次が始まる際、私たち不可抹のものは神楽に頼まれた。その頼みごとはできる限り獄人を幸奪戦争に参加させること、邪魔者の排除、そしてaの会場に行くものだけに与えられたエスケープとスレイブリー、アナリストの集中捕獲。私たちは退屈しのぎに戦いがしたかっただけだから、この頼みごとに応じた。」
心音の言葉に我殺は頭を悩ます。その言葉に嘘は感じられず、神楽士郎の狙いを我殺は推理する。しかし、神楽の行動に我殺は理解が追い付かなかった。
我殺狂助(アナリストやスレイブリーを引き入れたいのはまだ分かる。この二つは強力な種性核だ。アナリストの解析能力やスレイブリーの強制的な味方を増やす力、この力を俺たちから奪えば当然向こうの有利は揺るがない。問題はエスケープだ。種核醒が狙いなんだとしたら、とっくにエスケープは一人にされている。そしてそのエスケープは神楽やスレイブリー辺りに命令されて俺たちを排除しに来るはずだ。そうしてこないってことはエスケープはまだ複数いる。なぜ複数生け捕りに?いや、そもそもそれは今に限った話じゃなかった。なぜあいつは人数にこだわっている?)
そんな疑問が浮かぶなか、我殺は今の質問すれば答えが得られるというこの状況を逃がそうとせず、質問を続ける。
我殺狂助「質問を変える。この幸奪戦争、いっときは全く失格者が出ずに膠着状態が続いたが、今は減り続けている。それは退屈しのぎが目的のお前らの仕業か?」
心音表魅「まぁ大体はそうだな。私と柳原、そして白崎、あとは十六夜鳳至という男。特に十六夜という男が参加者の減少の主な原因だ。」
我殺狂助「また知らないやつ出してきやがって。」
重要人物であることはすぐに勘づき、その男について詳細を聞こうとしたそのときだった。
村重飯嶌「十六夜鳳至…?」
我殺狂助「お前、、いつから聞いていた?」
柱に身を潜め、我殺と心音の会話を聞いていた村重は十六夜鳳至という名前をきいたことでなぜか姿を現した。
村重飯嶌「すみません、盗み聞きするつもりはなかったんですけど。」
村重は我殺が質問を始めた辺りからきいていたことを説明したのち、心音に質問した。
村重飯嶌「なぁ、鳳至がここにいるのか?どこにいるんだ?頼む、、教えてくれ。」
あまりの動揺具合と必死さから我殺も十六夜という男と村重の関係性に興味を持つ。村重と同様に心音からの答えを待っていたが、
心音表魅「残念だが私も知らない。それに、そろそろ時間切れだ。」
その言葉とともに心音は武召喚を行う。彼女の右手には剣が投影され、徐々に我殺と村重に近づいて行く。
村重飯嶌「僕が囮になります。なので我殺さんは…」
我殺狂助「いいや、悪いが逃げるぞ。」
そういって我殺は村重を抱え逃亡を始める。突如として身体が宙に浮き向かいたい方向と逆へ後進している現象に怒りと驚愕が顕になる。
村重飯嶌「ちょ、、何考えてんだ!!」
村重にはどうしても我殺の行動が桐生と坂縞を見捨てる行動に見えてしまうため、我殺に対して罵声を浴びせ始める。我殺は一切耳を貸さず、迫り来る心音からの剣の投擲をいなし続け徐々に距離を離していく。
心音表魅「やはり、流石だな。」
そんな我殺の技術に少し感心し、これ以上の攻撃は無駄だと判断し見逃そうとするが、
村重飯嶌「はな、、せ!!」
我殺狂助「!?」
村重飯嶌「ファースト!!」
その瞬間、村重は右手に剣を投影させ、その剣を我殺に向かって切り裂こうとした。我殺はすんでのところで後ろにジャンプし剣の軌道から身体を逃がすことに成功する。しかし、我殺が追いかけようとしたときにはもう村重は心音のもとまですでに向かっており、我殺は村重を助けるか否か少し悩んでしまった。
心音表魅「バカなのかお前は。なぜわざわざ戻ってきた。」
村重飯嶌「桐生さんを置いていけるわけがねえからだよ。」
村重は剣を構え、心音のもとへ走り出す。そんな足取りをあるものが阻止した。
我殺狂助「悪いが堪えてくれ。あの2人は消えはしない。」
そう言いながら我殺は村重の腹を殴り気絶させる。
我殺は村重を抱え退散しようとする。心音にはもう我殺を見逃すつもりでいたため攻撃の手はなかった。我殺は少しだけ笑い、心音に背をむけ出ようとしたとき心音は一つだけあることを口にした。
心音表魅「最後に一つだけ。十六夜は村重、柳原は伍代、白崎はかつての七次の参加者、偶然にしては出来すぎている。」
我殺狂助「…お前はどっちの味方なんだ?」
心音表魅「どちらでもない。言ったろ。退屈しのぎだと。私たちはこの戦争が盛り上がればそれでいい。」
その答えに我殺は納得し、姿を消した。
~それから数時間後~ 現在へ至る。
我殺狂助「んっ、、んっ」
頭がなぜかぼんやりとしていた。その違和感にまだ気付かず手足を動かそうとする。しかし、動かない。ここでようやく違和感に気付く。自身がなぜか柱へくくりつけられ拘束されていることに。視界の正面には桐生も縛られており、右を見れば坂縞も村重も気を失った状態で捕まっていた。
我殺狂助「どういうことだ?」
訳がわからず、辺りを見渡すと一人のボスらしき男がドラム缶の上に腰を下ろしていた。
十六夜鳳至「やっと目覚ましたか。」
その男の足元にはボコボコにされた白崎、柳原の姿があり、心音の姿はなかった。
我殺狂助「何だお前?」
十六夜鳳至「我殺狂助。幸奪戦争に参加するのは今回が三回目。持っている種性核はクラッシャー、ロストイーブンと何か。aの会場で一番厄介らしいな。」
淡々と自身についてのプロフィールを述べられながら足で白崎の傷口を擦っている姿に嫌悪感を抱きながら我殺は問う。
我殺狂助「お前、十六夜鳳至だな。なぜ俺たちを拘束する?」
十六夜鳳至「質問が多いな。神楽に命令されたから仕方なく生け捕りにしてんだよ。ったく、めんどくせぇ。」
小言を漏らしながら誰かを待っている様子の十六夜。それからすぐに彼はやってきた。他のものとは明らかに違う。奏でる足音、身に纏う服、背丈や肉体、その全てが他のもとのは逸脱した彼は我殺のもとまで近づきしゃがみこみ、自己紹介を始める。
神楽士郎「初めましてかな。私は神楽士郎。君に伝えたいことがあってここへきた。」
目の前には監視者である神楽士郎、この状況におけるすべての元凶が目の前にいた。神楽は自身の手を我殺狂助の右手に触れ、我殺の頭の中に情報を送り込む。
神楽士郎(どうだい?今流している情報からして私が神楽士郎であることに間違いはないだろ?)
我殺狂助(あぁ、確かにな。)
神楽士郎はアナリストの種性核を持っているらしくテレパシーを通じて我殺に話しかける。
神楽士郎(今から私のアジトに一緒にきて欲しい。そうすれば君や仲間に危害は加えない。)
我殺狂助(…味方面で話しかけてくるのはウザイが、拒否権はないか。)
そうあきらめたかのように了承し、神楽は我殺の拘束をほどく。十六夜は抗議しようとしたが、神楽の目線にやられ何も言わなかった。我殺は神楽に連れて行かれるがまま歩き続ける。
我殺狂助(十六夜の反応からしてこれから向かう先は本当にアジトなんだろうな。しかし、何が目的だ?)
そんな思考を重ねながらやがてアジトへ辿り着く。するとそこは大量の参加者で賑わっていた。
神楽士郎「我殺狂助、先に言っておこう。」
我殺狂助「あ?」
神楽士郎「このままでは冥界は才原祐一と榎宮優によって滅ぼされる。」
ゲーム開始から22時間
残り参加者3800人




