第9場 決裂
季節は巡り、秋。
しばらくは小康状態を保っていた武断派と文治派だが、ここにきて不穏な空気が満ち始めていた。家臣達の考えの違いは表面化し、些細な政の判断ひとつで互いに嫌味を投げ合うようになる。
「まるで馬鹿のひとつ覚えのように、武力を持って国を統治するなど…今はもうそのような事を言ってる場合ではない。」と文治派が言えば、
「そもそも、武力を持って領土拡大を目指さぬからこの様な事になっているのだ。」と武断派が吠える。
お互いこの現状の原因を作ったのは そちらだと言わんばかり。
当の君主 大内義隆は耳は傾けるが、姿勢は変わることはなかった。
「殿…この周防の国、周りを尼子氏、そしてわれら大内氏の傘下ではあるが、何かと不気味な動きのある毛利氏が隣接しており、その動きには注意が必要です。」
「ふん。」
「どうか、相良武任等、文治派を排斥し軍事力を強化して宿敵尼子氏に討って出ましょう。」
陶 隆房始め今まで数々の戦を戦ってきた武将が
義隆に進言する。
「ん?」今まで興味なさそうに聞いていた義隆だが、相良らの名を出したとたん憮然とした顔をする。
「この様な日本の端の国から、戦で領土拡大をしたとして、その先はどうするのじゃ。」
義隆は言う。 家臣達は皆唖然として義隆を見つめる。
「…それでは殿はこのまま尼子や毛利に国を明け渡せと?」怒りを押さえながら隆房が尋ねる。
「その様な事にならぬかも知れぬではないか。…わしは争いなき世を作るには、朝廷とのつながりも必然。高い文化を持ってすれば争いをさける事にもつながると思っている。」
どこか遠い目をして、義隆は答える。
「その様な…夢物語を」
隆房は思わず拳を握り締めた。
「お主!殿に対してなんとっ…」
義隆一の家臣、内藤が刀に手をかけん勢いで立ち上がろうとした。
「…ならば」陶 隆房が静かに言う。
「殿は家督を譲られ、隠居し思う存分、
京文化の庇護や継承に力を入れられては…?」
広間は水を打ったように静まり返った。
誰一人、息をする音さえ立てなかった。
義隆の顔から表情が消えた。
義隆と隆房は何も言わず、睨み合っていた。




