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脳内宝塚歌劇 NOELE〜西の京幻想〜  作者: 一の坂 さくら
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19/21

第19場 星


雪のあの日から、ミゲルと千鶴の2人は

何となくお互いを避けるように、ミサの準備を

していた。


「ミゲル様は、帰国する事を何も言って来られない。…言うつもりもなく、このまま帰るおつもりなのか?」

ミサ用のローソクを準備しながら、千鶴は

向こうで掃除をしているミゲルの背中を見ていた。


「私は、自分の気持ちに気がついてしまった。どうしたらいいのだろうか?」

千鶴は答えの出ぬ問いを繰り返していた。


「千鶴殿…今度何かあれば、私は私の気持ちを押さえる事が出来ないだろう。この手があなたに触れてしまったら…。私は帰国をしなければならない身…今さら愛を告げてどうなると言うのか?」


そこにトーレス神父が現れた。


「準備は進んでいるようですね。いよいよ明日ミサを行います。少し緊張しますね。」


「あなた方もそんなに黙り込んで、緊張しているのですか?」トーレス神父は笑って言う。


「あの…以前言われた木の飾りはいいのですか?」千鶴が聞く。


「…ああ…あれは私がある国のクリスマスミサに参加した時に、木の先端に星を飾っているのを見て、素敵だなと思ったもので、飾らないといけないわけではありません。」


「イエス様がお生まれになった時に星が輝いて知らせたそうです。ここにおられますよ。と言う目印でしょうか。それを飾る風習のある地域だったのです。」


「ここにいますよ。という目印…」  

千鶴は呟いた。


「星とはどの様な形のものですか?」


千鶴が尋ねる。


「…こんな形です。」ミゲルが書いて見せる。

「五芒星に似ていますね。」千鶴が答える

「五芒星…?」

「日本の魔よけのお守りです。不思議ですね。遠い外つ国と同じ模様とは。」

「世界はつながっているのですね…」


しみじみ千鶴が答える。 


「トーレス神父様、明日のお祈りの言葉の件で

少しよろしいですか?」


アンジロウがトーレス神父に声をかけ

2人は本堂を出ていき、ミゲルと千鶴がまた

2人きりになった。



千鶴は、なにやら紐を準備してトーレス神父が書いた星の印の紙に穴を開け、紐を通した。


ミゲルは千鶴が何をするつもりか分からず

じっと見ていた。


千鶴は庭に降り、本堂の横に生えている木にはしごをかけた。


木の枝に星を飾るため、慎重にはしごに足をかける。

ミゲルもついて木の下まで来た。


千鶴が数段上がって手を伸ばし、枝に星の絵をかけようとした時、バランスを崩しはしごから

落ちそうになった。


ミゲルは慌てて駆け寄り、千鶴を抱き寄せる。


「危ない!」


「…」何も言わない千鶴。


「千鶴殿…どこかケガをしたのですか?」


慌てて千鶴の顔を覗き込む。


千鶴は静かに泣いていた。


「千鶴殿…」


「ミゲル様、なぜ何もおっしゃらないのですか?」


「えっ」


「あの雪の日、皆さまが話しているのを聞いてしまったのです。」


「…」何も言えないミゲル。


「帰国されるのでしょう?」


2人は見つめ合う。


「私に何も言わずに帰るおつもりだったのですか?」


「千鶴殿…」


「ミゲル様…私。私は…」



2人は言葉もなく再び見つめ合う。


多くを語らずとも、千鶴の瞳を見て

ミゲルは悟った。



涙を見せたまま、駆け出す千鶴。


追いかける事も出来ず、立ちつくす


ミゲル。


手には先程の星の絵が残っていた。


「遠く離れても…気がつくように」


ミゲルが呟いた。

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