第18場 千鶴の想い
ミゲル様…一体何故あのような振る舞いを
何故、あんなに悲しそうなお顔をされたの
そっと本堂に戻る千鶴
そこにはミゲルとアンジロウ、トーレス神父がいた
千鶴は先程のミゲルの様子が気になって、 障子越しに話を聞いてしまう。
「いつ、帰る事に?」 アンジロウが聞く。
「…ザビエルさまが病気でお亡くなりになられたらしい。それにより、私も呼び戻される事になった。」ミゲルが告げる。
「ああ…もともと騎士だから、国に戻るのか?」
「…そうだ。」低くミゲルが呟く
「私はザビエル様のやり残された布教活動の為、
このジャポンに残る事にしました。」
トーレス神父が言う。
「アンジロウ…そなたはどうする? 私と一緒にここに残り布教活動を手伝ってくれませんか?」
「トーレス神父様。ありがたい言葉ですが 、私はこうしてザビエル様と日本に帰国して、これは贖罪なのだと感じていました。愛しい女を守る為、人を殺めた私が贖罪の為日本に帰国したのだと…ですから薩摩国に戻ろうと思います。」
「そうですか…。では、尚更クリスマスミサを成功させないといけないですね。」
トーレス神父がわざと明るく振る舞う。
ミゲルだけは、無言だった。
そんなミゲルの様子をアンジロウは心配そうに見ていた。
廊下で話を聞いていた千鶴は驚いた。
南蛮から来た人達だから、いつかは自分の国に帰るのだろうとは思っていた。
ただ…その事をいつの間にか考えないようにしていた。
大道寺でのミゲル達と過ごした日々があまりに楽しくて。
「ミゲル様…国に帰ってしまわれるのですね。
ああ…もう会えないのですね。分かってから知るこの気持ちは…」
「ああ…そうだ。」
「私は」
「ミゲル様を」
「お慕いしていたのだ。」
天に向かって千鶴は手を組み祈った。
「ミゲル様…何故私を抱きしめたのですか? 何故あんなに悲しそうなお顔で私を見つめたのですか?…あなたも、あなたも私と同じ気持ちなのでしょうか?
そうであればと、願わずにはおれません。」
お別れを知ってから
おのが気持ちに気がついた
桜舞うあの日の胸のざわめき
雪舞う夜の胸のときめき
月は変わらずそこにあった
今宵と同じように
これが、恋と言うのか
外つ国のあなた
別れがくるその日まで
今はただあなたを見つめていたい




