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脳内宝塚歌劇 NOELE〜西の京幻想〜  作者: 一の坂 さくら
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11/21

第11場 戦の翌日

義隆は命からがら、数名の側近と公家を連れ館を脱出していた。


海路から九州に渡るつもりであったが、海が荒れ、陸路で長門を目指していた。


隆房も後を追う。


館は陶 隆房の占拠下にあった。


翌朝から、大庭 清孝の屋敷ではケガをした民達が助けを求めてやって来ていた。


屋敷の者達、トーレス神父、アンジロウ


ミゲル達も、傷の手当てをしたり、水を飲ませたり、甲斐甲斐しく対応に当たっていた。


千鶴は昨夜の事を思い出していた。


腕の傷を手当てした後、ミゲルはふらっとどこかに行ってしまった。


千鶴はアンジロウ相手に不満をもらす。


「ミゲル殿は、何故すぐに剣を取らなかったのです?」


アンジロウは答えない。


「ミゲルはナイトだと聞きました。ナイトとは武士の様なものではないのですか?」


「…あまり、強く言わないでやって下さい。ミゲルは抜けないのです。」


「は?」


「いや、戦場で剣を抜けなくなった、と言うべきか。」


千鶴がわけがわからないと言う顔でアンジロウを見つめる。


アンジロウはゴアでの出来事を千鶴に話した。


「そんな…そんな事が。私は腰抜けなどと


なんて事を言ってしまったのかしら?」


千鶴は青ざめていた。


「ミゲル様に謝りに行ってきます。」血相を抱え探しに行こうとする千鶴にアンジロウが言った。


「…そっとして置いてやって下さい。…


ミゲルは祈りを捧げに行っているのでしょう。」足を止める千鶴。


「…それにミゲルは剣を抜きました。愛する者を守る為に。」


千鶴は離れた場所で、黙々と傷の手当てをするミゲルを見つめていた。


昨夜、自分をかばって負った傷。


「腰抜け」――あの言葉が胸に刺さったまま離れない。


やがて視線に気づいたミゲルが顔を上げた。


辺りを見渡して言う。

「どこの国も、戦は同じ。罪なきよわき者達が犠牲になってしまう…。」


「戦なんて、民に関係ないところでやれば良いのだ。」アンジロウが続ける。


「…義隆殿も、隆房殿も根底は同じなのだ。この周防の国を思うてこそ…」清孝が言うと


「父上はご存知だったのですか?」


千鶴が尋ねる。 

しばらく沈黙があり、清孝が口を開く。


「謀反の計画があった事など知らないが…隆房殿がだいぶ煮詰まっているのは感じていた。」

無念そうにつぶやく。


「…私は、」千鶴が惨状を見つめながら言う。「私は、戦と言う者を初めて目の当たりに致しました。…馬を駆け、相手を倒す。そんな単純なものだと。男であれば、私だって参加するのに、と。」


「戦は残酷です。小さな子供がケガをしても、敵国の人間だと助ける事もしない…」


ミゲルは遠く想いを馳せた。


「神は、どちらの罪も赦しを与えて下さいます。赦しをこう者達は、神の前では身分や国境はない。男や女もないです。


神の前では、皆平等なのだから。」


トーレス神父が言う。


そこに、昨日助けた子供が母親に連れられてやって来た。


「助けてくれてありがとう。おいらもおっきくなったら武士になって、おっかあを守るんだ!」


「お前がおっきくなる頃には戦などない世界にしないとな。」アンジロウが頭をクシャクシャと撫でる。




誰もが、秋の澄みきった空を見上げていた。


戦の煙はまだ町に残っている。


それでも空だけは、何事もなかったように青かった。

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