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日輪の防人と精霊の姫君 第一章 王国と大地編  作者: Yudai


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間章①

間章の為、いつもより短くなっています。

今後も時折、間章を挟みます

——陸上自衛隊外界駐屯地 総司令本部——


 陸自の最高指揮官である南場陸将補は、延灯許可した自身の執務室で書類を読んでいた。阪井二尉が作成した報告には、第一偵察小隊が連れ帰ったとされる女性の写真と共に、現時点で把握している内容が記載されていた。

 『横浜事変』から二ヶ月。

 外界と呼称する異界の地で、敵対武装勢力とモンスターとの戦闘がようやく落ち着いてきた所で、初めての現地人とコミュニケーションが取れた。

 今の所、会話が可能なのが一自衛官のみとなっているが、少なくとも語弊等の弊害は確認されていない。

 外界派遣部隊や日本政府にとっても、貴重な情報源を確保できた。


 南場は、現地人を連れ帰ったとされる自衛官の経歴書が入ったファイルを見た。

 陸上自衛隊外界派遣部隊第三中隊・第一偵察小隊所属、空閑隼人。年齢は二十七歳、階級は三等陸尉。

 一般大学を卒業して自衛隊へ入隊、幹部候補生課程修了後に三等陸尉へ。派遣前は秋田駐屯地の普通科連隊に勤務する小隊長だった。

 ありきたりな初任幹部に見えるが、彼には特筆すべき点があった。


(以前の所属は……水陸機動団か)


 長崎県佐世保市の相浦駐屯地にある諸島防衛の為に新設された、自衛隊初の上陸作戦を専門にした部隊。別名、日本版海兵隊と呼ばれる殴り込み部隊だった。

 日本の周囲には、幾つかの島々を保有している。仮に何処か一部の島が武装勢力に占領された場合、そこを奪還する為に水機団が上陸して任務を遂行するのだ。

 空閑は幹部課程修了後に水機団への入団を希望し、主力部隊である『第一水陸機動連隊』へ配属したのだった。

 実質、陸自の精鋭部隊と言われるだけあって、空閑の能力は高かった。米海兵隊の協同訓練でも、高成績を叩き出している。


 現在、空閑が配属している第一偵察小隊は、元々空閑の部下である秋田駐屯地所属の隊員が大半であった。

 外界は未知の世界である。どんな危険な事があるが分からない。地方駐屯地の普通科である隊員達には、荷が重過ぎる派遣任務の筈であった。実際に、第二偵察小隊の隊員達はモンスターに襲われて、重傷者まで出ていた。

 だが、第一偵察小隊は違った。各隊員の技量をさることながら空閑の適確な指示と、隊員達の一心同体の連携で降りかかる災難に対処していった。流石に負傷する隊員もいたが、ほとんどが軽傷で済んでいた。

 ただの普通科隊員で構成された部隊と思えない程に、第一偵察小隊らの能力は研ぎ澄まされていた。

 

(これほど高い素質があるのも関わらず、地方駐屯地の普通科に?)


 さらにいえば、空閑の行動は異常であった。普通の小隊長なら、部隊の指揮権を維持しなければならない為、前線に赴くのは有り得ない事だ。しかし、今回の空閑は小隊の一番若い陸士長と共に、危険度の高い斥候任務に出ていた。

 空閑が水機団から転属したのは去年、『横浜事変』が最初に起きた五ヶ月前であった。こちらも本人の強い希望があったとされる。


(そういえば……去年、あそこの駐屯地にいた元自衛官が、亡くなったニュースがあったな……)


 去年の夏、青木ヶ原樹海で秋田駐屯地に勤めていた元自衛官の男性の遺体が発見された。検視の結果、大量の睡眠薬を服用した自殺だと判断された。

 警察の捜査の結果、男性は去年の春に自衛隊を退官後、精神科病院に通っていた事が分かった。『極悪非道な自衛隊の実態』と、当時のマスコミが連日のように捲し立てていたのを、南場陸将補は思い出した。


(……確か、レンジャー訓練中の助教隊員が第一発見者だったな……)


 陸自史上で最も過酷と言われるレンジャー訓練。青木ヶ原樹海での訓練も定番であった。その道中に、元同郷の人間を見つけてしまうとは、訓練中であった隊員達の心境は計り知れないものだろう。

 

 ふと、空閑の経歴を見ていた南場は、去年の夏の項目に目を止めた。


『○○年度、第○○期レンジャー訓練課程に指導教官として教育隊へ出向』


(……奴も去年の訓練に参加していた?)


 水機団へ所属している隊員の殆どは、訓練を修了した証であるレンジャー徽章(きしょう)持っている。空閑はその中でもレンジャー部隊の指揮官や教官を務める幹部レンジャー課程を受けていた。彼が第一偵察小隊の小隊長に抜擢されたのも、これが理由である。


 空閑は自殺現場であった去年の青木ヶ原樹海でのレンジャー訓練時に、指導教官として参加していた。そして、しばらくして元自衛官が最後に勤めていた秋田駐屯地へ彼は転属している。


(……それに、確か自殺した元自衛官は、空閑三尉と同年齢だった筈だ)


 果たして、単なる偶然なのだろうか。

 南場の心中に、一種の疑問が漂っていた。

誤字脱字報告された方、ありがとうございます。

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