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第119話 決着の兆し

 結界の端へ移動中、セイは透へ[詳細鑑定]を使用した。あまりに不自然な知識のなさと強力なスキルなど、不審な点が多いからだ。

 (けど透がリベルと関係しているとは思えない……透はリベルを知らない様子だったけど、もしリベルと関係している上での演技なら、不自然過ぎて逆に透にとって不利だ。少なくともリベルと関係している可能性はひく……え?)

 『対象のゴッドシステムを検知できませんでした』


 (えっでも透はスキルを使用するって……どういうことだ……?)


 すると透が振り返り、セイを見つめた。

 「おい、お前今俺になんかしただろ」

 「えっ気付いたのかい?! ごめん。どうしても気になってね」

 セイは透に謝った。

 (気付いた? まさか魔力を感じ取っているのかな? けど魔力の検知も使用も、システムがないとできないはず……まさか透はこの世界の理に含まれていないのか?)


 そんな事を考えている間に、セイ達は結界の端にたどり着いた。

 「どうだいラレム、また解除できそうかい?」

 セイは尋ねると、ラレムは結界に軽く手を触れ答えた。

 「あくまで操作権が奪われただけのようだな。仕組みは変わっていない。すぐに穴を開ける。準備しておけ」

 アリスとアルカは剣を構えた。セイは携帯を取り出し、透も準備を整える。


 「ジジッ……バキ!」

 結界に五メートル程の穴が開いた。すぐにアリスとアルカ、ラレムが飛び出す。そしてセイも結界の外へ飛び出し、ストラシアに連絡を取った。そして、ある人物のところへも連絡を取った。


 はるか遠くからそれを観察していた男は、ボソッと呟いた。

 「……始まりましたか。フフッ」



 「[龍神化]!!」

 アリスは半透明の美しい翼を羽ばたかせ、突っ込んでくる大量の敵に向かって突き進んだ。そして、

 「[止水乱舞……狂い咲き]!!」

 飛んでくる弾丸や刃、そのすべてを切り伏せた。

 「[創造者権限:(ライン)]!」

 アルカは一直線に突っ込んでくる敵にその一撃を放った。その直線は経路上の全てを破壊し、多くの敵が無に帰した。



 「はは、こりゃすごいな……俺も気合入れねぇと」

 その時、その場にいる全員が、いつもの魔力とは違うそれを感じ取った。透の魔力が周囲に満ちたのを感じた。いつの間にか透の魔力は世界樹大結界を覆っていたのだ。

 「ふぅ……んじゃやるか、[魔力掌握(マナ・マスター)]」

 その瞬間、セイ達に見える全ての敵が灰のように粉々となって散っていった。


 はるか遠くの男は驚きを隠せない。

 「あの男、まさかここまでとは思いませんでしたね……

 準備しましょうか。数日の内に、決着がつくでしょう」

 そう言って男は現場に背を向けた。その時、その男、サイアンの前に現れたのは、最強の異端審問官(インクイジター)と謳われるレイ・カルカソンヌだった。

 「その”数日の内”には、今日は含まれているのか?」



 安全を確認したアーコレードが結界から出てきた。

 「ほう。悪くない」

 「では帰るが良い。無断に聖域へ侵入した事は見逃してやろう。

 さあ、私の機嫌が悪くなる前に視界から消えろ」

 アーコレードが再び結界に向かったその時、ネモフィラが走ってきた。

 「皆!!」

 ネモフィラは息切れしていて、セイが少し呼吸を整えるように言った。

 「今日はありがとう! まさかあの混乱をこんなにはやく解決できるなんて……

 これ、私からのお礼!」

 そう言ってネモフィラは、一冊の本を差し出した。それはネモフィラがセイ達を呼びに行った際、セイが読み始めようとしていた本だった。

 「え、いいのかい?」


 するとアーコレードが声を荒げた。

 「ネモフィラ! 何回言えば分かる! こやつらは我らが聖域に無断で入った人間なんだぞ!」

 「だからなんなのです!」

 ネモフィラはアーコレードの怒り声を一蹴した。そしてセイ達に、

 「たしか魔術の術式が必要だったんだよね? もう足りてる? それとももう少し読む?」


 「いや、大丈夫だよ。けど……これで終わりとは思えないんだ。アーコレードさん、世界樹大結界のセキュリティを強化した方が良いと思うよ。

 多分今なら私でも-」

 「視界から消えろと言ったのが聞こえなかったのか!」


 「……」

 ちょうどストラシアが到着したので、セイ達はそこを去ることにした。透は巨大な飛行船は見たことがないのか、

 「な、なんだありゃ……」

 と圧倒されている様子だった。そしてセイはそんな透に尋ねる。


 「そういえば、透はこれからどうするんだい? 一応、保護してもらえるように神話会とルサリナ教会には連絡しておいたけど。

 多分、ここはもうすぐ激しい戦場に変わる。透ほどの強者なら大丈夫だとは思うけど、あまりこちらの状況に巻き込みたくないんだ」

 すると透は笑顔で答えた。

 「ここまでやっておいて抜けるわけにはいかね~よ、それに自分だけ安全圏ってのは性に合わん。俺も連れてってくれ」

 セイは

 「ふっ。分かった。一緒に行こう!」



 そしてセイは最後に振り返り、ネモフィラに手を振る。

 (そういえば、リベルが突然ポラ・メモリアを包囲した動機も分からないままだな。そして改めて気づいた。ここは未開拓の地……もしリベルの本拠地が主要次元内にあるなら、この次元のどこかにある可能性が非常に高い……しかもリベルがあれほど大規模な作戦を行ったというのに、こんなにあっさり終わってしまうとは思えない……

 完成した刀を受け取って、この次元を離れるまでは警戒を怠らないようにしないと……

 けど幸い魔術の知識はかなり頭に入ったし、異名持ち以外となら戦うことも可能ではあるかな)


 「さあ、行こうか。透」

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