表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
117/122

第116話 世界樹とポラ・メモリア

 「――分かった。じゃあもし手を貸せる状態になったら合流しよう」

 「うん。じゃ」



 「そろそろ降りましょうか」

 翌日、アルカはセイ達に呼びかける。船を降りると、前方には見たことない程大きな樹が立っている。幹しか見えず、雲の上にまで伸びているようだ。

 「あれが世界樹……?」

 「ええ。ユプリムでは山で見えないものね」


 四人は世界樹に向けて歩き出した。そしてそれを追いかける影も、同時に移動していく。

 「エルフはこの次元の森全体を’’世界樹の下の聖域’’と言っていて、自分たちをその聖域の監視者と名乗ってるの。だから獣人はエルフを警戒していたでしょ?

 ユプリムのドワーフが滅多に森に出ないのもそのせいなの」


 「この次元の実質的な支配者……って感じかな」

 「ま、そんなところね」


 そんなことを話していると、目の前の視界から空が消え、段々茶色に染まっていく。

 「あ……そういえばそうだったわね……」

 アルカは何かを思い出して、頭を抱えた。

 「どうかしたの?」

 アリスはアルカの顔を覗き込む。

 「ポラ・メモリアは特殊な結界で覆われていて、通常の生物がそれを認識する事は出来ないの。その存在を知っていても、中に入る事は中のエルフが認めない限りできないのよ」

 「えっ。ここまで来てそれ~~?」

 アリスは落胆した。が、

 「ああ。これは認識歪曲を組み込んだ結界魔術の基本術式だ。俺なら一時的な穴を開けるくらいなら可能だ」

 ラレムは空間の透明な壁を撫でた。

 「本当か! 流石だな」

 すると空間に穴が開いたように、結界に穴が開いた。奥には、多くのエルフで賑わう街が広がっていた。


 「このままここに入ったらすぐ牢屋行きだから、せめて姿を隠していきましょう。きっと元老院がいる議会の保管庫なら術式が大量に保管されてるはずよ」

 ラレムは頷き、四人全員に認識阻害を付与した。

 (ほぼ全ての建物が木か粘土で作られている……ユプリムより原始的だけど、魔術によって都市としての発展はこちらの方が進んでいるみたいだ……)


 アルカは世界樹の根本を指さした。どうやら目的地はあの方向のようだ。


 世界樹の根本に着くと、そこには幹が割けたように変形し、入り口ができていた。

 (また結界か……これには認識歪曲は付与されていない。ただのバリケードの役割のようだ)

 ラレムが再びそれを解除しようとしたその時、

 「お客様……それとも、世界樹を穢さんとする不届き者……ですかな?」

 結界の向こう側に現れたのは、老人のエルフだった。

 「少なくとも、後者ではないわ」

 アルカは少し緊張した面持ちで前に出る。


 「そうでしたか。

 ……私は元老院、12(がく)が一人、オルレアと申します。

 さて……あなた方は誰に、招待を受けてここにいらしたのです?」


 「申し訳ないわね。私たちは誰にも招待を受けていないの」

 「ではどうやって……いや、ちょうどそちらにも優秀な魔術師がいらしたようで……

 これより先は、ポラ・メモリアで最も聖なる領域、世界樹の中の元老議会と知ってこちらへ来るというのですか?」


 アルカにとって認識阻害が効かない事は想定外だったようで、返答に困っていた。保管庫に用があると言ってしまえば、即座に追い払われるか、何かしらの罰を受けることになると分かっているからだ。すると、少女の声がオルレアの後ろから響いた。

 「オルレア! どうしたのです!

 おや? そこの方たちは……」

 その少女のエルフは、不思議そうな表情でセイ達を眺めた。

 「ネモフィラ様!

 彼らは独断でこの聖域に侵入した不届き者です!

 即刻連行させますのでネモフィラ様は議場の方へ……」


 するとネモフィラと呼ばれたエルフの少女は、オルレアの話を遮った。

 「いいえ。彼らは(わたくし)が案内します!」

 「あ、案内……?」

 「はい。この議会を」

 「な、なりませぬぞ!! 主たる世界樹の一族であるネモフィラ様が、このような不届き者らをわざわざ案内するなど……!」

 するとネモフィラはむすっとした表情を浮かべた。

 「その、主たる世界樹の一族の私のいう事が聞けないというの?」

 「ぐっ……し、しかし!」


 オルレアが反論しようとした時には、ネモフィラは入り口の結界を解いていた。

 「さ、行きましょう!」


 そう言ってネモフィラはアルカの手を引っ張った。

 「え、えぇ」

 こうして一行は無事議会の中へ入ることに成功した。

 「ネモフィラ……さん? どうして私たちを中に入れてくれたの?」

 (アルカが動揺しているところ、初めて見たな……)

 セイはそんなことを考えていると、

 「うーん……なんだか入れてもいい気がしたの。それどころか、入れないとまずいって」

 「つまり……勘?」


 「少し違うわ。他の議会の人達が言うには、私は世界樹の一族で、未来を見通す世界樹の感覚が一部備わっているらしいの」

 「ネモフィラさんなら話しても大丈夫そうね。私はアルカ、この2人はセイとアリス。私の息子と娘よ。こっちはラレム、詳しくは知らないけど、多くのエルフと同じ、魔術師よ。

 私たちは力を失ったセイのために、魔術の術式が欲しくてここに来たの」


 するとネモフィラはこちらを信頼したように振り返った。

 「ネモフィラで大丈夫よ。じゃあ改めて、私は元老院12(がく)が一人、ネモフィラよ。よろしくね!

 話を聞く限り、あなた達の目的地は術式の保管場所よね?

 なら保管庫へ行きましょう!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ