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第113話 秘境次元

 船全体が光に包まれる。そして、セイの視界も。

 「アインシトルの名を知る者は、それに対し如何なる感情を抱いていようが、やつら(リベル)に潰されてきた……

 その血を継ぐ者は特に。じゃがそなたは違う。きっと、反逆者を……あの、僭越者を」



 セイが目を覚ました時、既に船は秘境次元に到着していた。

 「……本当に来れるとは」

 「ね? 言ったでしょ?」

 アルカはドヤ顔でセイ達にピースする。しかしその時、船が大きく揺れた。ほぼ同時にローナが走ってきた。

 「大変ですわ! 何故か船の揚力が減少を始めていますの! バルトコアには何の問題も見当たらないのに!」

 するとアルカが前に出た。

 「きっとこの地の特殊な魔力環境による電子機器の不具合ね。この次元は環境だけでなく、魔力も原始的な物なの。つまり、普段私たちがいる空間に満ちている魔力とは別物ってこと。

 だから魔力に関連する機器に不具合が起きる事があるの。きっとこの動力源、[バルトコア]……だった? きっと、このエネルギーも一旦は魔力に変換して利用してるんでしょ?」


 「えっと……そうなの?」

 アリスはよくわからなかった。

 「えっと……おそらく?」

 ローナもあんまり分かっていなかった。


 船は広大な森の中に不時着した。

 「それで母さん、その主要次元一の鍛冶屋はどこにいるの?」

 「ふふっ ユプリムよ!」


 今回は森の中を移動しなければならず、ストラシアも不安定なため、森の中を高速で移動できる数人だけで行動し、残りは全員船に待機する事になった。ユプリムへ向かうのはセイ、アリス、アルカ、ラレムの四人。科学次元からの四人だ。


 走りながら、セイはアルカに尋ねる。

 「ユプリムって、たしかドワーフが住まう鉱山都市……だったよね。母さんはそこに知り合いでもいるの?」

 「いや? ちょっとツテがあってね! 腕の立つ鍛冶職人を紹介してもらったことがあるの。当時はちょ~~っと用事が被って行けなかったんだけど、まあきっとあの素材を見たら引き受けてくれるわ」


 アリスはユプリムの鍛冶職人について覚えている事を思い出す。

 「たしかあそこの鍛冶職人って、鍛造の素材が良いものだと快く依頼を引き受けてくれるくらい、鍛冶に本気の人達なんだっけ……

 ていうかなんでそのアインシトルの爪……ってそんなに大きいの? 40センチはあるよ……アインシトルは巨人か何かなの……?」

 「うーんとね、記録によるとアインシトルは巨大な龍の姿をしていたそうよ。大きさは確か……10キロメートルはあったはずよ」


 「「巨大にもほどがある!」」

 「でもだからこそ、アインシトルの亡骸は大きく、量が多いから様々な事に利用されてるの。そうね……例えばあの船、ストラシア、だった? あれの動力に使われていたバルトコア、あれ、()()()()()()()()()()()()


 「「そんな重要な事はもっと早く言って!!」」

 「でもあなたたち……こういう規模が大きい話には慣れてきてるでしょ?」

 「とはいえ限度があるよ……」

 アリスはお腹いっぱいのようだった。

 「それじゃあ……」


 アリスがアルカに何かを尋ねようとしたその時、アルカが急に立ち止まった。ほぼ同時にラレムも立ち止まる。

 「……15、いえ、16かしら?」

 「セイ、お前は下がっておけ。ここであれ(闇鴉)を出すのは無理だ」

 アルカは黒い剣を取り出し、ラレムも鎌を構える。アリスも刀の柄に手を添えた。すると一つの影が前から歩いてきた。


 「お前達、ナニモンだ。服装を見るに他次元からキタのか?

 目的をイエ」

 そこに立っていたのは、頭に犬か狼の様な耳を生やした男だった。

 「……獣人ね。任せて」

 アルカは小さな声で三人に話すと、武器を下げて一歩進んだ。

 「初めまして。私はアルカ。もしかしてここ、君たちの縄張りだった? だったらごめんなさい。私達、ユプリムに向かう途中なのよ。あなた達の獲物に何もしないと約束するから、通してくれないかしら」


 「……魔術師のニオイ……オマエ、ポラ・メモリアの耳長カ?」

 アルカは振り返ってラレムに目を向ける。

 「彼の事かしら……? 彼は……彼も他次元から来た私達の仲間よ。エルフじゃないわ」

 獣人はラレムの事をよく睨んだ。そして耳長のエルフではない事を確認したのか、静かに頷いた。

 「こっち、コイ。通す前に、ボスに挨拶シロ」

 アルカは振り返って小声で

 「ここは従いましょう。下手な騒ぎを起こすと最悪エルフまで来てしまうわ」


 こうして四人は獣人達の監視を受けながら、集落へと到着した。セキュリティのような役割であろう原始的な武器を持つ獣人の間を通り、大きめの小屋の前に案内された。

 「ボス、よそ者を連れてキマシタ」

 「……入れ」

 幕がめくられる。そこにいたのは、身体中に古傷が残る、歴戦の強者という風格を持つ狼の獣人だった。

 「……我はこの群れのヌシ、グリス。オマエタチが、我々に害なす者達ではナイことは分かっている。だからこそもう一度キク。オマエタチの目的はナンダ?」


 アルカが率先して前へ出る。どうやら獣人とのコミュニケーションには慣れているようだった。

 「私達は紹介された鍛冶職人を探しに、ユプリムへ行くの。ここに来たのは……ただ通りかかっただけよ。心配しないで! あなた達の獲物も、縄張りも、荒らすつもりはないから」


 「……」

 グリスは黙ってしばらくアルカ達を睨むと、少し表情をやわらげた。

 「……2人程、護衛を付けよう。監視もカネテな」

 「俺達に護衛など……」

 ラレムがそう言いかけた途端、

 「ええ。とてもありがたいわ!」

 アルカはラレムの言葉を遮り、グリスへ礼を述べた。そしてラレムへ小声で忠告する。

 「そもそもこの森は至る所に獣人の群れの縄張りがあるの。下手に動くとトラブルを招きかねないわ。それに、ここで断ったら彼らからの疑いが強くなるかも」


 そうして、2人の護衛(監視役)を連れ、四人は再びユプリムへと向かった。

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