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星降る夜の砂漠は井戸を秘める  作者: まりや みずうみ
12/15

初めての恋愛とは


「へえー、シバさんとお付き合い!やったね真知子ちゃん!」

「う、うん。人生で初めて告白された・・・」

座談会から帰宅後、真知子はさっそく美園に電話をして事の次第を報告した。

誰かに報告せずにはいられなかった。

「めでたいめでたい!今夜はシャンパンでも飲もうかしらん」

ウキウキと騒ぐ美園の声を聞いても、いまいち実感が湧いてこない。

「美園、あのう・・・」

「真知子ちゃん、大丈夫よ」

「え?」

「真面目な真知子ちゃんの事だから、『私はシバさんのこと、そんなに好きじゃないのに、こんな中途半端な気持ちで付き合って良いのかしら』なんて思ってるんでしょ」

美園の指摘にギクっとする真知子。美園ってば、私の事ならなんでもお見通しなのね。

「でもね、真知子ちゃん。真知子ちゃんの自信のないところも含めて、シバさんは好きになってくれたんでしょ?なら良いのよ、それで。それに真知子ちゃん、自分では気づいてないみたいだけど、結構シバさんのこと好きだと思うわよ?」

「えっ⁉︎」

そうなの?と言いそうになって慌てて飲み込む。

「だって真知子ちゃん、いつもシンプルなシャツとパンツスタイルなのに、こないだ一緒にショッピング行った時、かわいいワンピースとかシフォンスカートとか熱心に見てたじゃない。遂には買ったしね。メイク用品の前でも立ち止まってたし。誰を意識してるのかなんて、私にはすぐわかったけど?」

「みみみ、見てたの⁉︎」

「うん。というか、ほら、えっと、あれよ。『恋による自我の目覚め』を目撃したのよ」

「・・・要するに見てたのね?」

「まあね」

スマホの向こうで美園はケラケラと笑う。スカートを買ったのもメイク用品を見ていたのも、別行動の時間だったのに、美園は侮れない。

「美園、私・・・」

「うん?」

「き、き、綺麗になりたい・・・」

「・・・・・・」

「大樹さんの隣に並ぶのに、ふさわしい女性になりたいの」

「・・・・・・真知子ちゃん」

「はい」

「シバさんが選んだのは、今のまんまの真知子ちゃんよ」

「は、はい。そうですね。・・・けどそれにしたって、もう少し進化のしようがあるような・・・」

「うーん、真知子ちゃん、シバさんに告白された時、何か一緒に言われなかった?そのままでいいとかなんとか」

「言われました・・・・・・まさか聴いてたの⁉︎」

「ううん。こないだの撮影会の時、シバさんが真知子ちゃんのこと盛大にノロケてたでしょ。いや、あの時点では付き合って無いからノロケとは言わないのかな?あれ聞いて、ああ、この人が本当に好きなのは、真知子ちゃんの見た目じゃなくて中身なんだなって思ったの。真知子ちゃんがモデルだって気づく前から、書店でよく見かけるから真知子ちゃんの事知ってたんでしょ?本の趣味が合うな、とか、本を扱うのが丁寧だな、とか。シバさんて、なんていうか、イケメンでしょ?女性には困らないルックスでしょ?おまけに真面目でしょ?そういう人ほど、見た目だけで選び選ばれする事にうんざりするわけ。そんな時に現れた真知子ちゃんは・・・心のオアシス、癒しの女神・・・」

「・・・・・・」

美園に言われて気づいた。今日、大樹さんに会った理由だって、『本の座談会』だったのだ。

オアシスと女神はよくわからないが、大樹さんは真知子の見た目ではなく、中身を好いてくれたのだ。

私はどうだろう?そもそも大樹さんの存在にも気づかなかった。

大樹さんのシルバーアクセサリーは、身につける度に何か自分を別の世界に連れて行ってくれるような気がして好きだ。それを生み出している大樹さんは、自分と同じ本を読んで、そのストーリーを題材にアクセサリーを作っている。

ただ身につけるだけの自分と、本を読みアクセサリーを作る大樹さん。

「どうしよう。なんだか、お付き合いするのが申し訳なく思えてきた」

「なんでよ!」

「だって、私なんか、何も持ってないのに」

「シバさんのこと嫌いなの?」

「いや、そうじゃないけど」

「じゃあ、付き合ってみなさいよ。初めての恋愛なんだから、失敗してなんぼよ。頑張って!」

「うん、わかった・・・・」

美園も大樹さんも「そのままでいい」と言ってくれるけれど、真知子はやっぱり、少し進化したかった。

「髪でも切りに行こうかな・・・」

美園との電話を切った後、ポツリと独りごちた。


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