第7話『やることがない!』
お金を稼ぐ。
ライブをやる。
アイドルとして配信を始めた以上、目標はいっぱいだ。
しかし、予想外というか。
まぁ最初の方は何も考えてなかったんだけど、何だかんだ世界的に見ても希少な女の子という看板はかなり強かった様で。
私のチャンネル登録者は日に日に増加の一方で、順調にその数を増やしていった。
問題があるとすれば!
「ん~んー! やることがない!」
『なんかないの?』
『こっちは見てるだけでも良いけどね』
『いや、話はしよう。なんか面白い話』
『ヒメノちゃん! 面白い話して!』
『そのフリ止めてね』
私は頭を抱えながら、うーんと唸り続けるが良いアイデアは出ない。
コメント欄にも良いアイデアは存在しておらず、私は悩み続ける事になった。
ネットワーク空間で私を示してる私のアバターも、現実世界の私同様に頭を抱えていた。
「配信者って、普段は何やるの?」
『さぁー』
『人に寄るんじゃない? 専門的な話をする人も居るし。発明的な何かをする人もいる』
『面白い話をしたりとか、視聴者と遊んだりとか?』
『ヒメノちゃんは何かないの?』
「うーん。考えても……何も、ない。私は雰囲気で配信をやっている」
『笑った』
『本来は視聴者集まる前に色々思いつくと思うんですけど』
『ヒメノちゃんは女の子バレで一気に視聴者も増えちゃったし。焦る気持ちもわかるけど、ヒメノちゃんも初めてだし。俺らも初めてだし。手探りでやっていけば良いんじゃないかね』
『それは、そう』
「手探り……うん。そうだね。今は何も思いつかないし、とりあえず手探りでやった方が良いのかもね」
『せやせや』
「というワケで!」
私はいつもの様に高く手を上げてから一つの提案をみんなに投げた。
悩みが全て吹き飛んで、明るくなった気持ちで。
「みんな! 何か、私にやって欲しい事ある!?」
『ズコー!』
『結局俺らが考えるのか』
『ヒメノちゃんは可愛いだけで生きています!』
『笑った』
『しかし、やりたい事か。中々難しいな』
『面白い話をすれば良いんじゃなかろうか』
『それは禁止カードだって言っただろ。急に面白い話を振られて、面白い話が出来る奴は芸人になってる』
『それはそう』
『じゃあ、女の子ならではの話とか』
『女の子ならではの話ってなんだよ。女の子って何が出来るん?』
『さぁー』
『我々も女の子エアプでして……』
『そこをヒメノちゃんが話せば良いんじゃないかね』
『はっ!』
『天才現る』
『という方向性に話がまとまったんですけど?』
「女の子ならでは! っていう話?」
『せやせや』
『我々と何が違うのか』
『女の子とはいったい何なのか……謎は深まるばかり』
私は首を傾げながら自分について考えるが。
特徴らしい特徴などはない。
むしろ、特徴なんて話をしたら、私よりもお兄ちゃん達の方が凄いくらいだ。
裕二くんは、学校で先生の仕事をやってる。
学校の先生っていうのは本当に選ばれた人しか出来ないお仕事で、世界システムに選ばれた凄い人だ。
この世界の歴史とか、文章の読み方書き方。計算の仕方。
色々な事を教えてくれる。
悠人くんは、ネットワークという場所のスペシャリストらしくて。
普段はリビングのソファーでゴロゴロしてるから、いつ働いているのかよく分からないけど、たまに世界システム絡みの仕事をしていてビックリ、驚いちゃう様なお金を稼いでいたりする。
私が配信する用の機材とかパソコンとか、色々と準備してくれたのも悠人くんだ。
蓮くんは、言わずと知れたバスケットボールの選手で。
蓮くんの世代では最強の一人って有名らしい。
ライバルには酒井卓っていう人もいるらしいんだけど、その人とのぶつかり合いは思わず叫びたしたくなっちゃうくらいに凄い。
テレビで蓮くんが出る試合は全部見てるけど、蓮くんはどんな試合も凄くて格好いいのだ。
そして、お兄ちゃん。
正直お兄ちゃんがどういう人なのかはよく分からないけど。
裕二くん曰く、私を預けても問題ないって世界システムが判断するほどの人で、私を育てている限り、世界システムにも援助してもらえてるみたい。
基本的に家にいて、家の事は全部やっている人だ。
普段は笑っているけど、たまーに凄い怖い雰囲気で蓮くんや悠人くんに怒ってる時がある。
……怒らせない様にしよう。
なんて、お兄ちゃん達の事を考えたけど。
私は特にコレ! という物は何もない。
強いて言うのなら……。
「可愛い……こと?」
『そうでしょうね。としか言いようが無いの笑う』
『女の子は基本的に可愛いんか?』
『例のアイドルも可愛かったし、ほら、アイドルの前に居た、漫画家とか小説家も全員可愛かっただろ』
『あー』
『言われると確かに』
『女の子は可愛いのか』
なんか適当に言った事が納得されて、私は良かった良かったと胸を撫でおろす。
が、そんな流れが気に入らなかったのか、一人の視聴者が流れを食い止める様な事を言った。
『別に可愛いってだけなら、他にも居るでしょ。男の娘アイドルヒカリちゃんとかさ』
『あー。ヒカリちゃんかー』
『確かに。あの子は可愛い』
『いつも一生懸命でなぁ。小動物を見ているような気持ちになる』
『あぁ。俺もハムスターを飼ってた時の事思い出したよ。可愛いよな』
『ヒカリちゃんって魅力いっぱいだもんな』
『ぼ、僕の事はどうでも良いだろ! 可愛いってのは女の子だけの専売特許じゃないってこと!』
『いや、誰もお前の話はしてないが』
『自認ヒカリちゃんなのかな。ある意味で可愛い奴だな』
『何を自認するかは勝手だけど、ヒカリちゃんは女の子だからな。勘違いすんなよ』
『ヒカリちゃんは男の娘アイドルなんですけど!?!?』
「男の娘アイドル?」
私は突然飛び出して来た単語に首を傾げながらみんなに問うた。
その質問に、ヒカリちゃんを紹介してくれた人が反応する。
『そう! 新時代のアイドル! 男の娘アイドルだよ! 女の子アイドルなんてもう時代遅れってワケ! アイドルスズナ以降、表舞台には立てない女の子アイドルなんて、もうお呼びじゃないんだよ!』
『何言ってんだ? お前』
『ヒカリちゃんは女の子だろ』
『僕は男だって言ってるだろ!!』
『誰もお前の話はしてない定期』
『ネットばっかりしてると頭悪くなるぞ。学校行けよ』
『僕はもう成人だ!』
『そう……(興味なし』
『働いててこの精神性なのか……(驚愕』
『そろそろ再調整されるんじゃないですか(適当』
『お前らに何が分かるんだよ! 自称女の子アイドルなんかに騙されて!』
プンスカ怒りながらコメントしている人を見ながら私はふむと考える。
確かに私は姿を晒したから、女の子だって思われてるけど、ヒカリちゃんって人は、どうして女の子だと思われてるんだろう。
「ねぇねぇ。ヒカリちゃんってどういう子なの? お友達になれそう? 女の子なんでしょ?」
『お友達! どうなんだろ?』
『ヒカリちゃんもヒメノちゃんも可愛いし、お友達になってコラボとかしてくれたら嬉しいよ。俺は』
『行ける行ける! 希少な女の子同士! 仲良く出来るって!』
『まー。女の子が喧嘩してるっていう話は聞かないしな』
『そら。そもそも女の子が希少なんで』
『僕はお前なんかと友達にはならないからね! っていうか! ヒカリちゃんは男の娘って言ってるでしょ!』
『自認ヒカリちゃんなら大人しく女の子になれよ。貴重な存在だぞ』
『それ』
『ヒカリちゃんは自称女の子が増える中、唯一自分を男だと言い張る可愛い子だ。しかし、どう見ても可愛い女の子であり、我々はヒカリちゃんの願いを聞いて、男として扱う事にした。表面上は』
『表面上!? みんな、僕が男って聞いて納得してたじゃない!』
『そら。ヒカリちゃんは男のフリがしたいんだから、頷くだろ』
『自認女の子の男しかいない配信環境で、女の子のヒカリちゃんが考えた方法。それは男のフリをする事だった……! なんていじらしい』
『可愛いよなー』
「はへー。面白そう」
『暇なとき見に行ってみな』
『勉強になるかも』
「うん! そうだね!」
『特に面白いのは、酒井卓選手の試合を同時視聴してるときな。酒井選手の大ファンらしくて、活躍した時とか泣いて喜んでて面白い』
『ウケるよな』
『笑うなああああああ!!!!!』
『笑った』
『自認さん。もうちょっと本人に寄せようぜ。ヒカリちゃんなら、指摘されると配信切っちゃうくらい恥ずかしがるんだぜ』
『それ』
『可愛さの擬人化』
それからもワイワイとコメント欄は盛り上がり、私はヒカリちゃんという配信者の事を知るのだった。




