第8話『女の子同士のコラボや!』
【配信者にも色々な種類があるんだよ】
「へー。そうなんだぁ」
私は配信のお勉強の為に訪れたヒカリちゃんの配信で、ヒカリちゃんが配信についてちょうど語っていた為、その内容を聞きながら勉強をする。
今は何も分からない事だらけであるが、何でも学んでいきたい所存であるのだ。
【……あー】
「ふむふむ」
【えっと、うん。ところで……さ。みんな質問とかある?】
少し戸惑った様な顔でヒカリちゃんは視聴者のみんなに問いかけた。
私ははい! と手を上げてヒカリちゃんに応えるが、ヒカリちゃんは反応しない。
あれ? と思っていると、『私の配信』を見ていた人たちからコメントでアドバイスが入った。
『ヒメノちゃん。ここで話しても、ヒカリちゃんには聞こえないよ』
「そうなの? ネットワークを使って配信してるんでしょ?」
『そこからか』
『ヒメノちゃんは何も知らないんやな』
『よくそれで配信が出来たな』
『例の兄が全部セッティングしてくれたのでは?』
『なるほど』
それから。
「なるほど。同じ、プラットフォーム? という場所に居るけど、それは同じ家の中に居る状態で、部屋が違うから、お話出来ない。かな」
『せや』
『とりあえずはその納得で行こう』
『全部は分からなくて良いのよ。分かる所だけ分かれば』
『ヒカリちゃんとお話する為には、同じ部屋に行かないといけないってワケ』
「ん~。じゃあ! じゃあ! どうやって同じお部屋に行くの!? 私、ヒカリちゃんとお話したい!」
『やろうやろう!』
『是非やろう!』
『女の子同士のコラボや!』
『落ち着けお前ら』
『同じ部屋で配信する為には、ヒカリちゃんの許可が必要なんだよ。ヒカリちゃんの部屋に入る時にはヒカリちゃんの許可が必要だろう?』
「確かに」
『で、ヒメノちゃんとヒカリちゃんは、まだ友達どころか知り合いですらない訳だから、部屋に入る前にはまず知り合いになる所から始めましょう。という所でもある』
「ふむふむ」
コメントに流れて来る事を頭に入れながら、これから行わなければいけない事を考える。
そして、まずは知り合いになる。という事を行うべく、私はヒカリちゃんの配信のコメント欄に想いを書き込んだ。
《私は、桜井姫乃と言います。同じ女の子って聞いて、お友達になりたいと想いました。よろしくお願いしますーっと》
『あん?』
『突然どうした?』
『てか、本名……?』
『ふぁ!? ヒメノちゃん! ヒカリちゃんの配信に直接コメントしたんか!?』
『まっ』
『笑う』
『まずは直接メッセージ送ったりして、裏でやり取りするかと思ったが、いきなり正面から堂々と行くのか』
『これが、女の子……!』
『アグレッシブ過ぎやろ』
「どーですか!」
私はコメントを打った後、配信で流しているヒカリちゃんの配信を見つめる。
ヒカリちゃんは笑顔のままお話をしていたのだけれど、不意にその笑顔がガチっと固まって、動かなくなった。
どうしたんだろう?
【ふ、普通、直接くる……? いや、僕がこんな配信をしたせいかもしれないけどさ……くっそ、女の子もどきに優しさなんか見せるんじゃなかった】
ブツブツと呟きながら、笑顔のまま固まっているヒカリちゃんに私はコメントを打った。
《おーい。聞こえますかー?》
《このコメント誰?》
《分からんが、ヒカリちゃんが反応している以上、知り合いなんじゃね?》
《いきなり図々しいな》
《何様のつもりなんだ》
『アカン』
『なんか燃えてね?』
『いや、まだ燃えてないが……結構やばい状態なのは確かだ』
『ヒメノちゃん!! ヒカリちゃんの配信はヒカリちゃんのゾーンだから! そこで迂闊な事すると、大変な事になるんだよ!』
「んー? どうすれば良いんだろ。ヒカリちゃーん?」
『駄目だ聞いてない』
『これで炎上とかになったら、貴重な女の子がまた消えてしまう』
『何とかせにゃ、何とかせにゃ』
『何とかって言ってもな……どうすれば良いんだよ』
私はヒカリちゃんからの返答が来ないかなーと待っていたのだが、ヒカリちゃんはニコニコと笑ったまま固まっており、動きが無い。
ヒカリちゃんの配信のコメント欄だけが勢いよく動いていた。
『おい! 桜井姫乃! 良いから適当に謝罪して、配信から出ろ! 直接メッセージでやり取りするから!』
『チッ! 駄目だ! 見てない!』
「もう一回コメントしてみようかな」
私はヒカリちゃんの配信にコメントをしようとして、テチテチとコメントを書いていたのだが。
【っ! みんな! ごめんね! 急に気にしてた人からコメントが来て、僕、ビックリして固まってた!】
《コイツ、ヒカリちゃんの知り合いなん?》
《なんかあるなら、相談してくれれば味方になるよ?》
《気にしていた人って、誰?》
【お、良い質問だね! そう! このコメント主の人の名前からチャンネル飛べば分かるけど! 〝彼女〟は、ヒメノちゃん。最近配信を始めた子なんだよ!】
《ヒメノ? 聞いたことあるな》
《てか、彼女って言った?》
《もしかして、ヒカリちゃん以外の女の子!?》
【いや、僕は女の子じゃないんだけど……って、もうそれは良いや。今は良い。えっとね! ヒメノちゃん! 本当にごめんなさいだけど、配信上でお話すると、僕らの配信を見ている人が全員見てるから、あんまり良く無いんだ。だからね、詳しい事は、配信外でメッセージでお話しようよ】
「っ! そうなんだ!」
私はヒカリちゃんの言葉にハッとしながら、コメントで返事をする。
「えーっと、ごめんなさい。ご迷惑をおかけしました、と」
【全然! 僕は迷惑なんて感じてないよ! ただ、ほら、ヒメノちゃんの事を知らない人もいっぱい居るからさ。みんなビックリしちゃうじゃない?】
《俺らの事を気にしてくれていたとは》
《ヒカリちゃんは天使》
《優しさの化身》
「うん。そうだね。ヒカリちゃんとお友達になりたくて、こんな事をしてしまいました。これからはしません……と」
【お、お友達、ね。うん。いや、だから、ここは配信上、なんだけど……】
《うぉおおおお!! ヒカリちゃんの初コラボはヒカリちゃんと同じ女の子や!!》
《来た!!》
《ボッチだったヒカリちゃんにお友達が!?》
《しかも女の子同士! いったいどうなってしまうんだ!》
《俺たちは歴史の輝きを目撃している!》
【いや、だから。僕は女の子じゃなくて、男の娘……って、もう良いや。もう。分かったよ。お友達。お友達ね。そうだね。お友達になろうか。ヒメノちゃん】
「うん! ありがとう! ヒカリちゃん!」
私はヒカリちゃんの言葉に笑って返事をした。
が、そう言えばここからでは聞こえないのだった。
私はヒカリちゃんに言われた通り、ヒカリちゃんの配信を切って、いつもの配信画面に戻る。
「ヒカリちゃんとお友達になれた!」
『おめ』
『とんでもねーパワープレイだったけど、結果オーライ』
『女の子に近づくのは他の配信者でも結構難しいからね』
『やはり女の子同士。女の子は女の子と一緒に居た方が良いのでは?』
『世界人口的に不可能で笑う』
『っ! 桜井姫乃!! 僕は、お前と友達になんかならないからな!! 可哀想だから、友達って言ってやっただけだ!!』
『なんやなんや』
『前に居た自認ヒカリちゃんだろ』
『ヒカリちゃんはヒメノちゃんとお友達になりたいって言ってたんですけど、ガバガバ自認過ぎんか?』
『以前から、そういう御方だったので』
『あまりにも残念過ぎる』
『~~!! 僕は! お前の事なんか 絶対に、ぜぇったいに!! 認めないからな!!』
「ヒカリちゃんともお友達になったし。楽しみだなー。何やろうかな」
私は今日の配信も大成功と配信を終わるのだった。




