Ⅲ ハロウィン・パーティー
開始時間になり、パーティー会場のドアが開いた。エントランスにいた学生たちが一斉に中へと入って行き、いよいよパーティーが始まる。パーティーの開始と同時にハロウィン定番のBGM“スリラー”が流れ出した。
テーブルにはソーセージのパイ包みをハロウィン風にアレンジしたミイラのソーセージロール、振り掛けたパプリカパウダーを飛び散る血に見立てたデビルド・エッグ、お化けの顔が描かれたミニハンバーガー、墓石の形のクラッカーを突き立てた墓場ディップ&チップスなどハロウィンの定番料理やパンプキン・ケサディージャ、スパイシーディップが添えられたスイートポテト・フライ、南瓜や薩摩芋、芽キャベツ、小玉ねぎなど秋野菜のローストと言った旬のものを使った料理、生地を指の形にして焼いた魔女の指クッキー、焼きリンゴのパイ包み、アップル・サイダー・ドーナツ、パンプキン・バーなどのデザートが並んでいた。
「おお、すげえ! 早速飲み物を取りに行こうぜ!」
ライリーが歓声を上げ、皆で会場の端のカウンターへ向かう。
カウンター脇に設置された台にはアップルサイダー・パンチ、魔女の鍋のように見える魔女の劇薬パンチ、真っ赤なヴァンパイア・モクテルなどのノンアルコールドリンクが既に所狭しと大量に置かれていた。
学生たちがわらわらと好きなドリンクを手に取っては離れていく。エドウィンたちも飲み物を取ると次は食べ物の方へ向かった。
五人は食べ物を取ると会場の片隅に集まった。飲み食いしながら話すうちに、BGMはいつの間にか明るくポップでノリが良い、映画『ゴーストバスターズ』のテーマ曲に変わっていた。
「エド、仮装、すっごい気合入ってるね!」
片手にアップルサイダー・パンチを持ったベティがミイラのソーセージロールを齧りながら、感嘆したように言うと、当のエドウィンはぎこちなくハハ、と笑った。
「ルーに『大学時代のハロウィンは一生の思い出になる』って言われて……」
「ねえ、そんなにクオリティ高いなら、ベスト仮装コンテストにエントリーしてみない?」
ハロウィン・パーティーではベスト仮装コンテストが行われることになっており、様々な賞と賞品が用意されていた。
「えっ……? でも、俺……」
春の学園祭で武道演武を披露したものの、今のように完全な娯楽の場でステージに上がるのにエドウィンは抵抗があった。のだが……
「大丈夫、エントリーはグループ単位だから。それならハードル低いでしょ?」
単に彼が恥ずかしがっていると思ったのか、ララが提案する。
「みんなはどう? いい思い出になるわ」
「いいわね!」
「いいわよ!」
「いいぜ!」
「よっし、じゃあ皆でエントリー受付デスクに行きましょ!」
エドウィン以外の四人はノリノリで参加を決め、あまり乗り気ではなかった彼も結局参加することにしたのだった。
五人は受付デスクで名前・連絡先・仮装のテーマを登録してエントリーし、傍に設置されたフォトブースで写真を撮る。写真は審査側が参加者を把握し易くするためのもので、それによりステージ進行もスムーズに行えるというメリットがあった。
エントリー手続きを終えた後、五人は食べ物と飲み物を片手に談笑していた。……のだが。
「あ、そうだ。写真による一次審査をパスしてファイナリストに選出されると、ステージに上がってパフォーマンスしなきゃいけないわよ」
「へ!?」
ふいにララが言い、エドウィンは持っていたミニハンバーガーを落としそうになった。
「パ、パフォーマンス?」
「ええ。お姉ちゃんに聞いた話だから間違いないわ。ポーズを決めたり、キャラクターになりきった短い演技をするの」
「ポーズ……演技……」
「心配すんなって! 五人一緒なんだからよ!」
「エド。腰のイミテーションの短剣を抜いて構えるくらいで大丈夫だと思うわ」
とライリーとマリルーが言った。
「うん! きっと大丈夫!」
ベティも励ますようにガッツポーズを取る。
――ま、まあ、一次審査を通過するとは限らないよな……
内心そんなことを思いながら、エドウィンはまたぎこちなく笑ったのだった。




